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24 捕獲と隷属 2 ※
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窓の外が薄暗くなった頃、がちゃりとドアが開く音がした。
有紗は姿勢を正し深呼吸をして、ソファ代わりに座っていたベッドから立ち上がった。
足音が少しずつ有紗のいる寝室に近付いてくる。
「お待たせアリサ。いい子にしてた?」
寝室のドアが開くと同時に、有紗はその場で跪礼した。
両膝を深く曲げ、右手は左胸の心臓の前に。
欧米のカーテシーに似た姿勢がこちらの淑女の礼になるそうだ。
体幹や下半身の筋力がかなり要求される為とても辛い。目下練習中で、なかなか及第点が貰えない。
「お帰りなさいませ、ディートハルト殿下」
「……姉上に教わったの?」
「はい」
「いいよ、その姿勢、疲れるだろ? 普通にして」
「はい」
頷くと、有紗は直立し、ディートハルトに微笑みかけた。
「お疲れではありませんか? 何かお茶でもお淹れしましょうか? お湯は私では準備出来ないんですけど……」
「……いらない。それよりその態度……」
「何かお気に触りましたでしょうか?」
(怒ってる……?)
眉をひそめるディートハルトの姿に、有紗は背筋が冷えるのを感じた。
何がいけないのだろう。修道院でクラウディアに教わった『理想的な女奴隷』の振る舞いをしてみたのに。
「そんな風に媚びる必要はないよ。前みたいにしてればいい」
ディートハルトの言葉に有紗は困惑し、微笑みを浮かべながら首を傾げた。
前のように、と言われても有紗には出来ない。
この世界での自分の立ち位置が厳しいものだということは、薄々気付いていたものの、修道院に潜伏する中で痛いほどに実感した。
この世界のインフラは、魔力があることを前提に作られている。だから有紗は誰かの庇護が無いと生きていけない。それを自覚した今、前のようには出来ないし、してはいけないと思う。
「申し訳ありません。前のようには致しかねます。修道院で色々学びましたから……どのように振る舞えば殿下のお気持ちに添えますでしょうか?」
ディートハルトの周囲の温度が下がったような気がした。
「つまり今のアリサは、俺に心から従順な女奴隷って訳だ」
「はい」
素直に頷いたのに、部屋の気温はどんどん下がっていく。
「なら、愛玩奴隷らしくそこに横になって誘惑してみてよ。ご主人様のものを入れてくださいって」
何故かわからないけど怒っている。こわい。
それに、ディートハルトの要求も。そんなふしだらな真似はしたくない。でも、やるしかない。
有紗は修道服に手をかけた。すると制止される。
「脱がなくていい。服は着たまま、下着だけを取って足を開くんだ。折角の修道女姿だからね、その姿で俺を楽しませるんだ」
「はい」
変態、と思ったが、心の声はおくびにも出さず、有紗は従順に頷くとその場で下着を脱ぎ捨て、ベッドへと向かった。
そしてベッドに座ると、死ぬほど恥ずかしかったがスカートをまくりあげ、足を開いた。
「で、殿下のものを、いれてください……」
自分は何をやっているんだろう。こんな痴女みたいな真似。自分こそ変態だ。
涙目で見上げると、口元を抑えたディートハルトと目が合った。
ディートハルトがベッドの上に乗り上げて、有紗に覆い被さってきた。
秀麗な顔が近付いてくる。
「ま、待ってください」
「何?」
「あの、浄化をお願いしてもよろしいでしょうか。今日、私凄く汗をかいて」
日中は畑仕事、それから怖い目にあって嫌な汗をかいたから、全身がベタベタで気持ち悪い。
「ああ……別に気にしなくてもいいのに」
ディートハルトの指先が有紗の頬に触れた。
次の瞬間には身体がすっきりとする。
「ありがとうございます、でん……」
お礼の言葉は途中で封じられた。唇が塞がれて。
久し振りに触れるディートハルトの唇は柔らかかった。至近距離にある伏せられた深紅の眼差しから目が離せない。
「舌、入れるから。アリサも応えて。アリサからも絡めるんだ」
