女王様と犬、時々下克上

吉川一巳

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女王様と犬、時々下克上 16

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 部屋の中には、はあはあという荒い息遣いだけが聞こえてくる。

 私は口元に笑みを浮かべると、音源である恭平さんをじっくりと眺めた。

「奈緒ちゃん、も、取って」

 恭平さんのまなざしは欲情に潤んでいる。後ろ手で拘束された上に勃ちあがった性器を紐で縛られ、あちこちを私に刺激された結果だ。そんな恭平さんはとても綺麗でいやらしい。布団の上に座らせてあげているのはせめてもの優しさだ。汚されるのは想定済みで、敷きパッドの下には介護用の防水シーツも完備である。

「お仕置きだから取りません」

 私は恭平さんのお願いをばっさりと切り捨てると、さんざんに弄ったせいで赤く腫れている胸の飾りをきゅっとつねった。

 すると恭平さんは呻いてはあはあと喘いだ。

「ふふ、ここでも随分と感じられるようになりましたね」

「おれ、男なのにっ……」

「いいじゃないですか。ここで感じちゃう恭平さん、可愛いですよ」

 くすくすと笑いながら、私はつつ、と指を下に滑らせた。

 学生時代はサッカー部で、卒業後もしっかり筋トレをしているという恭平さんの体はとてもきれいだ。

 細身なのに筋肉はしっかりとついていて、腹筋なんて六つに割れている。その割れ目を堪能しつつ、指先は下へ、下へ。

 小さなおへその下には毛が生えていて、股間の茂みへと至っている。

 だけど茂みを掻き分けるようにそそり立つモノには触れてあげない。すい、とソコを避けると、恭平さんの瞳が揺れた。

 期待してただろうに。ごめんね。まだだめ。

 心の中で謝ると、私は両手を太腿の裏に当て、足を広げるように促した。

 赤ちゃんのおむつを変えるポーズ。またの名をM字開脚。こうすると、勃起した性器の下にぶらさがる二つの袋まで丸見えになる。

 私はその袋を鷲掴みにすると、むにむにと揉み解した。

「ぁ……やだ、それっ」

「パンパンですね。一杯溜め込んでるのかな?」

 表面をびっしりと毛で覆われた袋の中にはうずらの卵のような球体が二つ入っているのがわかる。

 赤ちゃんの素がこの中で作られていると思うとなんだか心の中がむずむずする。力いっぱいに握って潰したら、男としての恭平さんは終わる。そんな急所でもある大事な場所。

「奈緒ちゃん、ちんちんの、取って! もうやだ、いきたいっ」

「まだダメです。だって今日はここも弄るんだから」

 す、と指先を更に後ろ側に滑らせると、恭平さんは愕然とした表情になった。

「え、奈緒ちゃん、本気……?」

「はい。その為にコレ、用意したんですよ」

 私はにっこりと微笑むと、あらかじめ傍らに置いておいた使い捨てのゴム手袋とローションを恭平さんに披露した。







 ゴム手袋をした手の平にローションをたらし、後ろの穴に指を這わせると、恭平さんはびくりと身を竦ませた。

「お、俺、そんなに奈緒ちゃんの事、怒らせるようなこと、したかな……?」

「自覚なしですか?」

 冷たく告げると恭平さんはびくりと震えた。

「もしかして、アイちゃん……?」

「正解です。喧嘩売られちゃいました」

 私はにっこりと笑うと、穴を弄る人差し指にぐ、と力を込めた。

「やだっ!」

 つぷりと爪の中ほどまで指をめり込ませると、恭平さんは身をよじった。

「ホントに嫌ですか? こっちは凄く元気なのに」

 ぐり、と勃ちあがったモノの先端に、もう片方の手で爪を立てると、小さな悲鳴が上がる。

「アイちゃん、でしたっけ? よっぽど恭平さんが好きなんですねぇ。お仕事だからお客さんと仲良くしなきゃいけないのはわかってても、そのせいであんな風に喧嘩売られたかと思うとムカつくんですよね」

 怒りに任せてぐりぐりと先っぽを集中的にいじめると恭平さんの目から涙がこぼれた。

「もぅ、いたい……つらい……」

 そうでしょうね。こんなに硬くして、それなのに根元はきつく縛られて。透明な液体はじわじわと滲み出てるけれど、肝心の白いのはせき止められて出せず、ひくひくと物欲しそうに痙攣している。

「奈緒ちゃんごめん……俺のせいで不愉快な思いさせてごめん……でも、つらいよ。はやく、これ、とってぇ……」

「嫌です。今日は徹底的にいじめます」

「ケツはやだ! 何でもするからそこだけはやだっ」

 お尻の指を動かされるのは前をいじめられるよりも嫌なようだ。

 本気で拒否する姿に私はわざとため息を吐いた。

「ホントに何でもするんですね?」

「する。だから、もうっ」

「しょうがないですねぇ……」

 私は仕方なく、という表情で、後ろの入り口を弄ぶのをやめた。

 元々本気で突っ込もうなんて思ってない。ちゃんと処置しないと中身が出てくるって言うし。Sの気があるのは認めるけれどそっちの趣味はないのだ。

「じゃあ、自分でしましょうか」

「へ?」

「何でもするって言いましたよね。今」

 重ねて告げると、恭平さんの瞳が揺れた。私はそんな恭平さんを無言でじっと見つめる。その視線に耐えかねたのか、恭平さんはうつむくときゅっと目をつぶってしまった。

「やるんですか? やらないんですか? 返事しないなら私はもう寝ちゃいますよ」

「や! 待って! やる! やるからっ!」

 放置はよっぽど嫌なのだろう。恭平さんは涙目で私にすがり付いてきた。
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