完結【R18】魔王様カッコイー！抱いて♡って思ったら、え、俺が勇者？！

1: 俺、魔王に一目惚れ♡

≪……我は魔王……魔王ヨルノダール……≫


　　　　　　　≪……この世界に終焉オワリを告げるモノ……≫


この世界の中心と言われる程栄華を誇るツーイタール王国の王都タイムイラン。
偶々自分探しの旅王都見物に来ていた俺の頭上に暗雲と共に現れたそれは、煮凝った夜の闇を彷彿させるモノだった。

キャァキャァと人々が逃げ惑い、嘆き叫んで居る中で、俺は一人、その場に縫い止められたかの様に立ち尽くしていた。

その凝こごった闇が形作るモノから目が離せなかった。

地を這うような、轟くような、低い、低い声が降ってきて、建物や石畳、人々を振動させる。俺の、ナカに響いてくる……。


俺は早鐘の様に打つ胸を、何だが手の甲が妙に灼ける様な痛みを放つ右手でそっと押さえ、その名を繰り返した。

「魔王、ヨルノダール……。」


「おおおお！？青年よ！！儂は通りすがりの賢者ドンブルダー！！
その右手の甲に光輝く紋章！紛れもない！そなたこそ、選ばれし勇者！！」


通りすがりの老害が何かを叫んでいるが、そんなことはどうでも良かった。

俺はこのツーイタール王国の端っこの端っこに位置する辺鄙で長閑な農村の次男、リンデール、18歳。

「なんと……！魔王が現れ、時を同じくして勇者も見つかるとは！やはり、全能の女神は我等をお見捨てには……！！」

身体は丈夫な方で、病気などしたことないのが取り柄。
このまま親の畑を継いで、あの田舎の中だけで人生を終わらすのが嫌で、チマチマ貯めた金を掴んで遠路遥々王都まで出てきた、それなりに冒険心ある、ごく一般的な若者だ。

「偶々この場にこの賢者ドンブルダーが居合わせたも、きっと女神からの思し召し！」

身の丈は190を少し越えた程度。一応背は高い方だ。力もそこそこある。
それに小麦の肌に麦藁色の癖毛、若葉色から菫色に収束していく少し珍しい瞳をしているせいで田舎じゃ少しはモテた(と言っても、婆さんか幼女しかいない)が、王都では田舎臭いらしくてまず女が寄ってこない。
よって、恋愛経験０。童貞。

「見ておれ！魔王ヨルノダール！！貴様の思う通りには……」

長所：田舎者らしい純朴さ。
短所：頭の天辺から爪先まで田舎臭さ全開。



ーーさて、こんな俺が魔王の側に行こうと思ったら、どうすれば良いだろう？