命令のために一拍置いてから、再び口付けが始まり、ディートハルトの舌が侵入してきた。
初めてキスされた時は、なめくじみたいで気持ち悪いと思ったのに、今はどきどきする。
この綺麗な人にキスされているという特別感に。
有紗の舌が捕われ貪られる。有紗もディートハルトの舌に自分の舌を絡め、応じるように動かした。
口腔粘膜の接触は、下肢での交わりを連想させる。
有紗は、自分の身体が目の前の男を受け入れようと準備を始めたのを自覚した。
互いの唾液のたてる微かな水音がいやらしい。
深い口付けは、ディートハルトが満足するまで続いた。
ちゅ、というリップ音と共にゆっくりと唇が開放される。はあ、と息をつく有紗の耳元で、ディートハルトは囁いた。
「舐めて」
意図がわからずきょとんとする有紗に、ディートハルトは身を離すと、トラウザーズの前をくつろげ、再び命じた。
「ここ、舐めて。できるよね? アリサは俺の奴隷なんだから」
(舐める)
ディートハルト、男の部分を。
いやだ。きたない。
だってそこは排泄をする場所でもある。
いくら浄化されているとはいえ、抵抗感しかない。
だめ。だけど我慢しなきゃ。
だって有紗は彼の性奴隷なのだから。
有紗はゆっくりと身体を起こすと、ディートハルトのそこに顔を寄せた。
そこは既に硬く大きく勃ちあがっており、先端は透明な液体で濡れていた。
白人だからかそこまでグロテスクではない。でも、ここだけ別の生き物のようで、端正で清潔感のある顔立ちの彼についているのが信じられない。
近付くと、彼自身の匂いがより濃くなった。ミントに近い清涼感のある香り。
「無理? どうしても駄目ならごめんなさいって謝れば許してあげ……」
意を決して先端を舌でぺろりと舐めると、ディートハルトの腹筋が硬直するのがわかった。
上目遣いで様子を伺うと、大きく目を見開いて有紗の顔を凝視している。
ぺろぺろとそこを舐め始めると、ディートハルトの大きな手の平が、有紗の頭を撫でた。
「犬みたいだね、アリサ」
そうだ。有紗はディートハルトの犬だ。
ご主人様のものを喜んで舐める犬。そうあるのが正しいテラ・レイスの女奴隷の姿。
口にしてみると、意外に嫌悪感は無かった。先端から滲み出てくる液体はしょっぱい。
ちゅ、と口付けてぱくんと先端を口に含むと、ディートハルトが息をのむ気配がした。
「そんな事誰に教わった。それも姉上?」
違う。日本にはその手の知識の仕入先が溢れていたからだ。
ふるふると首を振り、ディートハルトの様子を伺うと、何故か怖い顔をしていた。
「下、自分で解して。すぐに出来るように」
なんて命令をしてくるんだろう。
恥ずかしい。嫌だ。
抵抗感、羞恥、屈辱、そんなものがない混ぜになるが、有紗は必死に振り切って、下肢に手を伸ばした。
その、瞬間。
首がぐっと締まり、有紗は慌ててディートハルトのものから口を離すと首を抑えた。
(どうして)
クラウディアに言われた通りに振舞って、ディートハルトの要求を全て聞いたのに。
何がディートハルトの不興を買ったのだろう。
「アリサ!」
薄れる意識の中、焦るディートハルトの声が聞こえた。
有紗は姿勢を正し深呼吸をして、ソファ代わりに座っていたベッドから立ち上がった。
足音が少しずつ有紗のいる寝室に近付いてくる。
「お待たせアリサ。いい子にしてた?」
寝室のドアが開くと同時に、有紗はその場で跪礼した。
両膝を深く曲げ、右手は左胸の心臓の前に。
欧米のカーテシーに似た姿勢がこちらの淑女の礼になるそうだ。
体幹や下半身の筋力がかなり要求される為とても辛い。目下練習中で、なかなか及第点が貰えない。
「お帰りなさいませ、ディートハルト殿下」
「……姉上に教わったの?」
「はい」
「いいよ、その姿勢、疲れるだろ? 普通にして」
「はい」
頷くと、有紗は直立し、ディートハルトに微笑みかけた。
「お疲れではありませんか? 何かお茶でもお淹れしましょうか? お湯は私では準備出来ないんですけど……」
「……いらない。それよりその態度……」
「何かお気に触りましたでしょうか?」
(怒ってる……?)
