恋人以上、永遠の主人

那月

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 でもそれは羅刹にもわかっている。だから右腕をドラゴンに食われながらも羽根を飛ばし「飛んで火にいる夏の虫ィ」と、口の端を釣り上げた。


「こっち!」


 こう見えてもあたし、逃げ足には自信があるのよ。カレスの手首をつかんで走る。


 追いかけてくる4枚の羽根を確認しつつ、青い顔で必死に走るカレスを引っ張る。が、グンッ!と何かに引っ張られ緊急停止。


 カレスの白衣が瓦礫に引っかかっちゃった!?こんな時に!羽根が目の前に迫ってきている。考えている時間はない。


 慌てて白衣を脱ぐ彼を背に庇いながらバンッバンッバンッ!と銃を撃ち鳴らす。当たらない。


 左斜め後ろと前と右と上から同時に羽根が襲いかかってきて、やっと脱皮した彼を突き飛ばす。鋭い痛みが走り目の前が、真っ暗になった。


 どうなったの、あたし?もしかしてまた死にかけちゃってる?無様に地面に這いつくばる彼の背後に、大きな白い影。


 口元を羅刹の血で汚したドラゴンが今まさに、カレスへ巨大な拳を振り下ろそうとしていた。


「何してんのよ馬鹿マクベスーーーーッ!!!!」


 口から場違いなセリフが飛び出した。口から大量の赤い血が飛び出した。同時に、背中とお腹に激痛が走る。起き上がれない。


「カレスを殺したら何もかも終わりよッ!そんなに殺したいなら、そこにいるムダに強い鬼神をボッコボコにしなさい!あたしの声が聞こえないなんて言わせないんだからっ!!」


 叫べば叫ぶほど赤い血の池が広がっていく。あぁ、背中に何か突き刺さってる気がする。あの羽根?知らない。


 あたしは叫んだ。ドラゴンの大きく獰猛な金色の瞳を睨み付け、力の限り叫んだ。知ってるんだから。あんたが本当は、あたしよりも諦めが悪いんだって。


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