上 下
22 / 136
第3章 賑やかし要員

4、同盟

しおりを挟む
次の日、俺は1通の手紙を用意した。
その手紙を津軽円の下駄箱の中へ放り込む。
よし、これで準備は完了。
今日は邪魔されない環境で彼女と会話できるだろう。

「これはあれですか?ラブレター的なやつですか?」
「げっ!?タケル!?」

知り合いが不在を狙って来たのであったが、まさかタケルに目撃されていようとは。
絵美か理沙なら『命令支配』で忘却させることも可能であるが、『アンチギフト』にその効力は発生しない。

「えっと……、なるほど昨日の津軽さん狙いねー」
「お前が思っているようなことじゃねーよ……」
「赤くなるなよ、親友」

バンバンと背中を叩かれる。
彼なりの気遣いのようだ。

「理沙狙いだったらぶっ飛ばしてたところだったが、理沙じゃなければ許す」
「はいはい、わーってるよ。シスコン魔神さん」
「シスコン魔神じゃない。シスコンドラゴンと呼んでくれ」
「なんでドラゴン……?」
「魔神よりドラゴンのが強そうだろ」

まんま原作と同じ返しをしてきて、今のところは男と津軽以外は原作と同じ人格と思って良さそうだ。

「でも魔神って神だぞ?ドラゴンより魔神のが強いんじゃないか?」
「ま、まじか!?シスコンドラゴンよりシスコン魔神のが良いのか!?」
「シスコンがNGだろ」
「変わりようがないな」

即諦めるタケル。
原作を知ってる以上、そういうことなのは理解している。

「佐々木には黙っててやるよ」
「お、おう?」
「俺はお前の恋愛応援してるぞ」
「は、はぁ……」

絵美も津軽も恋愛対象外だが、否定するのも面倒だし津軽狙いということにしておく。
あとは学校帰りに指定した場所で合流するだけである。


―――――


学校終わりと同時に俺はすぐに教室を出る。
結構カツカツなスケジュールだが、タケルらと合流してから帰ると絶対時間がオーバーする。
昇降口玄関にたどり着くと、同じ考えの津軽を目撃する。

「家に荷物置いたら合流な」
「わかってる!」

それだけ呟いて走って飛び出す津軽。
俺も彼女と同じくそのまま走って自宅を目指した。
自室にほぼ放り投げる感じでランドセルを置いてきて、津軽へ指定した場所へと向かっていく。

その場所へたどり着くと案の定、彼女はその川で俺を待ち伏せしていた。

「『明智秀頼が、十文字理沙ルートでタケルに殺害される川で合流』ね。確かに私たちは同族みたいね」
「単なる賑やかし要員とキャラ変わってんじゃねーか」
「あなただってクズゲス悪役親友役が平凡な男ななってるじゃない」

俺は察した。
津軽円こいつキライ!

「お互いゲームの世界に巻き込まれたようね」
「そうだな」
「ところで、あんたーーなんて呼ぼう?」
「好きにどうぞ」
「じゃあ明智は『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズ全部プレイ完了と取っても良いのかしら?」
「俺は全作やった。津軽も、全部したか?」
「当然よ」

よし。
ゲーム知識は大体同じと考えて良さそうである。

「私は、巻き込まれたくない。ただ、こっちの人生では平穏に生きたかった。だから佐々木さんから声を掛けられてすぐに明智の姿が浮かんできて……。取り乱した……」
「俺だって明智秀頼なんか嫌いだ。原作の流れなんてさせるものか……。それに……、死にたくないし……」
「でも、明智の身体にあなたが存在するならすでに解決してるんでは?明智がギフト使ったり、ヒロインを殺害しなければ良い話だし」

