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3.元聖女は冒険者として仕事をします。
69.
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魔族――、人を襲ったりとか、そういうことをしてた、魔物のようなところのある種族。
夕暮れ時の山道を街の方へ急ぎながら、私は頭の中でステファンが言ってたことを反復していた。
――つまり、魔物と同じってこと?
あの血だらけの人を見て自分が感じた感覚は、魔物が感じてそうなこと――って考えるとしっくりきた。
魔物については、キアーラの大神殿でもどういう存在なのか教えてもらっていた。
大司教様が言っていたのは、光の女神さまは自分に似せて人間を作って、争いがない楽園を作ろうとしたけれど、それを邪魔しようとした悪魔が魔物を作って、人間の楽園を壊そうとしたっていう話だ。女神様が楽園を完成させる前に――悪魔の手先である魔物がそこを壊しちゃったから、楽園は不完全で、人の心にも魔物から悪い心がうつっちゃって、世の中は不平等で争いごとばっかになってしまった。
――だけど人が――女神さまが望んだ楽園で暮らす人のように、他の人の幸せを願って祈ることで、その力で魔物を退けて、この世を楽園に近づけられる。だから、恵まれないところから助けてもらったお前も他の人が魔物から離れて幸せな生活を送れるように祈りなさい、と大司教様は何度も私に言った。
――そもそも、私は祈りで退けられる側だった……んでしょうか……。
大神殿を出て、この街に来て、人間以外にも狼男や獣人、小人とかいろんな種族がいることを知って、そもそも光の女神さまの教えって、人間以外の種族のこと言ってないなって疑問には思ってて――。でもそのあたりは、テオドールさんの祈ってる神様だと、光の女神様だけじゃなくて、いろんな精霊の神様がいろんな種族を作ったって言ってるから、まぁいいかなって思ってたんだけど。
まさか、自分が「いなくなれ」と祈られる側だったなんて思わなかった……。
頭ががんがんしてくる。
――私って、何なのかな。
ふと立ち止まって自分の手の平を見つめていたら、先を行っていたステファンが振り返って、「どうかした?」と聞いた。
私は「何でもない」と首を振って、「日が落ちてきたね」と速足で彼を追いかけた。
――よくわかんないけど、でも。
ステファンのもう一つの言葉を反復する。
『それより、僕はレイラが美味しそうに食事をしてるところが見たいよ』
いろいろ考えるより、そう言ってくれてる人がいるっていう方が大事なんじゃないかなと思った。女神さまとか楽園とか悪魔とかはわからないけど、そう言ってくれるステファンや、いろいろ良くしてくれるライガやテオドールさんやナターシャさんたちがみんな笑顔でいられるように私の祈りが役に立つのなら――そのために祈りたいと心から思う。
街についた私たちは魚を持って教会に向かった。
教会の窓にはもう灯りが灯っている。
子どもたちの夕食に間に合えばいいんだけどなぁ……。
そう思ってドアをノックしようとしたとき……、
ドン! ガチャン! ガラガラ!
中からすごい音が聞こえて来た。
「何かありましたかっ?」
ステファンが慌てて中に駆けこむと、教会の中でひっくり返った椅子とテーブルを間に挟んで、さっきまでの私みたいな半泣きのノアくんとナターシャさんが睨みあっていた。
夕暮れ時の山道を街の方へ急ぎながら、私は頭の中でステファンが言ってたことを反復していた。
――つまり、魔物と同じってこと?
あの血だらけの人を見て自分が感じた感覚は、魔物が感じてそうなこと――って考えるとしっくりきた。
魔物については、キアーラの大神殿でもどういう存在なのか教えてもらっていた。
大司教様が言っていたのは、光の女神さまは自分に似せて人間を作って、争いがない楽園を作ろうとしたけれど、それを邪魔しようとした悪魔が魔物を作って、人間の楽園を壊そうとしたっていう話だ。女神様が楽園を完成させる前に――悪魔の手先である魔物がそこを壊しちゃったから、楽園は不完全で、人の心にも魔物から悪い心がうつっちゃって、世の中は不平等で争いごとばっかになってしまった。
――だけど人が――女神さまが望んだ楽園で暮らす人のように、他の人の幸せを願って祈ることで、その力で魔物を退けて、この世を楽園に近づけられる。だから、恵まれないところから助けてもらったお前も他の人が魔物から離れて幸せな生活を送れるように祈りなさい、と大司教様は何度も私に言った。
――そもそも、私は祈りで退けられる側だった……んでしょうか……。
大神殿を出て、この街に来て、人間以外にも狼男や獣人、小人とかいろんな種族がいることを知って、そもそも光の女神さまの教えって、人間以外の種族のこと言ってないなって疑問には思ってて――。でもそのあたりは、テオドールさんの祈ってる神様だと、光の女神様だけじゃなくて、いろんな精霊の神様がいろんな種族を作ったって言ってるから、まぁいいかなって思ってたんだけど。
まさか、自分が「いなくなれ」と祈られる側だったなんて思わなかった……。
頭ががんがんしてくる。
――私って、何なのかな。
ふと立ち止まって自分の手の平を見つめていたら、先を行っていたステファンが振り返って、「どうかした?」と聞いた。
私は「何でもない」と首を振って、「日が落ちてきたね」と速足で彼を追いかけた。
――よくわかんないけど、でも。
ステファンのもう一つの言葉を反復する。
『それより、僕はレイラが美味しそうに食事をしてるところが見たいよ』
いろいろ考えるより、そう言ってくれてる人がいるっていう方が大事なんじゃないかなと思った。女神さまとか楽園とか悪魔とかはわからないけど、そう言ってくれるステファンや、いろいろ良くしてくれるライガやテオドールさんやナターシャさんたちがみんな笑顔でいられるように私の祈りが役に立つのなら――そのために祈りたいと心から思う。
街についた私たちは魚を持って教会に向かった。
教会の窓にはもう灯りが灯っている。
子どもたちの夕食に間に合えばいいんだけどなぁ……。
そう思ってドアをノックしようとしたとき……、
ドン! ガチャン! ガラガラ!
中からすごい音が聞こえて来た。
「何かありましたかっ?」
ステファンが慌てて中に駆けこむと、教会の中でひっくり返った椅子とテーブルを間に挟んで、さっきまでの私みたいな半泣きのノアくんとナターシャさんが睨みあっていた。
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