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第3章 賑やかし要員

4、同盟

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次の日、俺は1通の手紙を用意した。
その手紙を津軽円の下駄箱の中へ放り込む。
よし、これで準備は完了。
今日は邪魔されない環境で彼女と会話できるだろう。

「これはあれですか?ラブレター的なやつですか?」
「げっ!?タケル!?」

知り合いが不在を狙って来たのであったが、まさかタケルに目撃されていようとは。
絵美か理沙なら『命令支配』で忘却させることも可能であるが、『アンチギフト』にその効力は発生しない。

「えっと……、なるほど昨日の津軽さん狙いねー」
「お前が思っているようなことじゃねーよ……」
「赤くなるなよ、親友」

バンバンと背中を叩かれる。
彼なりの気遣いのようだ。

「理沙狙いだったらぶっ飛ばしてたところだったが、理沙じゃなければ許す」
「はいはい、わーってるよ。シスコン魔神さん」
「シスコン魔神じゃない。シスコンドラゴンと呼んでくれ」
「なんでドラゴン……?」
「魔神よりドラゴンのが強そうだろ」

まんま原作と同じ返しをしてきて、今のところは男と津軽以外は原作と同じ人格と思って良さそうだ。

「でも魔神って神だぞ?ドラゴンより魔神のが強いんじゃないか?」
「ま、まじか!?シスコンドラゴンよりシスコン魔神のが良いのか!?」
「シスコンがNGだろ」
「変わりようがないな」

即諦めるタケル。
原作を知ってる以上、そういうことなのは理解している。

「佐々木には黙っててやるよ」
「お、おう?」
「俺はお前の恋愛応援してるぞ」
「は、はぁ……」

絵美も津軽も恋愛対象外だが、否定するのも面倒だし津軽狙いということにしておく。
あとは学校帰りに指定した場所で合流するだけである。


―――――


学校終わりと同時に俺はすぐに教室を出る。
結構カツカツなスケジュールだが、タケルらと合流してから帰ると絶対時間がオーバーする。
昇降口玄関にたどり着くと、同じ考えの津軽を目撃する。

「家に荷物置いたら合流な」
「わかってる!」

それだけ呟いて走って飛び出す津軽。
俺も彼女と同じくそのまま走って自宅を目指した。
自室にほぼ放り投げる感じでランドセルを置いてきて、津軽へ指定した場所へと向かっていく。

その場所へたどり着くと案の定、彼女はその川で俺を待ち伏せしていた。

「『明智秀頼が、十文字理沙ルートでタケルに殺害される川で合流』ね。確かに私たちは同族みたいね」
「単なる賑やかし要員とキャラ変わってんじゃねーか」
「あなただってクズゲス悪役親友役が平凡な男ななってるじゃない」

俺は察した。
津軽円こいつキライ!

「お互いゲームの世界に巻き込まれたようね」
「そうだな」
「ところで、あんたーーなんて呼ぼう?」
「好きにどうぞ」
「じゃあ明智は『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズ全部プレイ完了と取っても良いのかしら?」
「俺は全作やった。津軽も、全部したか?」
「当然よ」

よし。
ゲーム知識は大体同じと考えて良さそうである。

「私は、巻き込まれたくない。ただ、こっちの人生では平穏に生きたかった。だから佐々木さんから声を掛けられてすぐに明智の姿が浮かんできて……。取り乱した……」
「俺だって明智秀頼なんか嫌いだ。原作の流れなんてさせるものか……。それに……、死にたくないし……」
「でも、明智の身体にあなたが存在するならすでに解決してるんでは?明智がギフト使ったり、ヒロインを殺害しなければ良い話だし」

それを指摘されるとそうなのかもしれない。
でも、それで楽観的にはなれないのが現状である。

「夢を見るんだ」
「夢?」
「俺が……、原作の凶行を犯す夢を。なんかの拍子で、それが現実になるかもしれない。それが怖い」

特に新しい出会いが始まる度に、原作の夢を見る。
心の中に悪魔が巣食っているみたいに。
津軽からちょっと目を離す。

「絵美も殺害される夢を見たらしい。偶然とは思えない。もしかしたら津軽もなんかしらの夢を見るかもしれない。だから俺と原作をぶち壊す同盟を組んで欲しい。具体的には、原作の流れを極力回避して欲しい」
「……わかった。私も惨劇なんて見たくないしね」
「ありがとう」

お互い、なるべく原作には近付かない同盟を築く。
俺もギフトは極力使わないし、津軽もレズっぽいキャラにはならない。
今約束できた同盟はこれくらいだ。

それから、お互いどんな状況で前世を思い出したのかや、本当にお互い同じ日本から来たのかなどを話し合ったのである。
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