聖女として誘拐されましたが、字幕の人はいい仕事をしてました!

隅野せかい

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ゆうやけこやけで帰りましょう

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 いつもの住宅街には、いつもの音が満ちていた。

 子供たちの声。車の音。信号機の音。

 つまり、いつもの音。

 そこにかぶさるように『ゆうやけこやけ』が流れていた。

 五時の時報だ。

 誘拐されてから時間はほとんど経っていないみたい。

「なんだったのかなアレ……」

 とつぶやいてみたけど、最初から最後まで現実感がなかったから、夢だと思うことにした。

 のはずだったんだけど。

「ママ―。あのお姉ちゃん、パッと消えてまた現れたよー」

 思わず振り返ると、保育園帰りらしい女の子が、隣の母親らしき人のそでを引いて、もう片手であたしを指さしてる。

「はいはい。ふしぎですね-」

 と、母親らしき人はこたえると、あたしに向かってちょっと頭を下げた。

 娘が変なこと言ってすいません。っていう仕草だろう。

 あたしも、いえいえ気にしてませんよ、みたいな笑顔を返して、立ち去った。

「はぁぁ……」

 夢じゃなかったんか……。


  ※   ※   ※   ※


 次の日。

 いつもと同じく宿題はやっていかなかったから、キヨミに怒られた。

「たまにはやれ!」

 といいつつ、見せてくれるあたりが、友達だよねー。

「ごめん。次からは」
「いつもそれかい!」
「それに、きのうはさー、すごく疲れることがあって」
「なによそれ」
「えっと……異世界に召喚されてましたっ」
「その言い訳はどうかと思うな」

 ほんとうなんだけどね。でも。

「……あたしもそう思う」



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