8 / 17
女王様と犬、時々下克上 8
しおりを挟む
翌朝の目覚めは最悪だった。
アソコの痛みはなかったが、普段使わない筋肉を使ったせいか全身がだるい。散々声を上げたせいで喉もがらがらだった。
ベッドから体を起こすと、床の布団で恭平さんが眠っているのが見えた。平和そうな寝息にイラっとくるが、寝返りと同時にこちらに向いた穏やかな表情に毒気が抜かれた。
どこかあどけなく見える恭平さんの寝顔を私はじっと観察する。
(睫毛長い。やっぱり肌もきれい)
前言撤回。やっぱりむかつく。
私はきしむ体を堪えて恭平さんの傍に座ると、鼻をつまんでやった。
「んんっ!」
ぱちりと恭平さんの目が開いた。
「奈緒ちゃん? あれ? 俺……」
ぼさぼさの髪をぼりぼりとかきむしりながら恭平さんは起き上がった。
「あー、昨日泊まったんだったっけ。にしてもいきなり鼻つまんで起こすなんて酷い」
ぶつぶつと苦情を漏らす恭平さんを私はじろりと睨んだ。
「酷いのはどっちですか。昨日散々好き勝手してくれたせいでこっちはボロボロです」
そう言うと、恭平さんははっと口元を押さえた。
「ごめん……でも奈緒ちゃんすごく感じてくれたから、つい……」
「ついじゃないです」
はあ、とため息をつき、私はお茶でも入れようと台所に向かおうとした。……が、ぐらりとよろめく。
「危ない奈緒ちゃん」
恭平さんの腕が支えてくれたので私は転ばずに済んだ。しかしこの体の不調の原因を作ったのもこの人である。
「ごめん。俺が無茶させたせいだ。どこ行くつもりだったの?」
「台所です。お茶入れて、朝ごはんも作ろうかと思って」
「もし俺が作っても構わないならやるよ。台所とか冷蔵庫とか、俺が使っても大丈夫?」
「それは構いませんけど……作り置きのおかずはないですよ? 料理できるんですか?」
普段の食事はほぼ学食でまかなっているので私は週末くらいしか自炊しない。冷蔵庫にある食材は、恭平さんが来るから買い込んだものだ。
「できるよー。うち俺が小さい頃から共働きだったから、メシ作ると小遣いもらえたんだ。なるべく台所汚さないように使うから任せて」
恭平さんは私の頭を撫でると、台所へと向かった。そして冷蔵庫を覗いて食材の物色を始める。
「卵とベーコンと……レタスときゅうりも使っていいかな?」
「何でも好きなもの使っていいですよ」
「米炊いてないみたいだからこの食パンも使うね。奈緒ちゃん体辛かったら寝てていいよ」
とは言われても気になる。
――が、不安はすぐに払拭された。包丁の扱いとか卵を割る手付きとか、私よりずっとうまい。普段から料理して慣れていることがすぐにわかる手際のよさだった。
お言葉に甘えて任せてしまおう。
私はベッドの枕を背もたれに座ると、待っている間の暇つぶしにスマホを手に取った。
恭平さんは手早く布団を畳んで脇に寄せ、こたつを部屋の中央に移動させるとお皿とコーヒーを運んできた。
お皿には、クロックムッシュとサラダが彩り良く盛り付けられていて、なんだかカフェのご飯っぽい。
「すごい、これ恭平さんが作ってくれたんですか?」
「混ぜて焼いただけだからすごい簡単だよ。冷めないうちに食べよ」
勧められるままに食べたご飯は、とても美味しくてなんだか悔しかった。
食事の後片付けに始まり、シーツの洗濯、ベッドメイキングなど、恭平さんは私を座らせててきぱきと働いた。まるで主婦のような家事能力の高さである。
それはとても助かるのだが、合間を見つけてはまとわりついてくるのには閉口した。かいがいしく世話を焼いてくれる一方で褒めて褒めてとまとわり付いてくるところは実に犬っぽい。
「奈緒ちゃんの毛、いいね。サラサラ」
「そうですか? 細くて絡まりやすいし、するする滑って落ちてくるからまとめ髪とかうまくできなくて。すぐぺちゃんこになるからもうすこしボリュームのある髪質ならよかったのにと思いますよ」
「俺の髪、カラーは入れてるんだけど地毛なんだよね。生まれつき天パだから真っ直ぐでサラサラなのはホント羨ましいよ」
恭平さんはそう言いながら私の髪を手櫛で梳く。
「まとめにくいのはワックスつけたら何とかなるよ。ハードな奴使うと引っ掛かりができるからうまくまとめれる。後は何回もやって慣れる事かなぁ」
