恋人以上、永遠の主人

那月

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ナツメと安倍晴明

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 ――ん?あぁ、晴明様が住んでいたお屋敷だ。ってことは夢の中かぁ。


 何時くらいなのかしら?懐かしいなぁ。昔住んでいた晴明様のお屋敷の縁側に座っているんだけど、空は真っ暗で少し欠けた月と星々が煌めいている。


 深夜かしら。何かの虫の声が聞こえるくらいで他には何も聞こえない。あたし、式神だから本当は寝る必要はないのよね。だから夜は嫌いだった。


 眠くないんだから眠れない。起きていても皆は寝ているんだから、話し相手もいなくて退屈だった。


 眠ることは一応はできるわよ。目を閉じてジッとしていればいいんだもの。でもそれが耐えられない時がたまにあるのよね、今も。


 辛かった。辛いと思う心が、式神のあたしにはあったの。壊したり元に戻したりできる雑で安物の心が、あたしの胸の中にはあった。


 眠れない時。昔はこうして縁側、今はベランダに出て空を見上げるの。夜空は広くて広くて、ただ見つめるだけでなんとなく心がスーっとするのよね。


 あたしの辛い気持ちなんて、広大な夜空を前にしたら全然大したことないって思える。


「ナツメ」


 不意に優しくて暖かい、ちょっと眠たそうな声が頭の上から降ってきた。


「何よ。いちいち起きてこなくても、放っておけばいいじゃない。というか放っておいてよ。今すぐ寝直して」


「無茶を言う。だが本当は嬉しいのだろう?顔に出ている。また心を壊してしまったか、乱暴な娘だ。私はそんな風に育てた覚えはないぞ?」


「育てられてなんかないわ。最初から、作られた時からこうよ」


 何も映さない青い瞳を、勝手にあたしの隣に腰を下ろす彼に向けてやる。すると彼はおもむろに手を伸ばし手の平であたしの目を塞ぐ。


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