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妖精国

【妖精国】の争い

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 クウオはうきうきとしながら先程作った隷属の契約書30枚を持って歩いていた。まずは王達の1人息子に会いに行く。
 王子の側には2人の警備がいるが、クウオの方が強い。風魔法で閉じ込めると怯えている王子に言う。
「この話は王族以外には聞かせられない話なんだ。他の者に知られたら妖精達が隷属されてしまうからね。
王子は隷属契約の事を兄上達から聞いていないと聞いたんだけど、本当かな。」
 真剣な顔で話すクウオを見つめ頷く王子。まさか、自分の事を傷つけるだなんて思っていないのだろう既に怯えた表情は消えていた。
「やっぱり、兄上達は王子を子ども扱いしすぎなんだ。王族なのだからきちんと知っておかないといけない。私と兄も王子よりもっと小さい頃に父から聞かされたというのに。」
「そうなんですか、僕は何も知らないんですね。どうか僕に教えてください、叔父様。」
「勿論だ、その為に来たんだからね。
 これは隷属の契約書と言ってね。隷属というのはとても強い拘束力があって相手のいう事に対して何も抵抗できずに言われた通りに動いてしまうんだ。自分の意志とは関係なくね。
 とても恐ろしい契約書だよ。だからこそ、王族である我らは民を守る為にも知っておかねばならないんだ。この事は王族以外の者には絶対に話してはいけないよ。」
「はい、決して話しません。」
「兄上達には私から話そう。きちんと王子を教育するようにってね。実際に体験するのが一番なんだが、私より実の父親の兄上の方が信用できるだろう。今度兄上に頼みなさい。
 いや、この契約を教えなかった兄上が王子に実践をやらせるかな。困ったな。」
 少し迷って考えているようなそぶりを見せるクウオ。
「一度王子が契約者をやってみるのが良いかな。本当は支持される方をやった方がどれだけ恐ろしいものか分かるんだけれどね。私が署名するから、王子は契約者の方に署名してくれ。契約が完了すると文字が光るから何か私に命令してくれ。契約を解除する時には解除と言うんだよ。」
 話を聞いて驚いたような顔になる王子。
「え、でも僕がやって良いんですか。」
「勿論、次期国王になるんだ。信頼しているよ。余り変な事はさせるなよ。」
 笑いながら言うクウオ、自分の事を次期国王としてみてくれて信頼していると言われ舞い上がった王子は契約書をよく見ずに言われた通りにサインをした。契約書の文字が光り隷属契約が完了した。

 兵士達への魔法の拘束と解くと王子担当の妖精を全てここに呼ぶように言う。隷属の契約書を見せられた兵士達は青ざめた顔で皆を呼びに行った。
 王子が人質となったため、集めた者達全員は抵抗もせずに隷属契約に署名をした。クウオは自分のした事に気が付き、泣き喚く王子だけを連れて王達の所へ向かった。

 王達は王子の鳴き声を聞いて慌てて出てくる。
「何事だ、王子の担当の者達はどうした。王子、泣いていては分からない、いったい何があったんだ。」
 謝罪を繰り返す王子の横でクウオが隷属契約書を見せると黙り込む王達。
「どうしますか、あなた達が隷属契約をして妖精国から消えるか、隷属契約をした王子達を売り飛ばすか。」
決断を迫るクウオ。王と王妃は見つめ合うと後ろにいる使用人や兵士達を見た。皆覚悟を決めた目で頷いた。
「すまない、皆。我らが隷属契約をするから王子の契約を解いてくれ。」
「分かりました。王と兵士達の契約完了後王子の契約破棄、そして王妃が契約という事で良いですか。」
 頷いた王達の隷属契約をするクウオ。全て終わらせると自由になった王子は泣き崩れクウオに気絶させられた。最後の王妃との契約を済ませる。
「これで、隷属された妖精達を助ける為に【シャイ】に攻め込むという大義名分が出来たな。」

 楽しそうに笑いながらクウオは王達と一緒に【妖精国】の外へ出る。そこには既に10人の商人達が集まっていた。商人達に隷属の契約書を渡し権利を譲渡すると、クウオは【妖精国】へ戻っていった。
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