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第3話
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「番? 動物とかのオスとメスのことか?」
「人種がそういう言葉の使い方をしているのは知っていますが、僕たちにはもっと特別な意味のある言葉です」
そう切り出したシモンは、再びグラスを口に運び、一呼吸付いてから再び話を続けた。
ただ飲む、という行為だが、何故だか妙な色っぽさを感じて俺は頭を振る。
今日はだいぶ飲んでしまったようだ。
この一杯を最後にしておこう。
「番は魂が決めた生涯のパートナーです。一度契り合えば、死ぬまで別れることがない相手です」
「そいつは凄いな。人間の離婚率ってのを知ってるか? とてもじゃないが信じられん」
「本当です。僕たちは番を見つけると魂から分かるんです。人種はどうやらそうじゃないみたいですけど……」
「お前の話が本当だとしたら、まるで人間が劣っているような言い方じゃないか。なにか気に食わんな」
俺は思わず目の前にあったグラスを一気に空にする。
もし俺にも魂が決めた相手ってのが分かれば、今頃こんなやつと二人っきりで飲んでいることもなかっただろう。
イラついた心を隠すように、俺はスッキリさせたくてギムレットを頼む。
本来なら少し甘みを持つカクテルだが、俺の好みでライムジュースのみで作らている。
「それで、いったいその番がなんだってんだ。お前の話は全く先が見えないぞ? いつも言っているだろう。報告は結論から話せと」
「分かりました……つまり……透先輩が僕の番なんです」
言われた言葉の意味を理解するのに、どのくらいの時間が必要だったか分からない。
ただ、カウンターの向こうでマスターが振るシェイカーの音だけが、妙にはっきりと聞こえた。
俺がシモンの番だと?
何を言い出すかと思えば……。
俺は改めてシモンの上から下へと視線を動かす。
人間と違い、短い毛に覆われた三角形をした耳がてっぺんに二つ生えている。
その下には突き出た顔、狼を想像すれば恐ろしいはずなのに、何故かシモンの顔は凛々しく思えた。
そして先ほどから感じている、妙な色っぽさを醸し出している。
服の上からでも分かるほどの、たくましい胸板や、腕は種族の違い故だろう。
その下はテーブルが邪魔して見えない。
今、一瞬変な考えが過ぎった気もするが、気のせいだろう。
こいつはどう見てもオスだ。
そして俺も間違いなく男。
番だかなんだか知らないが、男同士でなんて馬鹿馬鹿しい。
だが、何故かだ妙に喉の乾きを感じていた。
マスターが持ってくるはずのカクテルが待ち遠しい。
沈黙が続いたまま時間が過ぎ、やがて俺の前に再度グラスが置かれる。
俺はまるで砂漠で見つけた水を口に運ぶように、置かれたばかりのグラスを乾かした。
「人種がそういう言葉の使い方をしているのは知っていますが、僕たちにはもっと特別な意味のある言葉です」
そう切り出したシモンは、再びグラスを口に運び、一呼吸付いてから再び話を続けた。
ただ飲む、という行為だが、何故だか妙な色っぽさを感じて俺は頭を振る。
今日はだいぶ飲んでしまったようだ。
この一杯を最後にしておこう。
「番は魂が決めた生涯のパートナーです。一度契り合えば、死ぬまで別れることがない相手です」
「そいつは凄いな。人間の離婚率ってのを知ってるか? とてもじゃないが信じられん」
「本当です。僕たちは番を見つけると魂から分かるんです。人種はどうやらそうじゃないみたいですけど……」
「お前の話が本当だとしたら、まるで人間が劣っているような言い方じゃないか。なにか気に食わんな」
俺は思わず目の前にあったグラスを一気に空にする。
もし俺にも魂が決めた相手ってのが分かれば、今頃こんなやつと二人っきりで飲んでいることもなかっただろう。
イラついた心を隠すように、俺はスッキリさせたくてギムレットを頼む。
本来なら少し甘みを持つカクテルだが、俺の好みでライムジュースのみで作らている。
「それで、いったいその番がなんだってんだ。お前の話は全く先が見えないぞ? いつも言っているだろう。報告は結論から話せと」
「分かりました……つまり……透先輩が僕の番なんです」
言われた言葉の意味を理解するのに、どのくらいの時間が必要だったか分からない。
ただ、カウンターの向こうでマスターが振るシェイカーの音だけが、妙にはっきりと聞こえた。
俺がシモンの番だと?
何を言い出すかと思えば……。
俺は改めてシモンの上から下へと視線を動かす。
人間と違い、短い毛に覆われた三角形をした耳がてっぺんに二つ生えている。
その下には突き出た顔、狼を想像すれば恐ろしいはずなのに、何故かシモンの顔は凛々しく思えた。
そして先ほどから感じている、妙な色っぽさを醸し出している。
服の上からでも分かるほどの、たくましい胸板や、腕は種族の違い故だろう。
その下はテーブルが邪魔して見えない。
今、一瞬変な考えが過ぎった気もするが、気のせいだろう。
こいつはどう見てもオスだ。
そして俺も間違いなく男。
番だかなんだか知らないが、男同士でなんて馬鹿馬鹿しい。
だが、何故かだ妙に喉の乾きを感じていた。
マスターが持ってくるはずのカクテルが待ち遠しい。
沈黙が続いたまま時間が過ぎ、やがて俺の前に再度グラスが置かれる。
俺はまるで砂漠で見つけた水を口に運ぶように、置かれたばかりのグラスを乾かした。
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