なでなで、と頭がなでられた。かと思うと、ぎゅうっと後ろから抱きしめられる。
「あの、恭平さん」
「うん?」
「当たってます」
「ごめん……」
「二日も連続でいっぱいしたのに元気ですねぇ」
比較対象を知らないからわからないけど、男の人は皆こうなのだろうか。それとも恭平さんが絶倫だったりするのだろうか。
「だって奈緒ちゃん柔らかくていい匂いだから……少ししたらおさまるから見逃してよ」
うーっとうなる恭平さんを可愛いと感じてしまう。
「出さなくても大丈夫なんですか?」
「昨日いっぱいして溜まってる訳じゃないから。ホントにちょっとした事で反応するから、気にしないで」
「そうですか。じゃあそうします。しつけは次ですね」
囁くと、恭平さんは頬を真っ赤に染めた。
「次はいつ会える? 俺、月曜休みなんだけど……」
「美容師さんですもんね。月曜日は午前中授業があるので、お昼からなら大丈夫ですよ」
「ホントに? じゃあどこで会う? 俺、学校迎えに行こうか?」
「迎えに来られても私、車なんですよね。恭平さんバイクでしょ? 私が恭平さんの家に行くか恭平さんがここに来るほうがいいんじゃないですか?」
「ううう、家はダメ。実家だから。姉貴や母親に見られたら冷やかされる」
恭平さんはぶんぶんと首を振った。
「それは気まずいですね。じゃあここでいいですか?」
恭平さんのお姉さんならきっと美人だろうから見てみたいけど、さすがにまだ家族に会う勇気はない。
「うん。何時くらいにしよう? お昼ご飯は一緒に食べる?」
「お昼はどっちでもいいですけど、家で過ごすんじゃなくて、できたら外に出たいです」
「どこか行きたいトコでもあるの?」
「特に思いつかないんですけど……男の人と付き合うの初めてだから、外で手とか繋いで歩いてみたいなぁって」
そう言うと、恭平さんは私の体に回した腕に力を込めた。
「うー、奈緒ちゃんかわいい。どこがいいかなぁ……イチャイチャできて楽しめるトコ……」
ぶつぶつ呟きながらスマホを取り出し検索を始めた恭平さんに、私は甘えるように体を預けた。
アソコの痛みはなかったが、普段使わない筋肉を使ったせいか全身がだるい。散々声を上げたせいで喉もがらがらだった。
ベッドから体を起こすと、床の布団で恭平さんが眠っているのが見えた。平和そうな寝息にイラっとくるが、寝返りと同時にこちらに向いた穏やかな表情に毒気が抜かれた。
どこかあどけなく見える恭平さんの寝顔を私はじっと観察する。
(睫毛長い。やっぱり肌もきれい)
前言撤回。やっぱりむかつく。
私はきしむ体を堪えて恭平さんの傍に座ると、鼻をつまんでやった。
「んんっ!」
ぱちりと恭平さんの目が開いた。
「奈緒ちゃん? あれ? 俺……」
ぼさぼさの髪をぼりぼりとかきむしりながら恭平さんは起き上がった。
「あー、昨日泊まったんだったっけ。にしてもいきなり鼻つまんで起こすなんて酷い」
ぶつぶつと苦情を漏らす恭平さんを私はじろりと睨んだ。
「酷いのはどっちですか。昨日散々好き勝手してくれたせいでこっちはボロボロです」
そう言うと、恭平さんははっと口元を押さえた。
「ごめん……でも奈緒ちゃんすごく感じてくれたから、つい……」
「ついじゃないです」
はあ、とため息をつき、私はお茶でも入れようと台所に向かおうとした。……が、ぐらりとよろめく。
「危ない奈緒ちゃん」
恭平さんの腕が支えてくれたので私は転ばずに済んだ。しかしこの体の不調の原因を作ったのもこの人である。
「ごめん。俺が無茶させたせいだ。どこ行くつもりだったの?」
「台所です。お茶入れて、朝ごはんも作ろうかと思って」
「もし俺が作っても構わないならやるよ。台所とか冷蔵庫とか、俺が使っても大丈夫?」
「それは構いませんけど……作り置きのおかずはないですよ? 料理できるんですか?」
普段の食事はほぼ学食でまかなっているので私は週末くらいしか自炊しない。冷蔵庫にある食材は、恭平さんが来るから買い込んだものだ。
「できるよー。うち俺が小さい頃から共働きだったから、メシ作ると小遣いもらえたんだ。なるべく台所汚さないように使うから任せて」
恭平さんは私の頭を撫でると、台所へと向かった。そして冷蔵庫を覗いて食材の物色を始める。