眉をひそめるディートハルトの姿に、有紗は背筋が冷えるのを感じた。
何がいけないのだろう。修道院でクラウディアに教わった『理想的な女奴隷』の振る舞いをしてみたのに。
「そんな風に媚びる必要はないよ。前みたいにしてればいい」
ディートハルトの言葉に有紗は困惑し、微笑みを浮かべながら首を傾げた。
前のように、と言われても有紗には出来ない。
この世界での自分の立ち位置が厳しいものだということは、薄々気付いていたものの、修道院に潜伏する中で痛いほどに実感した。
この世界のインフラは、魔力があることを前提に作られている。だから有紗は誰かの庇護が無いと生きていけない。それを自覚した今、前のようには出来ないし、してはいけないと思う。
「申し訳ありません。前のようには致しかねます。修道院で色々学びましたから……どのように振る舞えば殿下のお気持ちに添えますでしょうか?」
ディートハルトの周囲の温度が下がったような気がした。
「つまり今のアリサは、俺に心から従順な女奴隷って訳だ」
「はい」
素直に頷いたのに、部屋の気温はどんどん下がっていく。
「なら、愛玩奴隷らしくそこに横になって誘惑してみてよ。ご主人様のものを入れてくださいって」
何故かわからないけど怒っている。こわい。
それに、ディートハルトの要求も。そんなふしだらな真似はしたくない。でも、やるしかない。
有紗は修道服に手をかけた。すると制止される。
「脱がなくていい。服は着たまま、下着だけを取って足を開くんだ。折角の修道女姿だからね、その姿で俺を楽しませるんだ」
「はい」
変態、と思ったが、心の声はおくびにも出さず、有紗は従順に頷くとその場で下着を脱ぎ捨て、ベッドへと向かった。
そしてベッドに座ると、死ぬほど恥ずかしかったがスカートをまくりあげ、足を開いた。
「で、殿下のものを、いれてください……」
自分は何をやっているんだろう。こんな痴女みたいな真似。自分こそ変態だ。
涙目で見上げると、口元を抑えたディートハルトと目が合った。
ディートハルトがベッドの上に乗り上げて、有紗に覆い被さってきた。
秀麗な顔が近付いてくる。
「ま、待ってください」
「何?」
「あの、浄化をお願いしてもよろしいでしょうか。今日、私凄く汗をかいて」
日中は畑仕事、それから怖い目にあって嫌な汗をかいたから、全身がベタベタで気持ち悪い。
「ああ……別に気にしなくてもいいのに」
ディートハルトの指先が有紗の頬に触れた。
次の瞬間には身体がすっきりとする。
「ありがとうございます、でん……」
お礼の言葉は途中で封じられた。唇が塞がれて。
久し振りに触れるディートハルトの唇は柔らかかった。至近距離にある伏せられた深紅の眼差しから目が離せない。
「舌、入れるから。アリサも応えて。アリサからも絡めるんだ」
命令のために一拍置いてから、再び口付けが始まり、ディートハルトの舌が侵入してきた。
初めてキスされた時は、なめくじみたいで気持ち悪いと思ったのに、今はどきどきする。
この綺麗な人にキスされているという特別感に。
有紗の舌が捕われ貪られる。有紗もディートハルトの舌に自分の舌を絡め、応じるように動かした。
口腔粘膜の接触は、下肢での交わりを連想させる。
有紗は、自分の身体が目の前の男を受け入れようと準備を始めたのを自覚した。
互いの唾液のたてる微かな水音がいやらしい。
深い口付けは、ディートハルトが満足するまで続いた。
ちゅ、というリップ音と共にゆっくりと唇が開放される。はあ、と息をつく有紗の耳元で、ディートハルトは囁いた。
「舐めて」
意図がわからずきょとんとする有紗に、ディートハルトは身を離すと、トラウザーズの前をくつろげ、再び命じた。
「ここ、舐めて。できるよね? アリサは俺の奴隷なんだから」
(舐める)
ディートハルト、男の部分を。
いやだ。きたない。
だってそこは排泄をする場所でもある。
いくら浄化されているとはいえ、抵抗感しかない。
だめ。だけど我慢しなきゃ。
だって有紗は彼の性奴隷なのだから。
有紗はゆっくりと身体を起こすと、ディートハルトのそこに顔を寄せた。
そこは既に硬く大きく勃ちあがっており、先端は透明な液体で濡れていた。
白人だからかそこまでグロテスクではない。でも、ここだけ別の生き物のようで、端正で清潔感のある顔立ちの彼についているのが信じられない。
近付くと、彼自身の匂いがより濃くなった。ミントに近い清涼感のある香り。
「無理? どうしても駄目ならごめんなさいって謝れば許してあげ……」
意を決して先端を舌でぺろりと舐めると、ディートハルトの腹筋が硬直するのがわかった。
上目遣いで様子を伺うと、大きく目を見開いて有紗の顔を凝視している。
ぺろぺろとそこを舐め始めると、ディートハルトの大きな手の平が、有紗の頭を撫でた。
「犬みたいだね、アリサ」
そうだ。有紗はディートハルトの犬だ。
ご主人様のものを喜んで舐める犬。そうあるのが正しいテラ・レイスの女奴隷の姿。
口にしてみると、意外に嫌悪感は無かった。先端から滲み出てくる液体はしょっぱい。
ちゅ、と口付けてぱくんと先端を口に含むと、ディートハルトが息をのむ気配がした。
「そんな事誰に教わった。それも姉上?」
違う。日本にはその手の知識の仕入先が溢れていたからだ。
ふるふると首を振り、ディートハルトの様子を伺うと、何故か怖い顔をしていた。
「下、自分で解して。すぐに出来るように」
なんて命令をしてくるんだろう。
恥ずかしい。嫌だ。
抵抗感、羞恥、屈辱、そんなものがない混ぜになるが、有紗は必死に振り切って、下肢に手を伸ばした。
その、瞬間。
首がぐっと締まり、有紗は慌ててディートハルトのものから口を離すと首を抑えた。
(どうして)
クラウディアに言われた通りに振舞って、ディートハルトの要求を全て聞いたのに。
何がディートハルトの不興を買ったのだろう。
「アリサ!」
薄れる意識の中、焦るディートハルトの声が聞こえた。
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