16 / 60
2章:滑轍ハイウェイ
16日目.万全
しおりを挟む
いつもより早く起きてしまった俺は、たまにはと思って朝食を作り始めた。普段は咲淋か母がやっているが、流石にまだ起きてはいないから。
無音だと頭が目覚めないためとりあえずテレビをつけると、丁度あるニュースが流れていた。
『では、続いてのニュースです。昨夜未明、九州自動車道で複数の自動車が絡み合う交通事故がありました。幸いこの事故で死傷者はいませんでした。この事故によって九州自動車道は一部交通規制により現在も渋滞中です。今月に入ってからこのような事故が多発していますが、いずれも原因不明となっています。九州自動車道をご利用の方は細心の注意を払って走行して下さい。』
「これはまた怪しい気配が………。」
九州、多発、原因不明の三語で、もう普通に起きた事故ではないと思ってしまうくらいには、俺は敏感になっていた。
霧での経験や人影の助言に基づくなら、どこかに花があるはずだ。それを摘み取る事が出来れば、事故の誘発が起きなくなると今は考えられる。
やる事としては、恒夢前線との因果関係を調査しながら花を探しつつ、交通整備の手伝いでもするのが無難だろう。
すぐにでも動くべきだと思った俺はひとまず夕焚に電話をかけた。
『朝一から働きものですね……。あの件ですよね?蓮斗さん。』
恐らく、彼も連続交通事故に関しては認知している様子だった。
「ああ。今の状況が解消されたらすぐにでも調べに行きたい。ただ、今回の件はあまりにも危険だと思う。入念に準備をして臨もう。」
『そうですね。一番車通りが少ない時間帯、俺の同僚と蓮斗さんで一列になって行いましょうか。原因不明とは言っても、加害者にも被害者にも人的要因となる証拠が無かったので、意図してない事故のはずです。それなら、当事者になるのが一番分かりやすい。こちらは全部知った上で動くので。』
「俺はそれでもいいんだけど……夕焚の同僚は大丈夫なの?」
『はい。交通系の方々なので、事故後の調査にも活躍するはずです。三人居るのですが、うち一人は今も現場で調べています。』
「夕焚ってコネクションあるよね……」
『若くして活躍してますからね。九州警察は大変ですよ?』
「見れば分かるよ。では後ほど……」
そう言って、俺は電話を切った。協力者の方は夕焚が募ってくれるそうなので、俺は以前の交通事故について調べる事にした。
事前情報は多ければ多いほど、事がスムーズに運ぶ。前回の霧の時とは違って、今回は人手も多いし前例もある。唯一難しいのは恒夢前線の謎に迫る事だけだ。
しばらくすると咲淋が起きてきたため、今回の件について話した。
「……分かった。その辺りの時間帯の恒夢前線の様子は細かく追っておくよ。」
「ああ。よろしく。……それと、以前の交通事故当時、恒夢前線はどんな様子だったか知ってたりしない?」
ずっと観測している咲淋なら何か知っていてもおかしくないと思いそう尋ねてみたが、彼女は首を横に振った。
「そう……。」
「でもね、その前後は観測していたよ。降水量が普段の1.2倍程度だった。日の光が差した頃には弱まったけれど。」
「となると、事故当時は雨が強かったのか。……日の光か……」
「日の光がどうかしたの?」
「基本的に、日の光が差した前後は暗雲が立ち込めているんだよ。その最中に事故が起きる事が多い。それも含めて調べる必要があるかもね……。」
俺が巻き込まれる事故は雨の有無、場所に限らず発生しているため例外と言えるが、恒夢前線の効果によるものだと考えられる事故は、大体その条件に当てはまっている気がする。
もしも法則性があるなら、それが出掛かりになる可能性は高い。今はとにかく些細な共通が重要なのだ。
前回事故の発生から五日が経過した。一旦前回事故については片付き、こちらの準備もほとんど済んでいる状態だ。
そして、今日は恐らく暗雲の日だ。今朝の曇り空はいつもより明るかった。直接確認は出来ないが、日の光が差している証拠だ。
そして今、俺と協力してくれる人達はパーキングエリアで待機していた。
今の体制は咲淋が観測地点現地で風雨の変化を確認しており、夕焚は九州自動車道全体の情報や咲淋から入ってくる気象情報を元にして遠隔で指示をする。我々現場部隊は指示を受けてパトロールして、状況確認をする。
これ以上は出来ないほど準備が整っている。
「と……これは……」
