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35.共に帝国へ
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他国の歴史から生活習慣、挙句に地理的なものや特産品といったものまで山積みとなっている。
これで商会が盛り上がって、大陸全土が活発になるのであれば、いくらでも持って行って良いと言いたくなるのだけれど……。流石に王弟殿下に申し訳ないから、せめてしっかり読み込んでいってもらおうと、私は私で帝国の地図を探して準備する。
「あ……そういえば結局この国はしばらく帝国の管轄になるだけで、商売は問題ない、で良かったんだろ?」
「そうね」
気になる書物をある程度読み終えたのか、ガルムは仕事の事を聞いてきた。上が変わるだけだし、必要に応じては領地を管理する者が変わったりもするだろうが、民達には影響がない。むしろ上が馬鹿より有能の方が今後生活しやすいとも言えるだろう。
「私も見事婚約破棄をもぎ取ったお陰で、辺境での悠々自適生活を手に入れる事が出来たしね」
ほらここ、と先ほど用意した地図を指さす。
帝国の辺境と言っても、それほど寂れた田舎というわけでもなく、物流も整っている。山や海からの商品が集まるロドル王国から帝国王都に行くまでに通るし、別の三か国からも通る道にもなっている。
「その地は各国への通行にちょうど良い場所だな」
地図を覗き込んでガルムは考え込む。
確かに通行に関しては丁度良いだろう。ただロドル王国以外で言えば、特産品はないように思えるけれど……。人が集まると言えば、集まる。
「ここの国だと今は伝統工芸に力を入れているし、ここは織物が有名だな。……人が集まるとなれば、商会を立てれば売上も見込める……か」
「ならば!商会を!むしろ本部を置くのはどうかしら!?」
「…………」
いっそレストルズ商会の本部を置いてもらえればと提案するも、ガルムは眉間に皺をよせて面倒くさいと言わんばかりの顔をする。
「……学園は通わなくても卒業を免除するから好きな授業だけ受ければ良いし、男爵から子爵にあげても良い位の業績ね。伯爵にすると更に面倒くさくなるから任せるとして……手続き書類は私がしても良いけれど」
それでも嫌そうな顔をする。……むしろ表情だけで、何が嫌で不満に思っているのか分かる程、ガルムと一緒に居たのかとも思える自分に少し心がくすぐったく感じた。
「ならば!私が商会の文官的立場になって書類全部任せてもらっても良いわよ!?」
「……悠々自適生活しなくて良いのか!?」
ガルムは、私の言葉に驚いたように目を見開く。
むしろ私がそれをやるのであれば帝国の方へ拠点を移す事は構わないと言っているようなものだ。まぁ私としても望むのは悠々自適な生活だったのだけれど……。
チラリとガラムを盗み見る。平民から貴族になって、マナー教育もままならない。貴族としてというよりは完全に商人気質。
でも……一緒に居て苦にもならなければ、相手の出方を伺った戦略もなく、とても楽なのだ。
きっと、家族以外にも自分のままで居られるというのは、こういう事なのだろう。
「よし!じゃあ帝国に本部を置くわよ!どんどん帝国へ税金を支払って潤わせて頂戴!」
「はっきり言いすぎだろ!」
――いや、いっそもうお前そいつと結婚してくれないかなぁ。
そう言ったお兄様の言葉が過る。色恋とかは分からないし、真実の愛なんて言って、周囲に対して盲目になるなんて理解不能だ。
……それでも、何となく……興味を示して、これからも一緒に居たいと思える。
「……何がおかしい?」
「別に?」
笑っていた私にガルムが怪訝そうな顔を向けるが、私は私で自分自身の変化に少し驚きつつも、心はほんわり温かかった。
――いつか、この気持ちの正体が分かる日は来るのだろうか。
これで商会が盛り上がって、大陸全土が活発になるのであれば、いくらでも持って行って良いと言いたくなるのだけれど……。流石に王弟殿下に申し訳ないから、せめてしっかり読み込んでいってもらおうと、私は私で帝国の地図を探して準備する。
「あ……そういえば結局この国はしばらく帝国の管轄になるだけで、商売は問題ない、で良かったんだろ?」
「そうね」
気になる書物をある程度読み終えたのか、ガルムは仕事の事を聞いてきた。上が変わるだけだし、必要に応じては領地を管理する者が変わったりもするだろうが、民達には影響がない。むしろ上が馬鹿より有能の方が今後生活しやすいとも言えるだろう。
「私も見事婚約破棄をもぎ取ったお陰で、辺境での悠々自適生活を手に入れる事が出来たしね」
ほらここ、と先ほど用意した地図を指さす。
帝国の辺境と言っても、それほど寂れた田舎というわけでもなく、物流も整っている。山や海からの商品が集まるロドル王国から帝国王都に行くまでに通るし、別の三か国からも通る道にもなっている。
「その地は各国への通行にちょうど良い場所だな」
地図を覗き込んでガルムは考え込む。
確かに通行に関しては丁度良いだろう。ただロドル王国以外で言えば、特産品はないように思えるけれど……。人が集まると言えば、集まる。
「ここの国だと今は伝統工芸に力を入れているし、ここは織物が有名だな。……人が集まるとなれば、商会を立てれば売上も見込める……か」
「ならば!商会を!むしろ本部を置くのはどうかしら!?」
「…………」
いっそレストルズ商会の本部を置いてもらえればと提案するも、ガルムは眉間に皺をよせて面倒くさいと言わんばかりの顔をする。
「……学園は通わなくても卒業を免除するから好きな授業だけ受ければ良いし、男爵から子爵にあげても良い位の業績ね。伯爵にすると更に面倒くさくなるから任せるとして……手続き書類は私がしても良いけれど」
それでも嫌そうな顔をする。……むしろ表情だけで、何が嫌で不満に思っているのか分かる程、ガルムと一緒に居たのかとも思える自分に少し心がくすぐったく感じた。
「ならば!私が商会の文官的立場になって書類全部任せてもらっても良いわよ!?」
「……悠々自適生活しなくて良いのか!?」
ガルムは、私の言葉に驚いたように目を見開く。
むしろ私がそれをやるのであれば帝国の方へ拠点を移す事は構わないと言っているようなものだ。まぁ私としても望むのは悠々自適な生活だったのだけれど……。
チラリとガラムを盗み見る。平民から貴族になって、マナー教育もままならない。貴族としてというよりは完全に商人気質。
でも……一緒に居て苦にもならなければ、相手の出方を伺った戦略もなく、とても楽なのだ。
きっと、家族以外にも自分のままで居られるというのは、こういう事なのだろう。
「よし!じゃあ帝国に本部を置くわよ!どんどん帝国へ税金を支払って潤わせて頂戴!」
「はっきり言いすぎだろ!」
――いや、いっそもうお前そいつと結婚してくれないかなぁ。
そう言ったお兄様の言葉が過る。色恋とかは分からないし、真実の愛なんて言って、周囲に対して盲目になるなんて理解不能だ。
……それでも、何となく……興味を示して、これからも一緒に居たいと思える。
「……何がおかしい?」
「別に?」
笑っていた私にガルムが怪訝そうな顔を向けるが、私は私で自分自身の変化に少し驚きつつも、心はほんわり温かかった。
――いつか、この気持ちの正体が分かる日は来るのだろうか。
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