恋人以上、永遠の主人

那月

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ナツメと安倍晴明

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 何にせよ、マクベスは本心ではあたしの“無”を嫌がるのよね。自分から言い出したくせに。


「マクベスも感情をなくせばわかるわ。ただ使命を果たすことだけを考えて生きるの、案外楽なものよ?」


「違う。楽とかそんなこと……晴明様は、そんな……ために…………っ、やっぱり俺、諦めたくない。ナツメが大切だから。俺は――」


「っ!!?や、やめてっ!あたし達はそういう関係に、は……うっ……」


 体が軋むくらい力強く抱きしめたマクベスは、あたしの顎をつかみ顔を近づけ、あろうことか唇を重ねてきた。


 触れるだけのキス。何を考えてそんなことをしたのかなんて考えたくもないけど、壊れたはずのあたしの心は一気に再構築されて大きく脈打つ。


 何?何で、どうして?意味が分かんない。マクベスってよくわからない人だけど、今ほど理解できないことはなかったわ。知るのが怖いだなんて。


 とっさにドンッ!と両手で突き飛ばし、ショックと混乱と急に襲ってきた酷いめまいにあたしの体は現実を拒否。強く拒絶。


 大きな衝撃とともに気づいた、わかってしまった。そっか、そうだったんだ。もしかしたら最初からわかってたのかも。わかってたけど、受け入れたくなかったから。


 あたしの壊れた心、すぐにまた治ってしまうのはマクベスのせい。


 彼があたしを見つめて、話しかけて、触れるから。彼の心をぶつけてくるから、それに呼応するようにあたしの心も反応する。痛いのに。すっごく痛いのに。


 体の力が抜け、目を閉じて倒れる。ソファーから落ちるのを覚悟していたのに、寸前に逞しい彼の腕に抱き留められたのを感じてあたしの意識は飛んだ。


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