それを指摘されるとそうなのかもしれない。
でも、それで楽観的にはなれないのが現状である。

「夢を見るんだ」
「夢?」
「俺が……、原作の凶行を犯す夢を。なんかの拍子で、それが現実になるかもしれない。それが怖い」

特に新しい出会いが始まる度に、原作の夢を見る。
心の中に悪魔が巣食っているみたいに。
津軽からちょっと目を離す。

「絵美も殺害される夢を見たらしい。偶然とは思えない。もしかしたら津軽もなんかしらの夢を見るかもしれない。だから俺と原作をぶち壊す同盟を組んで欲しい。具体的には、原作の流れを極力回避して欲しい」
「……わかった。私も惨劇なんて見たくないしね」
「ありがとう」

お互い、なるべく原作には近付かない同盟を築く。
俺もギフトは極力使わないし、津軽もレズっぽいキャラにはならない。
今約束できた同盟はこれくらいだ。

それから、お互いどんな状況で前世を思い出したのかや、本当にお互い同じ日本から来たのかなどを話し合ったのである。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

箱庭から始まる俺の地獄(ヘル) ~今日から地獄生物の飼育員ってマジっすか!?~

白那 又太
ファンタジー
とあるアパートの一室に住む安楽 喜一郎は仕事に忙殺されるあまり、癒しを求めてペットを購入した。ところがそのペットの様子がどうもおかしい。 日々成長していくペットに少し違和感を感じながらも(比較的)平和な毎日を過ごしていた喜一郎。 ところがある日その平和は地獄からの使者、魔王デボラ様によって粉々に打ち砕かれるのであった。 目指すは地獄の楽園ってなんじゃそりゃ! 大したスキルも無い! チートも無い! あるのは理不尽と不条理だけ! 箱庭から始まる俺の地獄(ヘル)どうぞお楽しみください。 【本作は小説家になろう様、カクヨム様でも同時更新中です】

引きこもりが乙女ゲームに転生したら

おもち
ファンタジー
小中学校で信頼していた人々に裏切られ すっかり引きこもりになってしまった 女子高生マナ ある日目が覚めると大好きだった乙女ゲームの世界に転生していて⁉︎ 心機一転「こんどこそ明るい人生を!」と意気込むものの‥ 転生したキャラが思いもよらぬ人物で-- 「前世であったことに比べればなんとかなる!」前世で培った強すぎるメンタルで 男装して乙女ゲームの物語無視して突き進む これは人を信じることを諦めた少女 の突飛な行動でまわりを巻き込み愛されていく物語

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

「ギャルゲーの親友ポジに憧れた俺が、なぜかモテてしまう話。」

はっけよいのこっ太郎
恋愛
ギャルゲーの親友ポジションに憧れて奮闘するラブコメ小説!! それでもきっと、”恋の魔法”はある!! そう、これは、俺が”粋な親友”になる物語。 【あらすじ】 主人公、新川優希《しんかわゆうき》は裏原高等学校に通う高校2年生である。 特に趣味もなく、いわるゆ普通の高校生だ。 中学時代にとあるギャルゲーにハマりそこからギャルゲーによく出てくる時に優しく、時に厳しいバカだけどつい一緒にいたくなるような親友キャラクターに憧れて、親友の今井翼《いまいつばさ》にフラグを作ったりして、ギャルゲーの親友ポジションになろうと奮闘するのである。 しかし、彼には中学時代にトラウマを抱えておりそのトラウマから日々逃げる生活を送っていた。 そんな彼の前に学園のマドンナの朝比奈風夏《あさひなふうか》、過去の自分に重なる経験をして生きてきた後輩の早乙女萌《さおとめもえ》、トラウマの原因で大人気読モの有栖桃花《ありすももか》など色々な人に出会うことで彼は確実に前に進み続けるのだ! 優希は親友ポジになれるのか! 優希はトラウマを克服できるのか! 人生に正解はない。 それでも確実に歩いていけるように。 異世界もギルドなければエルフ、冒険者、スライムにドラゴンも居ない! そんなドタバタ青春ラブコメ!! 「ギャルゲーの親友ポジに憧れた俺が、なぜかモテてしまう話。」開幕‼️‼️

処理中です...