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09.珍獣扱いですか
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ジェンに至っては流石手際が良い。ベルは未だに怒り心頭と言った様子で握りこぶしを作っているが、急ぎ学園へ向かわねばならぬ事を理解していて、私を馬車乗り場まで案内してくれる。
「まぁ、どうせ遅刻した所で、ロドル王国の貴族学園で習う内容は既に頭に入っているから大丈夫……だけど、印象はよろしくないわね」
「お嬢様が高圧的な皇女様と思われますよ」
「あながち間違ってはいないと思いますよ」
「ジェンは本当に正直すぎる所があるわね」
友人のような気楽さだ。私が笑っているのをよそに、ベルはジェンを睨みつけているが、ジェンは平然としている。
そんな態度も人目につきやすい居住区を出れば、威厳を示す為に一線引いた態度へと代わる。ベルとジェンは静かに私に付き添い、その職務をただ全うするだけ。
それでも、馬車乗り場へ行けば御者はおらずベルが怪訝そうな表情を見せる。
「他国の者に囲まれすぎてもお嬢様が気疲れするかと思いまして」
ジェンがそう言うと、御者台へと座ってくれた。この気遣いは嬉しい。馬車の中でする会話も、下手すれば御者に聞こえる為、いちいち気を遣わなければいけないのだ。
ありがとうと言う私と、よくやったと言わんばかりに微笑むベル。和やかな三人の空気は、学園へ着くまで……だった。
珍獣を見るかのように遠巻きから視線を送りつつ、コソコソと囁き合う人々。帝国皇女が留学してくるという話は、きちんと通達されている筈だ。それでこの態度なのだろうか。
言いたい事をハッキリ言えば不敬になるだろうが、こんなあからさまな態度が不敬にならないと本当に思っているのだろうか、と問いたい。
否、あまりの人数に、この国での教育レベルの低さに頭が痛くなりそうだ。気分が悪い。
「……ここは逆動物園でしょうか?」
「近寄らないという点では、遠距離攻撃に気を付ければ良いだけなので護衛しやすいですね」
ベルの例えで、思わず吹き出しそうになる。ジェンの言う通り、確かに悪意を持って近寄られるくらいなら遠巻きで良い。というか不敬な事をされそうなので近寄らないで頂きたい。話しかけられるのも遠慮したい程、酷いマナーだと思う。
しかし、貴族学園だと言うのに、あまりにも低能すぎる事に、ため息を吐きたくなるのをグッと堪えて姿勢を正したまま前を向いて堂々と歩く。
帝国の属国という立場を何だと思っているのか。もし帝国を下に見ているとしたら……愚民でしかない。
「皆さん、ごきげんよう」
ふと嫌がらせにもなるのだろうかと、立ち止まって笑顔で周囲に対してそう言えば、蜘蛛の子を散らしたように逃げていった。
これはこれで面白いが、気分が良いわけではない。
「皇女様の挨拶を何だと思っているのでしょう」
「不愉快なものが視界から居なくなっただけよ」
ベルの言葉に対して、私は率直な意見を述べる。あんなコソコソずっと言われ続けるのは私の精神衛生上よろしくない。
それからも、職員室へ行けば教師からは問答無用で値踏みするよう見られ、教師が案内してくれて教室まで向かう道中では、相変わらず生徒達が遠巻きに噂をしてくる。
仮面のように無駄な笑顔を振りまく必要性も分からず、思わず能面のように一切何も見せない表情で歩く。後ろから無駄にベルの殺気が漂っているのは気にしない。
むしろ見限るというか、愛嬌を振りまく必要性がないという事を理解させてくれて、有難い位だ。無駄な労力を使う必要がない。
「まぁ、どうせ遅刻した所で、ロドル王国の貴族学園で習う内容は既に頭に入っているから大丈夫……だけど、印象はよろしくないわね」
「お嬢様が高圧的な皇女様と思われますよ」
「あながち間違ってはいないと思いますよ」
「ジェンは本当に正直すぎる所があるわね」
友人のような気楽さだ。私が笑っているのをよそに、ベルはジェンを睨みつけているが、ジェンは平然としている。
そんな態度も人目につきやすい居住区を出れば、威厳を示す為に一線引いた態度へと代わる。ベルとジェンは静かに私に付き添い、その職務をただ全うするだけ。
それでも、馬車乗り場へ行けば御者はおらずベルが怪訝そうな表情を見せる。
「他国の者に囲まれすぎてもお嬢様が気疲れするかと思いまして」
ジェンがそう言うと、御者台へと座ってくれた。この気遣いは嬉しい。馬車の中でする会話も、下手すれば御者に聞こえる為、いちいち気を遣わなければいけないのだ。
ありがとうと言う私と、よくやったと言わんばかりに微笑むベル。和やかな三人の空気は、学園へ着くまで……だった。
珍獣を見るかのように遠巻きから視線を送りつつ、コソコソと囁き合う人々。帝国皇女が留学してくるという話は、きちんと通達されている筈だ。それでこの態度なのだろうか。
言いたい事をハッキリ言えば不敬になるだろうが、こんなあからさまな態度が不敬にならないと本当に思っているのだろうか、と問いたい。
否、あまりの人数に、この国での教育レベルの低さに頭が痛くなりそうだ。気分が悪い。
「……ここは逆動物園でしょうか?」
「近寄らないという点では、遠距離攻撃に気を付ければ良いだけなので護衛しやすいですね」
ベルの例えで、思わず吹き出しそうになる。ジェンの言う通り、確かに悪意を持って近寄られるくらいなら遠巻きで良い。というか不敬な事をされそうなので近寄らないで頂きたい。話しかけられるのも遠慮したい程、酷いマナーだと思う。
しかし、貴族学園だと言うのに、あまりにも低能すぎる事に、ため息を吐きたくなるのをグッと堪えて姿勢を正したまま前を向いて堂々と歩く。
帝国の属国という立場を何だと思っているのか。もし帝国を下に見ているとしたら……愚民でしかない。
「皆さん、ごきげんよう」
ふと嫌がらせにもなるのだろうかと、立ち止まって笑顔で周囲に対してそう言えば、蜘蛛の子を散らしたように逃げていった。
これはこれで面白いが、気分が良いわけではない。
「皇女様の挨拶を何だと思っているのでしょう」
「不愉快なものが視界から居なくなっただけよ」
ベルの言葉に対して、私は率直な意見を述べる。あんなコソコソずっと言われ続けるのは私の精神衛生上よろしくない。
それからも、職員室へ行けば教師からは問答無用で値踏みするよう見られ、教師が案内してくれて教室まで向かう道中では、相変わらず生徒達が遠巻きに噂をしてくる。
仮面のように無駄な笑顔を振りまく必要性も分からず、思わず能面のように一切何も見せない表情で歩く。後ろから無駄にベルの殺気が漂っているのは気にしない。
むしろ見限るというか、愛嬌を振りまく必要性がないという事を理解させてくれて、有難い位だ。無駄な労力を使う必要がない。
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