恋人以上、永遠の主人

潜入は慎重に

７P

「一気に倒すよ。ティンさん、補助をよろしく」


　ギャアギャアうるさいパニックで暴れ回る小童子達の中心に着地したマクベスと目が合い、あたしは床を蹴った。


　まっすぐ伸ばされた彼の大きな手を握り、鬼斬り丸に姿を変える。行くわよ、マクベス。


　今のあたしは刀だけど、心はマクベスの心と同調している。だからあたしにはマクベスと同じ景色が見えるし、マクベスにはあたしと同じ景色が見えるわ。


　前と後ろを同時に見られるっていう感じかしら。他のありとあらゆる感覚も共有してるから、マクベスがケガをすればあたしも痛いし、刀身が傷つけばマクベスも痛みを感じる。


　あの日から、体を繋げ深い関係になったことでここまで来れたの。さらに関係を深めれば、もっともっと敏感に同調して強くなれる。


　そんなには広くない廊下でエクスカリバーと鬼斬り丸を振るうマクベスは戦いにくそう。腕を目いっぱい伸ばせないものね。


　思いっきり横に薙ぐことが難しいから、上から振り下ろすか下から斬り上げるかで対応してる。


　小童子は餓鬼よりは大きいとはいえ、子供サイズだからすばしっこいのよ。足元に入り込んでマクベスのふくらはぎに噛みついたわ。


　すかさず、肉を噛みちぎろうとした小童子の首をエクスカリバーで斬り飛ばしたマクベス。


　鬼の形相、角が生えていても見た目は人間の子供とほとんど変わりのない小童子。躊躇なく命を奪えるのは、彼が後悔しないために覚悟を決めているから。


　リリちゃんなら怖気づいて向き合うことさえできないかも。ラファルガ君は１人で３体は倒したって言っていたし、鬼は鬼だって割り切っているのかもしれないわね。