恋人以上、永遠の主人

主人マクベス

８P

　気づけばもう外が薄暗くなってきてる。リビングに戻ってまだ落ち込んでいるマクベスに先にお風呂に入るよう促し、あたしはキッチンに立つ。


「はぁ」


　きっと疲れてるのよ、あたしもマクベスも。疲れてるからマクベスは悪夢にうなされ、あたしは、あたしを保てなくなる。


　何も考えないで手だけを動かす。マクベスの野菜嫌いを克服させるために、美味しいマーボーナス丼を作ってあげなきゃ。


　嫌いな野菜をすっごくイヤイヤ言いながらも、時間をかけながらも自分で一口食べて。やっぱりだめだーって申し訳なさそうにお箸を置くこともあるけど。何がダメだったか聞いて改善策を練る。


　驚き交じりに「おいしい！」って、目を輝かせて食べ進めて。最後に「見て、全部食べられたよ」って、まるで子供みたいに空になったお皿を見せてくれる彼が見たいから。


　楽しいはずなのに、あたしの顔には何の感情も浮かばない。無心。


「はぁ」


　ダメダメ。ちゃんと心を込めて作らなきゃ、美味しくならないんだから。マクベスのために、彼に「美味しいよ」って笑顔で食べてもらうために。


　深呼吸をして、気を引き締めてとりかかる。あたしはあたしよ。大丈夫、いつものようにあたしらしくしていればきっと大丈夫。


　味見をしてビックリしちゃった。全然美味しくないの。あたしとしたことが、何をどう間違っちゃったんだろ？マズイくらいだったから、我に返ってよかったわ。


　最後に隠し味を入れて味を調えて、また味見をしてつい顔がほころんだ。うん、バッチリ。