「卵とベーコンと……レタスときゅうりも使っていいかな?」
「何でも好きなもの使っていいですよ」
「米炊いてないみたいだからこの食パンも使うね。奈緒ちゃん体辛かったら寝てていいよ」
とは言われても気になる。
――が、不安はすぐに払拭された。包丁の扱いとか卵を割る手付きとか、私よりずっとうまい。普段から料理して慣れていることがすぐにわかる手際のよさだった。
お言葉に甘えて任せてしまおう。
私はベッドの枕を背もたれに座ると、待っている間の暇つぶしにスマホを手に取った。
恭平さんは手早く布団を畳んで脇に寄せ、こたつを部屋の中央に移動させるとお皿とコーヒーを運んできた。
お皿には、クロックムッシュとサラダが彩り良く盛り付けられていて、なんだかカフェのご飯っぽい。
「すごい、これ恭平さんが作ってくれたんですか?」
「混ぜて焼いただけだからすごい簡単だよ。冷めないうちに食べよ」
勧められるままに食べたご飯は、とても美味しくてなんだか悔しかった。
食事の後片付けに始まり、シーツの洗濯、ベッドメイキングなど、恭平さんは私を座らせててきぱきと働いた。まるで主婦のような家事能力の高さである。
それはとても助かるのだが、合間を見つけてはまとわりついてくるのには閉口した。かいがいしく世話を焼いてくれる一方で褒めて褒めてとまとわり付いてくるところは実に犬っぽい。
「奈緒ちゃんの毛、いいね。サラサラ」
「そうですか? 細くて絡まりやすいし、するする滑って落ちてくるからまとめ髪とかうまくできなくて。すぐぺちゃんこになるからもうすこしボリュームのある髪質ならよかったのにと思いますよ」
「俺の髪、カラーは入れてるんだけど地毛なんだよね。生まれつき天パだから真っ直ぐでサラサラなのはホント羨ましいよ」
恭平さんはそう言いながら私の髪を手櫛で梳く。
「まとめにくいのはワックスつけたら何とかなるよ。ハードな奴使うと引っ掛かりができるからうまくまとめれる。後は何回もやって慣れる事かなぁ」
なでなで、と頭がなでられた。かと思うと、ぎゅうっと後ろから抱きしめられる。
「あの、恭平さん」
「うん?」
「当たってます」
「ごめん……」
「二日も連続でいっぱいしたのに元気ですねぇ」
比較対象を知らないからわからないけど、男の人は皆こうなのだろうか。それとも恭平さんが絶倫だったりするのだろうか。
「だって奈緒ちゃん柔らかくていい匂いだから……少ししたらおさまるから見逃してよ」
うーっとうなる恭平さんを可愛いと感じてしまう。
「出さなくても大丈夫なんですか?」
「昨日いっぱいして溜まってる訳じゃないから。ホントにちょっとした事で反応するから、気にしないで」
「そうですか。じゃあそうします。しつけは次ですね」
囁くと、恭平さんは頬を真っ赤に染めた。
「次はいつ会える? 俺、月曜休みなんだけど……」
「美容師さんですもんね。月曜日は午前中授業があるので、お昼からなら大丈夫ですよ」
「ホントに? じゃあどこで会う? 俺、学校迎えに行こうか?」
「迎えに来られても私、車なんですよね。恭平さんバイクでしょ? 私が恭平さんの家に行くか恭平さんがここに来るほうがいいんじゃないですか?」
「ううう、家はダメ。実家だから。姉貴や母親に見られたら冷やかされる」
恭平さんはぶんぶんと首を振った。
「それは気まずいですね。じゃあここでいいですか?」
恭平さんのお姉さんならきっと美人だろうから見てみたいけど、さすがにまだ家族に会う勇気はない。
「うん。何時くらいにしよう? お昼ご飯は一緒に食べる?」
「お昼はどっちでもいいですけど、家で過ごすんじゃなくて、できたら外に出たいです」
「どこか行きたいトコでもあるの?」
「特に思いつかないんですけど……男の人と付き合うの初めてだから、外で手とか繋いで歩いてみたいなぁって」
そう言うと、恭平さんは私の体に回した腕に力を込めた。
「うー、奈緒ちゃんかわいい。どこがいいかなぁ……イチャイチャできて楽しめるトコ……」
ぶつぶつ呟きながらスマホを取り出し検索を始めた恭平さんに、私は甘えるように体を預けた。
2
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる