女王様と犬、時々下克上

吉川一巳

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女王様と犬、時々下克上 7

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 お風呂上りの恭平さんの背中に、私はぺっとりと張り付いていた。

 飴と鞭というか、少しはご褒美をあげてもいいかなと思ったからだ。

 恭平さんの体は細身に見えるのに、腕を回すと意外に筋肉質だった。脱いだら結構すごいのかもしれない。

 広い背中に頬ずりすると、石鹸の匂いに混じって昨日も嗅いだ覚えのある柑橘系の匂いがした。

「あの、奈緒ちゃん」

「なんですか?」

「さっきから胸が……めっちゃ当たってる」

「この体勢だとどうやっても当たると思います」

「それは、そうなんだけど……」

 動揺している姿はちょっと面白い。私はわざとぐいぐいと胸を押し付けてやった。すると恭平さんはびくりと震える。

 悪戯心が湧いた私は、お腹に回した手を更に下へとずらした。

「勃ってますね」

「ダメだよ奈緒ちゃん。我慢できなくなる」

 恭平さんはそう言うと、私の手に自分の手を重ねた。

 だけど、積極的にははがそうとしない。ただ重ねるだけ。

 本当は触って欲しいんだよね?

 私はくすりと笑うと指先に力を込め、やわやわとソコを刺激した。

「入れるのはダメです」

「入れなかったら……いいの?」

 こちらを振り返った恭平さんの目は、期待と欲望に潤んでいた。







「ふ……」

 薄暗い部屋の中、私は気を抜くともれそうになる声を必死に抑えていた。

 視線を下腹部に向けると、ぬかるんだ割れ目の上、触られると気持ちいいところに恭平さんの頭がある。

 私はご奉仕の名目でソコを舐められていた。

 寒いから、かろうじてパジャマの上着を引っ掛けているものの、さっきまでは胸を弄られていたので私はほぼ全裸に近い。

 それなのに恭平さんはまだ服を身につけたままで、それがより羞恥を煽る。

 電気を消してもらったのは私の希望だ。突発的にしてしまった前回と違って、一応見られてもいい下着を見に付けてはいるものの、明るいところで生まれた時のままの姿を晒すのには、まだどうしても抵抗があった。

 闇の中、ぴちゃぴちゃと唾液の音が響くのがいやらしい。温かく、濡れた舌は、敏感な部分に絶妙な快感をもたらす。

 それだけじゃなく、悪戯な指先に入り口をなぞられて私は気がおかしくなりそうだった。

「気持ちいい? 奈緒ちゃん、めちゃくちゃ濡れてる」

 囁きから漏れる吐息が触れるだけでも気持ちいい。びくびくと震える私の姿に、恭平さんは満足気に微笑んだ。

「昨日は慣らさずに入れちゃったから、ちょっとずつ広げていくね。痛かったらすぐやめるから言って」

「なかに、いれるのはだめって」

「うん。だから俺のを中には入れない。指だけ」

 そう言いながら、恭平さんは指を潜り込ませてきた。

「ひくひくしてやらしい。狭いね。俺の指、きゅうきゅう締めてるのわかる?」

 入れたら気持ち良さそう。

 うっとりとした表情で恭平さんは私の中を探り始めた。

 痛みはないが異物感に私は身を硬くする。恭平さんの指の腹が、中を広げながら行ったり来たりしているのがわかった。

「痛い?」

「だい、じょうぶ」

「じゃあだいぶほぐれてきたから指、増やすね」

「んっ……」

 中に入り込むものが増えた。恭平さんのモノを受け入れた時ほどではないが、男性の指二本分の質量に私はおののく。

「すご……指二本、根元まで咥えちゃったよ。痛くない?」

「いた、くないです」

「じゃあちょっとずつ動かすね」

 前置きをしてから恭平さんは指の出し入れを始めた。

 二本に増えた事で、動きにバリエーションが生まれる。最初はただ出し入れするだけだったのに、ぐっと広げたり、ばらばらに動かしたり。

「あっ!」

 ある一点をかすめた時、腰が跳ねた。

「ここ、いいの?」

 尋ねられて私はふるふると首を振る。しかし恭平さんはそこを執拗にこすり始めた。

 それどころか、再び前の感じる部分に口を付け、二重に攻め立てられる。

「それ、やっ! 恭平さん、やめて」

 身をくねらせて暴れるが、恭平さんは聞いてくれない。それどころかより激しくされ、私はだんだん追い詰められていく。

 慣れない快感は過ぎると暴力だ。こんな事続けられるくらいなら痛いほうがマシだ。

「やだ、やめて。入れていいからっ」

「え、奈緒ちゃん、それ、どういう意味?」

 恭平さんの唇が離れた。指も止まって、私は自分が何を口走ったか気付き、はっと口を押さえる。

「ねえ、奈緒ちゃん。教えて。ナニを入れてもいいの?」

 ぐり、と感じるところを指の腹にえぐられる。私は唇を噛むと、そっぽを向いた。

 どうして立場が逆転したんだろう。最初は私が優位に立って、恭平さんのアソコを服の上から弄っていたはずだったのに。

 俺も奈緒ちゃんに触りたい。ご奉仕させてって言われて、許したらこの有様だ。

「恭平さんのくせに生意気です。さっさと服を脱いでください」

 むかむかしてきて、じろりと私は恭平さんを睨んだ。

「奈緒ちゃん、いいの……?」

「こんな事続けられるくらいならその、入れられたほうがマシです。気が変わらないうちに早くしてください」

 私の言葉に、恭平さんは弾かれたように起き上がると、いそいそと服に手をかけた。







 結論から言うと、セックスを許したのは間違いだった。

 中の感じる部分を弄るのが指から性器に、同時に攻められる部分がクリトリスから胸に代わっただけだったからである。

 昨日一度体を許したからか、恭平さんの動きには余裕がある。

 ゆるゆると腰を動かしながら、胸を揉んだり吸ったり、ねちっこい動きで私を少しづつ追い詰めていく。

「はあ、奈緒ちゃんのおっぱい大きい……柔らかくて落ち着く」

 Dカップの胸は恭平さんのお気に召したようだ。

 体育の時に邪魔になったり着る服を選ぶので、貧乳で悩んでいる人には悪いけど、私はあまり自分の胸が好きじゃなかった。だけどこうして恭平さんが喜んでくれるのなら、大きく育ってよかったと思う。