車窓から外を眺めていると、段々と辺りが暗くなってきた。
無音だと頭が目覚めないためとりあえずテレビをつけると、丁度あるニュースが流れていた。
『では、続いてのニュースです。昨夜未明、九州自動車道で複数の自動車が絡み合う交通事故がありました。幸いこの事故で死傷者はいませんでした。この事故によって九州自動車道は一部交通規制により現在も渋滞中です。今月に入ってからこのような事故が多発していますが、いずれも原因不明となっています。九州自動車道をご利用の方は細心の注意を払って走行して下さい。』
「これはまた怪しい気配が………。」
九州、多発、原因不明の三語で、もう普通に起きた事故ではないと思ってしまうくらいには、俺は敏感になっていた。
霧での経験や人影の助言に基づくなら、どこかに花があるはずだ。それを摘み取る事が出来れば、事故の誘発が起きなくなると今は考えられる。
やる事としては、恒夢前線との因果関係を調査しながら花を探しつつ、交通整備の手伝いでもするのが無難だろう。
すぐにでも動くべきだと思った俺はひとまず夕焚に電話をかけた。
『朝一から働きものですね……。あの件ですよね?蓮斗さん。』
恐らく、彼も連続交通事故に関しては認知している様子だった。
「ああ。今の状況が解消されたらすぐにでも調べに行きたい。ただ、今回の件はあまりにも危険だと思う。入念に準備をして臨もう。」
『そうですね。一番車通りが少ない時間帯、俺の同僚と蓮斗さんで一列になって行いましょうか。原因不明とは言っても、加害者にも被害者にも人的要因となる証拠が無かったので、意図してない事故のはずです。それなら、当事者になるのが一番分かりやすい。こちらは全部知った上で動くので。』
「俺はそれでもいいんだけど……夕焚の同僚は大丈夫なの?」
『はい。交通系の方々なので、事故後の調査にも活躍するはずです。三人居るのですが、うち一人は今も現場で調べています。』
「夕焚ってコネクションあるよね……」
『若くして活躍してますからね。九州警察は大変ですよ?』
「見れば分かるよ。では後ほど……」
そう言って、俺は電話を切った。協力者の方は夕焚が募ってくれるそうなので、俺は以前の交通事故について調べる事にした。
事前情報は多ければ多いほど、事がスムーズに運ぶ。前回の霧の時とは違って、今回は人手も多いし前例もある。唯一難しいのは恒夢前線の謎に迫る事だけだ。
しばらくすると咲淋が起きてきたため、今回の件について話した。
「……分かった。その辺りの時間帯の恒夢前線の様子は細かく追っておくよ。」
「ああ。よろしく。……それと、以前の交通事故当時、恒夢前線はどんな様子だったか知ってたりしない?」
ずっと観測している咲淋なら何か知っていてもおかしくないと思いそう尋ねてみたが、彼女は首を横に振った。
「そう……。」
「でもね、その前後は観測していたよ。降水量が普段の1.2倍程度だった。日の光が差した頃には弱まったけれど。」
「となると、事故当時は雨が強かったのか。……日の光か……」
「日の光がどうかしたの?」
「基本的に、日の光が差した前後は暗雲が立ち込めているんだよ。その最中に事故が起きる事が多い。それも含めて調べる必要があるかもね……。」
俺が巻き込まれる事故は雨の有無、場所に限らず発生しているため例外と言えるが、恒夢前線の効果によるものだと考えられる事故は、大体その条件に当てはまっている気がする。
もしも法則性があるなら、それが出掛かりになる可能性は高い。今はとにかく些細な共通が重要なのだ。
前回事故の発生から五日が経過した。一旦前回事故については片付き、こちらの準備もほとんど済んでいる状態だ。
そして、今日は恐らく暗雲の日だ。今朝の曇り空はいつもより明るかった。直接確認は出来ないが、日の光が差している証拠だ。
そして今、俺と協力してくれる人達はパーキングエリアで待機していた。
今の体制は咲淋が観測地点現地で風雨の変化を確認しており、夕焚は九州自動車道全体の情報や咲淋から入ってくる気象情報を元にして遠隔で指示をする。我々現場部隊は指示を受けてパトロールして、状況確認をする。
これ以上は出来ないほど準備が整っている。
「と……これは……」
車窓から外を眺めていると、段々と辺りが暗くなってきた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる