亡花の禁足地 ~何故、運命は残酷に邪魔をするの~

やみくも

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2章:滑轍ハイウェイ

16日目.万全

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 いつもより早く起きてしまった俺は、たまにはと思って朝食を作り始めた。普段は咲淋か母がやっているが、流石にまだ起きてはいないから。
 無音だと頭が目覚めないためとりあえずテレビをつけると、丁度あるニュースが流れていた。

 『では、続いてのニュースです。昨夜未明、九州自動車道で複数の自動車が絡み合う交通事故がありました。幸いこの事故で死傷者はいませんでした。この事故によって九州自動車道は一部交通規制により現在も渋滞中です。今月に入ってからこのような事故が多発していますが、いずれも原因不明となっています。九州自動車道をご利用の方は細心の注意を払って走行して下さい。』

 「これはまた怪しい気配が………。」

 九州、多発、原因不明の三語で、もう普通に起きた事故ではないと思ってしまうくらいには、俺は敏感になっていた。
 霧での経験や人影の助言に基づくなら、どこかに花があるはずだ。それを摘み取る事が出来れば、事故の誘発が起きなくなると今は考えられる。
 やる事としては、恒夢前線との因果関係を調査しながら花を探しつつ、交通整備の手伝いでもするのが無難だろう。

 すぐにでも動くべきだと思った俺はひとまず夕焚に電話をかけた。

 『朝一から働きものですね……。あの件ですよね?蓮斗さん。』

 恐らく、彼も連続交通事故に関しては認知している様子だった。

 「ああ。今の状況が解消されたらすぐにでも調べに行きたい。ただ、今回の件はあまりにも危険だと思う。入念に準備をして臨もう。」

 『そうですね。一番車通りが少ない時間帯、俺の同僚と蓮斗さんで一列になって行いましょうか。原因不明とは言っても、加害者にも被害者にも人的要因となる証拠が無かったので、意図してない事故のはずです。それなら、当事者になるのが一番分かりやすい。こちらは全部知った上で動くので。』

 「俺はそれでもいいんだけど……夕焚の同僚は大丈夫なの?」

 『はい。交通系の方々なので、事故後の調査にも活躍するはずです。三人居るのですが、うち一人は今も現場で調べています。』

 「夕焚ってコネクションあるよね……」

 『若くして活躍してますからね。九州警察は大変ですよ?』

 「見れば分かるよ。では後ほど……」

 そう言って、俺は電話を切った。協力者の方は夕焚が募ってくれるそうなので、俺は以前の交通事故について調べる事にした。
 事前情報は多ければ多いほど、事がスムーズに運ぶ。前回の霧の時とは違って、今回は人手も多いし前例もある。唯一難しいのは恒夢前線の謎に迫る事だけだ。







 しばらくすると咲淋が起きてきたため、今回の件について話した。



 「……分かった。その辺りの時間帯の恒夢前線の様子は細かく追っておくよ。」

 「ああ。よろしく。……それと、以前の交通事故当時、恒夢前線はどんな様子だったか知ってたりしない?」

 ずっと観測している咲淋なら何か知っていてもおかしくないと思いそう尋ねてみたが、彼女は首を横に振った。

 「そう……。」

 「でもね、その前後は観測していたよ。降水量が普段の1.2倍程度だった。日の光が差した頃には弱まったけれど。」

 「となると、事故当時は雨が強かったのか。……日の光か……」

 「日の光がどうかしたの?」

 「基本的に、日の光が差した前後は暗雲が立ち込めているんだよ。その最中に事故が起きる事が多い。それも含めて調べる必要があるかもね……。」

 俺が巻き込まれる事故は雨の有無、場所に限らず発生しているため例外と言えるが、恒夢前線の効果によるものだと考えられる事故は、大体その条件に当てはまっている気がする。
 もしも法則性があるなら、それが出掛かりになる可能性は高い。今はとにかく些細な共通が重要なのだ。







 前回事故の発生から五日が経過した。一旦前回事故については片付き、こちらの準備もほとんど済んでいる状態だ。
 そして、今日は恐らく暗雲の日だ。今朝の曇り空はいつもより明るかった。直接確認は出来ないが、日の光が差している証拠だ。
  
 そして今、俺と協力してくれる人達はパーキングエリアで待機していた。
 今の体制は咲淋が観測地点現地で風雨の変化を確認しており、夕焚は九州自動車道全体の情報や咲淋から入ってくる気象情報を元にして遠隔で指示をする。我々現場部隊は指示を受けてパトロールして、状況確認をする。
 これ以上は出来ないほど準備が整っている。

 「と……これは……」

 車窓から外を眺めていると、段々と辺りが暗くなってきた。
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