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第4話
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「なんで、何も言ってくれないんですか?」
痺れを切らしたのか、シモンが俺を非難するように言う。
その言葉に俺は言葉にできない閉塞感を受けた。
目の前にいるのは、仕事を教えている部下、歳も俺より下だ。
いくら認められて本社に移ってきたとはいえ、入社当時から本社勤務の俺に比べれば、実績も劣る。
そんな後輩に詰め寄られたとしても、平静なら軽くいなしていたはずだ。
まるで頭に心臓ができたような、脈動をこめかみに感じながら、俺はどう答えるべきか必死で頭を働かせていた。
酔った勢いで、たまたま見つけた俺をからかおうとしているのか。
いや、そんな子供じみたことをするようなやつじゃないことは、短い間だが確信を持って言える。
それでは、同期との酒の席で何かがあったのだろうか。
ゲームにでも負けて、罰ゲームとしてやらされている可能性もある。
いや。いくら本社勤務とはいえ、シモンがそこら辺の青二才に万が一にも負けて言いなりになるなど考えにくい。
俺はまるで咎めるようなシモンの目線を感じながら、答えの出ない思考を巡らせている。
ああ。喉が渇いた。
「もしかして。僕の話が嘘だって疑っているんですか? そうですね……人種には分からないなら……言葉で何を言っても分かってもらえそうにありません」
意を決したように、シモンはテーブルの上に体を乗り出し、とんでもない事を言い出した。
「一度だけチャンスをください。魂で分からないなら、身体で分かってもらうしか。満足してもらえなかったら。それで、諦めますから……」
俺とシモンが?
そんな馬鹿なこと!!
しかし、そんな俺の思考と裏腹に、俺の返事はシモンのそれより突拍子もないものだった。
「そうでもしないと諦めないって顔だな。分かった。一度だけだぞ。二度はない」
酔った勢いの気の迷い、そう自分に言い聞かせる。
そう言いながら、先ほどからずっと感じている喉の乾きが、さらに強まったのを感じた。
「本当ですか!? じゃあ早速! あ……でも、実は、その……僕初めてなんです……でも! 頑張りますから!! きっと満足させてみせます!!」
こうして、俺は種族も違い、そのうえ同性の後輩と互いの初めてを共有することになった。
この時の俺は、ただただ、喉の渇きだけに意識がいっていた。
痺れを切らしたのか、シモンが俺を非難するように言う。
その言葉に俺は言葉にできない閉塞感を受けた。
目の前にいるのは、仕事を教えている部下、歳も俺より下だ。
いくら認められて本社に移ってきたとはいえ、入社当時から本社勤務の俺に比べれば、実績も劣る。
そんな後輩に詰め寄られたとしても、平静なら軽くいなしていたはずだ。
まるで頭に心臓ができたような、脈動をこめかみに感じながら、俺はどう答えるべきか必死で頭を働かせていた。
酔った勢いで、たまたま見つけた俺をからかおうとしているのか。
いや、そんな子供じみたことをするようなやつじゃないことは、短い間だが確信を持って言える。
それでは、同期との酒の席で何かがあったのだろうか。
ゲームにでも負けて、罰ゲームとしてやらされている可能性もある。
いや。いくら本社勤務とはいえ、シモンがそこら辺の青二才に万が一にも負けて言いなりになるなど考えにくい。
俺はまるで咎めるようなシモンの目線を感じながら、答えの出ない思考を巡らせている。
ああ。喉が渇いた。
「もしかして。僕の話が嘘だって疑っているんですか? そうですね……人種には分からないなら……言葉で何を言っても分かってもらえそうにありません」
意を決したように、シモンはテーブルの上に体を乗り出し、とんでもない事を言い出した。
「一度だけチャンスをください。魂で分からないなら、身体で分かってもらうしか。満足してもらえなかったら。それで、諦めますから……」
俺とシモンが?
そんな馬鹿なこと!!
しかし、そんな俺の思考と裏腹に、俺の返事はシモンのそれより突拍子もないものだった。
「そうでもしないと諦めないって顔だな。分かった。一度だけだぞ。二度はない」
酔った勢いの気の迷い、そう自分に言い聞かせる。
そう言いながら、先ほどからずっと感じている喉の乾きが、さらに強まったのを感じた。
「本当ですか!? じゃあ早速! あ……でも、実は、その……僕初めてなんです……でも! 頑張りますから!! きっと満足させてみせます!!」
こうして、俺は種族も違い、そのうえ同性の後輩と互いの初めてを共有することになった。
この時の俺は、ただただ、喉の渇きだけに意識がいっていた。
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