「あ、今きゅって締まった。乳首吸われるの気持ちいい?」

 うっとりとした表情で恭平さんは気持ちいいところをぐりぐりしてきた。私はたまらず悲鳴をあげる。

「も、そこばっかやだぁ。おくっ、奥まで、来てっ」

「いいの? 痛むんじゃないの?」

「痛くてもいいから、も、そこ、やめてくださいっ」

「わかった。いくよ」

 恭平さんは胸元から顔を上げ、私の顔の傍に両手を付くとくすりと笑った。その瞳は獰猛な獣のように爛々と輝いている。

 ぐ、と性器が奥に侵入してくる。

 覚悟した痛みはなかった。代わりに強い圧迫感がある。

「痛い?」

 聞かれてふるふると頭を振った。

「わかる? 一番奥まで入ってる」

 最奥をこつこつと突かれた。下腹部の陰毛同士が触れ合い、奥の奥まで侵入してきているのがわかる。

「奈緒ちゃんの中、いいよ。きつくてあったかくてぐちゃぐちゃで、俺のを美味しいってぎゅうぎゅう咥えこんでくる」

 なんで私、こんなに恭平さんに言葉攻めされてるんだろう。

「……恭平さんの、うそつき」

「嘘なんかついてないよ。奈緒ちゃんの中、気持ちよすぎて入れてるだけで俺、いっちゃいそう」

「ちが……そうじゃなくて、私に、冷たくされるのが好きなMじゃなかったんですか……?」

「うん、そうなんだけど、女王様を屈服させるのも好きみたい。俺のでぐずぐずのどろどろになってる奈緒ちゃんたまんない……」

 うっとりと囁きながら、恭平さんは奥に亀頭を押し付けてくる。

「ねえ、キス、してもいいかな?」

 恭平さんのお願いに私は頷いた。

 二回目のくちづけは、溶け合うように気持ちよかった。

 最初は唇と唇が触れ合うだけ。やがておずおずと恭平さんの舌が入ってきて、お互いの舌と舌が絡み合う。

 下でも上でもわたし、この人と繋がってる。

 なんとも言えない幸福感に、アソコがきゅうっと収縮した。

「……っ、締めないで」

 唇を開放した恭平さんは苦しげに囁いた。

「わたし、何もしてないです」

「無意識なの? 俺、も、辛い……動きたい……」

「いい、ですよ」 

「いいの? 痛くない?」

「大丈夫です。恭平さんの好きなように、っあ」

 許しを出すなりずずず、と性器が引き抜かれた。出て行くか出て行かないか、そんなギリギリのところで一旦止まり、再びぐい、と押し込まれる。

 裏筋全体を使って膣壁を擦られ、まだ二回目のはずなのに、私の体は貪欲に快感を拾っていた。

 亀頭のカリの部分が、狭いところを押し広げていく感覚がたまらない。

 わたし、恭平さんに、犯されてる。

 体の一番奥の奥を。生のおちんちんで。

「奈緒ちゃん、俺、生でヤるのも中で出すのも奈緒ちゃんが初めてなんだ。気持ちよすぎてもうゴムなんか使えない」

 入れて、出して、また入れて、出して。

 最初は緩やかだった動きは、少しづつ早くなっていく。

 動きが激しくなるに従って、お尻に何かがぺちぺちと当たる感覚があった。

 陰嚢だ。

 自覚するとかあっと体が熱くなり、ぎゅう、と恭平さんのものを締め付けてしまう。

「っ、やば」

 恭平さんは一番奥で動きを止めた。そしてぐりぐりと先端を押し付けるような動きに変える。

「どうし、たんですか?」

「危うく出るとこだった……」

「イけばいいじゃないですか」

 むしろ早くイってほしい。初心者の自分にはこれ以上は体力が持ちそうにない。

「だめ。まだ奈緒ちゃんイってないし、俺ももうちょっと奈緒ちゃんの中にいたい」

「そ、んなのまだむり……だってわたし、まだにかいめっ」

 回すような動きで奥をぐいぐいと刺激され、私は息も絶え絶えに抗議した。しかし恭平さんはくすりと笑って否定する。

「だいじょうぶ。だって奈緒ちゃん感じてるでしょ? きっとイけるから、一緒にイこ?」

 そして吐精の波をやり過ごしたのか、再び律動を再開させた。

 深く、浅く、早く、激しく。

 縦横無尽に暴れまわる男性器に、私は確実に追い詰められていく。

 全身が性感帯になったみたいに気持ち良い。触れ合い、絡みつく性器と性器に感覚の全てを支配される。

「や、あ!」

 ズドン、と最奥に突きこまれて、脳の中に白い星が散った。

「あ、も、出るっ」

 びゅる、と熱いものが注ぎ込まれた。

 痙攣する膣壁の動きに合わせて、びゅくびゅくと吐き出されている。

 赤ちゃんの部屋に、恭平さんの、精子が。

 暗闇に、はあはあとお互いの吐息だけがやけに大きく響く。

 長い射精が終わると、恭平さんは私の体の上に覆いかぶさり、ぎゅ、と抱きしめてきた。

「いっぱいでた……」

「……疲れました」

「奈緒ちゃんもイったよね? すごいぎゅうぎゅう締め付けてきて持ってかれたもん」

 うっとりとした表情で、恭平さんは私の髪を指で梳いた。

「激しすぎです。私、初心者なんですよ?」

「うん、ごめんね。でもまだまだだよ?」

「え……?」

 きょとんと首をかしげると、恭平さんは、まだ硬度を保ったまま中に居座り続けるモノをゆるゆると動かし始めた。

「せーえき、しっかり塗りこめとかないとね。俺のものだって、この中全部にマーキングしないと」

 全開の笑顔でさらりと言われ、私は顔を引きつらせた。

 結局私が解放されたのは、抜かずの二発目が終わってからだった。
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