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2: 俺、老害が五月蝿いけど魔王様♡追い掛ける

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ーーさて、こんな俺が魔王の側に行こうと思ったら、どうすれば良いだろう?


「勇者よ!!このドンブルダー渾身の祝福、加護を貴殿に!!
はああああ~~っ!!」

頭上の魔王ヨルノダールが、チラリと此方を一瞥した気がした。
その瞬間、電撃の様な衝撃が全身を駆け巡り、血が沸騰するような感覚に脳髄まで支配される。

俺は、何だか杖を振って老害が投げてきた光の玉をひょいと避けて、去り行く魔王の後ろ姿を追い掛けた。

「ああ、愛してるわ!行かないでサム!同じ騎士でも平民の貴方は一番の前線に配置されてしまうわ、きっと!そんなの嫌よ!」

「でも、魔王から君やお母さんを守るためにも行かなきゃ……!必ず帰ってくるよ…!そうだリリー!帰ってきたら結婚しよう!それで、二人で何処かにこじんまりとした家を建てて暮らそうよ!小さな庭に、子供用のブランコ、白い犬……わ!何だこれは!身体が光に包まれて…!」

「約束よ…サム!……ってきゃぁ、何だか身体が軽くて暖かいわ!何かしら??」


「のおおおおおおおおっ!??儂の渾身の祝福と加護がぁぁぁぁ!!勇者ぁぁぁ何故避けるんじゃぁぁぁぁ!!!」

魔王ヨルノダール……その名を舌の上で転がす。甘い、甘い砂糖菓子の様な甘さに舌がうっとりとする。

まるで黒薔薇の花弁で優しく撫でる様な官能と甘さを感じる低く轟く声に、こごった闇が形作る妖艶なフォルム…。

「超~~♡セクスィ~~♡♡♡」

一目惚れだった。ビビっときた。何か手の甲も痛いが兎に角胸が痛い!少しでも近くに行きたい!あの足元に平伏して許されるなら口づけしたい。踏まれてもいい。否、寧ろ踏んで!見詰められたい!睨まれでも良い、蔑みでも良い。寧ろイイ☆許しを乞うでも愛を囁くでも何でも良い!兎に角、あの足元に跪いて見詰めてこの張り裂けそうな胸の内を吐き出して触れて舐めて齧ってキスして貪りたい。

好き♡好き♡♡好き♡♡♡好き♡♡♡♡好き♡♡♡♡♡!!魔王様♡抱いて♡♡♡!!!

俺は田舎育ちで体力だけはある体に鞭打ち、阿鼻叫喚で逃げ惑う人々を避け、襲い来る魔物をかわし、魔王ヨルノダール様♡を追い掛けた。

「おい!勇者ーー!!待てよ!!勇者ーーーー!!!」

「何処行くんじゃぁぁぁ!勇者ぁぁぁ!!」

何か後ろから老害と鎧が追い掛けてきていたが、城下町を抜ける頃には居なくなっていた。

「魔王様万歳!」「魔王様カッコイイーー!」「魔王ヨルノダール様♡万歳!!」「イェーイ☆魔王様☆イェーイ☆」

俺は王都に雪崩込んで来た魔物達に笑顔で魔王様賛辞を送り、ハイタッチしながら彼等がやって来た方へとひた走った。
皆笑顔でハイタッチ返してくれるとかイイヤツ。
ファンクラブとかあるかな。というか、魔王軍て何処で入れるのかな。

あっという間に見えなくなった魔王様♡を切なく思いながら、俺は今後を考えた。

取り敢えず、魔王軍に入ったら会えるんだろうか……。



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