7 / 35
07.ロドル王国
しおりを挟む
「リズもちゃんと理解はしているからな……。安心が欲しかったのか。しっかり手綱を掴んでこい」
「そうだな。問題なければ、一度こちらへ花嫁修業に帰ってきてから、またロドル王国へ迎えば良い。お前は賢いから学ぶよりは少しゆっくりしていれば良いだろう」
既に嫁へと出す心境なのか、お父様の目に涙が浮かび、お兄様も感極まっている。
……甘い!そうじゃない!
私は安心が欲しかったわけではない。いや、将来安泰という確証は欲しかったけれども!
「いえ!婚約破棄される事を目標に隣国へ行かせて頂きます!」
面倒な結婚や王妃としての執務より、辺境での悠々自適生活の方が良いに決まっている!
夫婦生活という仕事がなくなるだけでも、十分肩の荷が下りるというもの!跡継ぎの事も気にしなくて良いなんて、気にする事は何もなくなる。
「…………リズ…………」
「…………あぁ…………」
そんな私の言葉に、お父様とお兄様は生気の抜けた顔で、ただ呆れ果てていた。
「ようこそ起こし下さいました!皇女様」
「遠路はるばる、お疲れでしょう。サロンでお茶でもいかがでしょうか」
金髪碧眼で穏やかな国王と薄い茶髪にエメラルドグリーンの瞳をしたきつめ美人の王妃が出迎えてくれ、気遣うようお茶の申し出をされる。それを承諾した私は、二人に案内される形でサロンへと向かう。
あれから直ぐにロドル王国へ、ロス王太子と仲を深める為に卒業までの短い間、留学するという旨を送り、承諾の返事を貰ってからやってきた。
……まぁ、お父様の事だから、これが決定事項であると承諾する以外ない書き方をしていると思うけれど。私もそれを見越して用意していたので、素早く行動する事が出来た。
それも全て、とっとと婚約をなくして辺境で悠々自適生活を送る為だ。
「王城の居住区へお部屋は用意してありますが、まだ婚姻前なので客室をご用意させて頂きました」
「ありがとうございます」
それは当然の事だし、堅苦しく過ごすくらいならいっそ離宮でも良いのだが、そこまでしてしまえば仲を深めるという理由がなくなってしまう。
サロンでは国王と王妃が私に対して丁寧に接してくれる。
「それでは私は失礼いたします」
私は専属侍女の言葉に了承の意味を込めて頷く。
国王や王妃とお茶をしている間に、私に付いてきてくれた専属侍女へ女官長が王城内を案内するのだ。私が迷わないように。
国王と王妃は、ロドル王国の事や学園の事を説明してくれた。……まぁ、事前学習して知っているけど、ここの好意は有難く受け取っておく。
ノルウェット帝国の書物や情報が間違っていると思えないが、古い場合もあるからだ。それにしても、何故、この二人だけなのか。
「それで……王太子殿下はどちらに?」
ビクリと、二人の身体が大げさに揺れたのを見逃さなかった。
ロドル王国はノルウェット帝国の属国で、ノルウェット帝国の皇女である私が来ているのだ。……婚約者云々を抜きにしても、次期国王となる王太子が挨拶に来ないのはマナーとして如何なものか。それに、ロドル王国国王の子どもは、ロス・ロドルただ一人だ。
本来であれば、三人そろって私を出迎えるものだろう。
「ロスは……その、体調を崩しておりまして」
「え……えぇ!風邪のようで、皇女様にうつしてはいけないと」
目が泳いでいる二人を観察するように圧をかけると、二人は私から顔ごと視線を反らした。
……それは、嘘をついていると自ら吐露しているようなものだと私は判断する。そして、王太子を教育する事も出来なければ、息子を窘める技量すらないのだと。
「そうだな。問題なければ、一度こちらへ花嫁修業に帰ってきてから、またロドル王国へ迎えば良い。お前は賢いから学ぶよりは少しゆっくりしていれば良いだろう」
既に嫁へと出す心境なのか、お父様の目に涙が浮かび、お兄様も感極まっている。
……甘い!そうじゃない!
私は安心が欲しかったわけではない。いや、将来安泰という確証は欲しかったけれども!
「いえ!婚約破棄される事を目標に隣国へ行かせて頂きます!」
面倒な結婚や王妃としての執務より、辺境での悠々自適生活の方が良いに決まっている!
夫婦生活という仕事がなくなるだけでも、十分肩の荷が下りるというもの!跡継ぎの事も気にしなくて良いなんて、気にする事は何もなくなる。
「…………リズ…………」
「…………あぁ…………」
そんな私の言葉に、お父様とお兄様は生気の抜けた顔で、ただ呆れ果てていた。
「ようこそ起こし下さいました!皇女様」
「遠路はるばる、お疲れでしょう。サロンでお茶でもいかがでしょうか」
金髪碧眼で穏やかな国王と薄い茶髪にエメラルドグリーンの瞳をしたきつめ美人の王妃が出迎えてくれ、気遣うようお茶の申し出をされる。それを承諾した私は、二人に案内される形でサロンへと向かう。
あれから直ぐにロドル王国へ、ロス王太子と仲を深める為に卒業までの短い間、留学するという旨を送り、承諾の返事を貰ってからやってきた。
……まぁ、お父様の事だから、これが決定事項であると承諾する以外ない書き方をしていると思うけれど。私もそれを見越して用意していたので、素早く行動する事が出来た。
それも全て、とっとと婚約をなくして辺境で悠々自適生活を送る為だ。
「王城の居住区へお部屋は用意してありますが、まだ婚姻前なので客室をご用意させて頂きました」
「ありがとうございます」
それは当然の事だし、堅苦しく過ごすくらいならいっそ離宮でも良いのだが、そこまでしてしまえば仲を深めるという理由がなくなってしまう。
サロンでは国王と王妃が私に対して丁寧に接してくれる。
「それでは私は失礼いたします」
私は専属侍女の言葉に了承の意味を込めて頷く。
国王や王妃とお茶をしている間に、私に付いてきてくれた専属侍女へ女官長が王城内を案内するのだ。私が迷わないように。
国王と王妃は、ロドル王国の事や学園の事を説明してくれた。……まぁ、事前学習して知っているけど、ここの好意は有難く受け取っておく。
ノルウェット帝国の書物や情報が間違っていると思えないが、古い場合もあるからだ。それにしても、何故、この二人だけなのか。
「それで……王太子殿下はどちらに?」
ビクリと、二人の身体が大げさに揺れたのを見逃さなかった。
ロドル王国はノルウェット帝国の属国で、ノルウェット帝国の皇女である私が来ているのだ。……婚約者云々を抜きにしても、次期国王となる王太子が挨拶に来ないのはマナーとして如何なものか。それに、ロドル王国国王の子どもは、ロス・ロドルただ一人だ。
本来であれば、三人そろって私を出迎えるものだろう。
「ロスは……その、体調を崩しておりまして」
「え……えぇ!風邪のようで、皇女様にうつしてはいけないと」
目が泳いでいる二人を観察するように圧をかけると、二人は私から顔ごと視線を反らした。
……それは、嘘をついていると自ら吐露しているようなものだと私は判断する。そして、王太子を教育する事も出来なければ、息子を窘める技量すらないのだと。
67
お気に入りに追加
1,876
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢と言われましたけど、大人しく断罪されるわけないでしょう?
山咲莉亜
恋愛
「カティア・ローデント公爵令嬢!心優しい令嬢をいじめ抜き、先日は階段から突き落としたそうだな!俺はそんな悪役令嬢と結婚するつもりはない!お前との婚約を破棄し、男爵令嬢アリアと婚約することをここに宣言する!」
卒業パーティーと言う大事な場での婚約破棄。彼は生まれた時から決められていた私の婚約者。私の両親は嫌がったらしいが王家が決めた婚約、反対することは出来なかった。何代も前からローデント公爵家と彼の生まれ育ったレモーネ公爵家は敵対していた。その関係を少しでも改善させようと言う考えで仕組まれた婚約。
花嫁教育としてレモーネ家に通うも当然嫌われ者、婚約者に大切にされた覚えはなく、学園に入学してからはそこの男爵令嬢と浮気。
…………私を何だと思っているのでしょうか?今までどんなに嫌がらせを受けても悪口を言われても黙っていました。でもそれは家に迷惑をかけないため。決して貴方に好き勝手されるためではありません。浮気のことだって隠していたつもりのようですが私が気付かないわけがありません。
悪役令嬢と言われましたけど、大人しく断罪されるわけないでしょう?断罪されるのは───あなたの方です。
完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。
「これは私ですが、そちらは私ではありません」
イチイ アキラ
恋愛
試験結果が貼り出された朝。
その掲示を見に来ていたマリアは、王子のハロルドに指をつきつけられ、告げられた。
「婚約破棄だ!」
と。
その理由は、マリアが試験に不正をしているからだという。
マリアの返事は…。
前世がある意味とんでもないひとりの女性のお話。
婚約者と妹が運命的な恋をしたそうなので、お望み通り2人で過ごせるように別れることにしました
柚木ゆず
恋愛
※4月3日、本編完結いたしました。4月5日(恐らく夕方ごろ)より、番外編の投稿を始めさせていただきます。
「ヴィクトリア。君との婚約を白紙にしたい」
「おねぇちゃん。実はオスカーさんの運命の人だった、妹のメリッサです……っ」
私の婚約者オスカーは真に愛すべき人を見つけたそうなので、妹のメリッサと結婚できるように婚約を解消してあげることにしました。
そうして2人は呆れる私の前でイチャイチャしたあと、同棲を宣言。幸せな毎日になると喜びながら、仲良く去っていきました。
でも――。そんな毎日になるとは、思わない。
2人はとある理由で、いずれ婚約を解消することになる。
私は破局を確信しながら、元婚約者と妹が乗る馬車を眺めたのでした。
婚約破棄された令嬢が呆然としてる間に、周囲の人達が王子を論破してくれました
マーサ
恋愛
国王在位15年を祝うパーティの場で、第1王子であるアルベールから婚約破棄を宣告された侯爵令嬢オルタンス。
真意を問いただそうとした瞬間、隣国の王太子や第2王子、学友たちまでアルベールに反論し始め、オルタンスが一言も話さないまま事態は収束に向かっていく…。
聖女であることを隠す公爵令嬢は国外で幸せになりたい
カレイ
恋愛
公爵令嬢オデットはある日、浮気というありもしない罪で国外追放を受けた。それは王太子妃として王族に嫁いだ姉が仕組んだことで。
聖女の力で虐待を受ける弟ルイスを護っていたオデットは、やっと巡ってきたチャンスだとばかりにルイスを連れ、その日のうちに国を出ることに。しかしそれも一筋縄ではいかず敵が塞がるばかり。
その度に助けてくれるのは、侍女のティアナと、何故か浮気相手と疑われた副騎士団長のサイアス。謎にスキルの高い二人と行動を共にしながら、オデットはルイスを救うため奮闘する。
※胸糞悪いシーンがいくつかあります。苦手な方はお気をつけください。
【完結】婚約破棄された公爵令嬢、やることもないので趣味に没頭した結果
バレシエ
恋愛
サンカレア公爵令嬢オリビア・サンカレアは、恋愛小説が好きなごく普通の公爵令嬢である。
そんな彼女は学院の卒業パーティーを友人のリリアナと楽しんでいた。
そこに遅れて登場したのが彼女の婚約者で、王国の第一王子レオンハルト・フォン・グランベルである。
彼のそばにはあろうことか、婚約者のオリビアを差し置いて、王子とイチャイチャする少女がいるではないか!
「今日こそはガツンといってやりますわ!」と、心強いお供を引き連れ王子を詰めるオリビア。
やりこまれてしまいそうになりながらも、優秀な援護射撃を受け、王子をたしなめることに成功したかと思ったのもつかの間、王子は起死回生の一手を打つ!
「オリビア、お前との婚約は今日限りだ! 今、この時をもって婚約を破棄させてもらう!」
「なぁッ!! なんですってぇー!!!」
あまりの出来事に昏倒するオリビア!
この事件は王国に大きな波紋を起こすことになるが、徐々に日常が回復するにつれて、オリビアは手持ち無沙汰を感じるようになる。
学園も卒業し、王妃教育も無くなってしまって、やることがなくなってしまったのだ。
そこで唯一の趣味である恋愛小説を読んで時間を潰そうとするが、なにか物足りない。
そして、ふと思いついてしまうのである。
「そうだ! わたくしも小説を書いてみようかしら!」
ここに謎の恋愛小説家オリビア~ンが爆誕した。
彼女の作品は王国全土で人気を博し、次第にオリビアを捨てた王子たちを苦しめていくのであった。
信頼はお金では買えません。ご存じありませんか? それはご愁傷様です
ノ木瀬 優
恋愛
突然婚約者から婚約破棄を突き付けられたミナ。頑張って立ち上げた商会も半分持っていかれてしまった。そんなミナを執事のロロが優しくサポートする。一方その頃、婚約破棄したカールは……。
アルファポリス初投稿です!
(主になろうをメインで活動していました。)
よくある婚約破棄物、全7話で2万字ちょっとの短い作品です。
本日中に完結します。軽い気持ちで読んで頂けたらと思います。R15は保険です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる