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2.元聖女は冒険者としての生活を始めました。
33.(ステファン視点)
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「それ、初めて着てきたよね」
食事を待つ間、僕はレイラに話しかけた。
今日、彼女はこの前作った青いワンピースを着ている。ここ数日で初めて見るやつだ。
「……そうなの……!」
レイラは待ってましたとばかりに椅子から立ち上がって、くるりと回った。
「どうかな」
このやりとりはここ数日の日課になっている。
「すごく似合ってるよ」
僕はにっこり笑った。
このやり取りをすると、彼女は僕だったら誕生日にずっと飼いたかった自分の馬を買ってもらったときくらい嬉しそうな顔をするので、やらないわけにはいかなかった。
……まぁ、実際似合ってるけど。どこかの貴族のご令嬢が持ってそうな人形みたいだ。
仕立て屋のおばあさんに見せにいったら、店先に立っててくれないかとお願いされたくらいだし。
「ライガはどう思う?」
レイラは続けて、寝癖を手櫛で直している狼に聞いた。
あいつはじっと見たあとに、壁の方を向いて、「まあ良いんじゃねぇか」と呟いた。
「……あれはかなり似合ってると思ってる、ってことだから」
僕は苦笑してレイラに言った。そうすると彼女は考えこむような顔をした。
「ナターシャさんとライガってちょっと反応が似てるよね。……獣人さんって、みんな照れ屋なのかな。今日、テオドールさんがナターシャさんの旦那さんって話を聞いたんだけど」
話しながらレイラの声がだんだん大きくなって、早口になるのがわかった。
「……それで私のいた神殿では、持たない人に寄り添うために神官は自分のものを持ちたいっていう欲を捨てて、結婚もしないという教えだったんだけど、テオドールさんの神様は自分を幸せにすることで、みんなを幸せにすることなんだそうです。で、で、テオドールさんてば、自分の幸せはナターシャさんと結婚することでしたって」
「きゃあ」とレイラが顔を押さえた。
「そしたら、ナターシャさん壁の方を向いたまま『早く戻れ』って言ったんですけど、耳がちょっと赤くなってて、獣人さんのあの耳赤くなるの、反則的に可愛くないですか!?」
「……うん、僕もそれは同意するね」
僕は頷いた。所長の様子が目に浮かぶようだ。
あの夫婦はだいたいいつもそんな感じで、羨ましいやら微笑ましいやら苛立たしいやらという感じなんだけど。
レイラは水を飲んで一息つくと、「それで私何の話をしていましたっけ」と首を傾げた。
「所長とライガの反応が似てるとか……っていう話。似てる……かな?」
僕は首を傾げる。まあ確かに、言われてみれば……。
「似てねぇよ。どこがだよ」
ライガは壁の方を向いたまま、ぼやく。
僕はレイラと顔を見合わせると、笑った。
「あぁ、似てるね……、確かに」
そんなことをしてる間に料理が届いた。
僕とライガにとっては朝食兼昼食、レイラにとっては早めの昼食を食べる。メニューはミートソースパスタだ。先日もらった大量のトマトをいつもお世話になっているお返しに女将さんにあげたので、しばらくそのトマトを使ったメニューを用意してもらっている。
勢いよくパスタを口に吸いこむレイラを見て、僕ははあ、と息を吐いた。
大丈夫、この子は普通の、可愛い女の子だ。
食事を待つ間、僕はレイラに話しかけた。
今日、彼女はこの前作った青いワンピースを着ている。ここ数日で初めて見るやつだ。
「……そうなの……!」
レイラは待ってましたとばかりに椅子から立ち上がって、くるりと回った。
「どうかな」
このやりとりはここ数日の日課になっている。
「すごく似合ってるよ」
僕はにっこり笑った。
このやり取りをすると、彼女は僕だったら誕生日にずっと飼いたかった自分の馬を買ってもらったときくらい嬉しそうな顔をするので、やらないわけにはいかなかった。
……まぁ、実際似合ってるけど。どこかの貴族のご令嬢が持ってそうな人形みたいだ。
仕立て屋のおばあさんに見せにいったら、店先に立っててくれないかとお願いされたくらいだし。
「ライガはどう思う?」
レイラは続けて、寝癖を手櫛で直している狼に聞いた。
あいつはじっと見たあとに、壁の方を向いて、「まあ良いんじゃねぇか」と呟いた。
「……あれはかなり似合ってると思ってる、ってことだから」
僕は苦笑してレイラに言った。そうすると彼女は考えこむような顔をした。
「ナターシャさんとライガってちょっと反応が似てるよね。……獣人さんって、みんな照れ屋なのかな。今日、テオドールさんがナターシャさんの旦那さんって話を聞いたんだけど」
話しながらレイラの声がだんだん大きくなって、早口になるのがわかった。
「……それで私のいた神殿では、持たない人に寄り添うために神官は自分のものを持ちたいっていう欲を捨てて、結婚もしないという教えだったんだけど、テオドールさんの神様は自分を幸せにすることで、みんなを幸せにすることなんだそうです。で、で、テオドールさんてば、自分の幸せはナターシャさんと結婚することでしたって」
「きゃあ」とレイラが顔を押さえた。
「そしたら、ナターシャさん壁の方を向いたまま『早く戻れ』って言ったんですけど、耳がちょっと赤くなってて、獣人さんのあの耳赤くなるの、反則的に可愛くないですか!?」
「……うん、僕もそれは同意するね」
僕は頷いた。所長の様子が目に浮かぶようだ。
あの夫婦はだいたいいつもそんな感じで、羨ましいやら微笑ましいやら苛立たしいやらという感じなんだけど。
レイラは水を飲んで一息つくと、「それで私何の話をしていましたっけ」と首を傾げた。
「所長とライガの反応が似てるとか……っていう話。似てる……かな?」
僕は首を傾げる。まあ確かに、言われてみれば……。
「似てねぇよ。どこがだよ」
ライガは壁の方を向いたまま、ぼやく。
僕はレイラと顔を見合わせると、笑った。
「あぁ、似てるね……、確かに」
そんなことをしてる間に料理が届いた。
僕とライガにとっては朝食兼昼食、レイラにとっては早めの昼食を食べる。メニューはミートソースパスタだ。先日もらった大量のトマトをいつもお世話になっているお返しに女将さんにあげたので、しばらくそのトマトを使ったメニューを用意してもらっている。
勢いよくパスタを口に吸いこむレイラを見て、僕ははあ、と息を吐いた。
大丈夫、この子は普通の、可愛い女の子だ。
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