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第2章 禁断の恋愛

7、十文字タケル

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最近頻繁に変な夢ばかり見て不眠症になりそうである。

本当に眠い日々が続く。

「秀頼君、なんか眠そうだね……」
「いや、お前も眠そうなんだけど……」

珍しく絵美も眠そうな目で俺の横を歩いている。
いつも21時頃には眠っている絵美が寝不足なんて珍しい。

「ちょっと今日、変な夢を見て?」
「変な夢ねえ?あーるじゅうはち的な?」
「なにがじゅうはち?」
「……通じないならいいや」

前世の男子どもの下品な会話をする癖が抜けなくてたまにボケてしまうが、大体が絵美には通じなかったりする。
小学1年生女子に通じた方が怖いけど……。

でも、絵美のお母さんの影響で変にませてるから、その内頭がピンク色に染まる日がくるのではないかと戦々恐々としている。

「不思議なことに朝に目が覚めたら涙が出ていたの」
「え?大丈夫か?」
「う、うん。心配してくれて嬉しいな」
「そりゃあ心配するって」

昨日なんか恐怖番組を放送していたし、それの影響かもしれない。

「夢の内容は?」
「あんまり覚えてないんだけど……、川で溺れる夢」
「川?」

不謹慎ながらも、理沙ルートにおける絵美の末路を思い出す。

「あとね、なんか十文字君っぽい人も夢に出てきてた気がする。あ、でも十文字君よりも大人の人だ」
「……」

あれ?
俺が見た夢のタイミングといいなんか被ってたりしない?
大丈夫か?

「あと……、怖い悪魔がずっと夢に出てきて怖かった」
「あくま……?」
「その人の命令になると逆らえなくて……、沈む川の中で『ゆるさない、ころしてやる』って殺意が芽生えてきて……」
「……バカ、そんな怖い夢忘れちまえよ!」

絵美の頭に軽くチョップをして意識を夢から離す。

「いたいよー……」
「まったく、そんな後ろ向きな夢を覚えてる方が悪いっての」
「そうだよね!ありがとう秀頼君!秀頼君のおかげで元気出たよ!」
「……」

今からでも、絵美とは距離を離すべきだろうか……。
まさか、絵美にまで夢の影響が出ているなんて思わなかった……。

「本当に俺って酷い奴だよな……」

もし、俺が前世を思い出していなければ、本当に起こりえたかもしれない未来。
その可能性に俺は震えが止まらなかった……。
本当は絵美とこうやって会話する資格すら、本来はないのかもしれない……。


―――――


「もう兄さんって同じ心配ばっかり」
「だってー、父さんも母さんもお前を心配してるんだぞ。まだ友達できんのかーって」

通学路では十文字兄妹が相変わらずのシスコンとブラコンのやり取りをしていた。
それを一緒に観ていた絵美がコソコソとして小声で話しかけてきた。

「十文字君の妹の十文字さんって、絶対十文字君のこと好きだよね」
「なんだ、お前も気付いてたのか」
「十文字さん、わたしと同じ目をしてるからね!」
「眼球的な話?」
「いや、そうじゃなくて……。……男を見る目が」
「男を見る目……」

つまり……、つまり!?
絵美は恋愛をしている!
その相手は……、タケル!

そっか、同じ相手を好きだから同じ目をしているのか。

がんばれよ絵美!
理沙ルートは存在するからタケルと理沙がくっ付く結末はあれど、タケルと絵美がくっ付くルートはないから難易度が高いかもしれない。
相変わらずギャルゲーの主人公の例にもれず、モテモテなようで。

「がんばれよ!俺、絵美の恋愛を応援してるからな」
「本当!?」
「ああ。理沙がライバルで強敵でも俺が露骨にタケルに絵美を勧めておくよ。絵美は可愛いからタケルにぴったりだぞって」
「余計な事をしないで!」
「ご、ごめん……」

そうか、俺からのフォローとかいう小細工なしでタケルを落としたいわけか。
ガッツだぜ絵美!
幼い顔して男らしくて好きだぜ絵美!

「ふふっ。か、可愛いだなんて……、何も出ないよ秀頼君!」
「あっ、はい」

タケルと絵美ルートが解禁されたらどんなルートになるのか。
『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズファンとしては幻のルートだし見てみたいなぁ!

「それで、君らは何を朝からイチャイチャしてるんだい?」
「おう、おはタケル」

接点が出来てしまった以上、タケルとは仲良くさせてもらっている。
好きだったゲームの主人公なわけだし、どんな結末をタケルが迎えるのか気にはなる。
無能主人公と揶揄されようと、ゲスでクズな親友役の秀頼と同レベルで存在しないとこのゲームの醍醐味ではないのだから。

「ちょっと、タケル」
「どうしたどうした?」

絵美と理沙から離れて、男同士でコソコソ話をする。

「絵美が、お前狙ってるぞ!チャンスだぜ!」
「は?」
「男として受け入れてやるもんだぜ!」

タケルの背中を押しておいた。
絵美からやめてとは言われていたが、俺は絵美には幸せになって欲しい。
お節介とののしられようが、彼女の幸せのほうが大事である。

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