67 / 217
3.元聖女は冒険者として仕事をします。
65.(ステファン視点)
しおりを挟む
「今日もそれだけ?」
いつもどおり宿屋の食堂でお昼を食べているところだけど……僕は今日もまた山盛りのサラダを注文するレイラを見て、首を傾げた。
ここ数日、彼女はこういう風に野菜とパンしか食べてない。
「今日も――サラダをたくさん食べたい気分なの」
レイラはそう言って座った。僕とライガは顔を見合わせる。
こういう風になったのは、あの魔法草狩りに行ってからだ。「何かあった?」とそれとなく何度か聞いてみたけど、彼女は「特に何も」と濁すだけで答えてくれない。
「今日もレタスがシャキシャキしてて美味しい……」
そう言いながらもしゃもしゃと野菜を口に頬張っている。
――野菜を食べるのは良いことだけど、でもあんなに肉が美味しいって食べてたのに、急にこれは、おかしくないか?
日替わりのメインの肉料理を食べて、「美味しい!」と言ってた時の方が嬉しそうだった気がする……。何より、サラダばっかりというのも栄養面が心配だ。
「そうだ、肉があんまりなら――魚は?」
僕は提案した。動物性のものも食べたほうが良い。
「魚?」
そうだった。レイラとはまだ一緒に魚を食べたことがなかったっけ。
ライガが肉が好きだから、いつも肉料理ばっかりだし――。
「――今日、魚ありますか?」
厨房にいる宿屋の旦那さんに声をかけると、彼は「おう」と答えて、トマトソースで白身の魚を煮込んだ料理を乗せた皿を出してくれた。それをレイラのところへ持って行く。
「どうぞ」
とんっと前に置くと、レイラはしばらくそれを見つめてから、フォークで刺して一口食べた。僕は彼女の「美味しい!」を期待してじっと顔を見た。
「……お肉よりあっさりしてて……美味しいけど……ちょっと塩辛いかも……」
レイラはそう呟いた。
「――このへんは塩漬けが多いからなぁ」
僕はため息をついた。マルコフ王国は海から離れているので、魚の行商人が外から来ない――ことはないんだけど日持ちする塩漬けの魚を持ってくることが多い。美味しくないこともないんだけど、やっぱり魚の味より塩気が勝ってしまう。
この街で肉料理ばっかり食べてるのはライガが肉好きっていうのもあるけど、魚より肉料理のが美味しいっていうのもあるな……。
「ルシドドは魚が美味かったよな!」
ライガが横から話に入った。レイラと会う前に僕らが行商の護衛でしばらく遠出していたのが、キアーラのさらに先にある海辺の町――ルシドドだ。そこは海魚がたくさん獲れるから、魚を生で食べる店なんかもあって、魚介類が本当に美味しかった。
「そうなんだ……!」
レイラが話に食いついた。
……いつもと変わらない感じ……だよな。――良かった。
でも急に肉を食べたくなくなった理由は――聞いておいた方がいい。
心配だし。
「そうだ、今日、釣りに行ってみる? 川魚なら、新鮮なの獲れるし」
僕はレイラに聞いた。山に入れば川で新鮮な魚は釣れる。ゆっくり話す時間も作れるし。
「……行ってみたい……」
僕は「よし、じゃあ午後は釣りに行こう」と頷いた。
いつもどおり宿屋の食堂でお昼を食べているところだけど……僕は今日もまた山盛りのサラダを注文するレイラを見て、首を傾げた。
ここ数日、彼女はこういう風に野菜とパンしか食べてない。
「今日も――サラダをたくさん食べたい気分なの」
レイラはそう言って座った。僕とライガは顔を見合わせる。
こういう風になったのは、あの魔法草狩りに行ってからだ。「何かあった?」とそれとなく何度か聞いてみたけど、彼女は「特に何も」と濁すだけで答えてくれない。
「今日もレタスがシャキシャキしてて美味しい……」
そう言いながらもしゃもしゃと野菜を口に頬張っている。
――野菜を食べるのは良いことだけど、でもあんなに肉が美味しいって食べてたのに、急にこれは、おかしくないか?
日替わりのメインの肉料理を食べて、「美味しい!」と言ってた時の方が嬉しそうだった気がする……。何より、サラダばっかりというのも栄養面が心配だ。
「そうだ、肉があんまりなら――魚は?」
僕は提案した。動物性のものも食べたほうが良い。
「魚?」
そうだった。レイラとはまだ一緒に魚を食べたことがなかったっけ。
ライガが肉が好きだから、いつも肉料理ばっかりだし――。
「――今日、魚ありますか?」
厨房にいる宿屋の旦那さんに声をかけると、彼は「おう」と答えて、トマトソースで白身の魚を煮込んだ料理を乗せた皿を出してくれた。それをレイラのところへ持って行く。
「どうぞ」
とんっと前に置くと、レイラはしばらくそれを見つめてから、フォークで刺して一口食べた。僕は彼女の「美味しい!」を期待してじっと顔を見た。
「……お肉よりあっさりしてて……美味しいけど……ちょっと塩辛いかも……」
レイラはそう呟いた。
「――このへんは塩漬けが多いからなぁ」
僕はため息をついた。マルコフ王国は海から離れているので、魚の行商人が外から来ない――ことはないんだけど日持ちする塩漬けの魚を持ってくることが多い。美味しくないこともないんだけど、やっぱり魚の味より塩気が勝ってしまう。
この街で肉料理ばっかり食べてるのはライガが肉好きっていうのもあるけど、魚より肉料理のが美味しいっていうのもあるな……。
「ルシドドは魚が美味かったよな!」
ライガが横から話に入った。レイラと会う前に僕らが行商の護衛でしばらく遠出していたのが、キアーラのさらに先にある海辺の町――ルシドドだ。そこは海魚がたくさん獲れるから、魚を生で食べる店なんかもあって、魚介類が本当に美味しかった。
「そうなんだ……!」
レイラが話に食いついた。
……いつもと変わらない感じ……だよな。――良かった。
でも急に肉を食べたくなくなった理由は――聞いておいた方がいい。
心配だし。
「そうだ、今日、釣りに行ってみる? 川魚なら、新鮮なの獲れるし」
僕はレイラに聞いた。山に入れば川で新鮮な魚は釣れる。ゆっくり話す時間も作れるし。
「……行ってみたい……」
僕は「よし、じゃあ午後は釣りに行こう」と頷いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3,603
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる