33 / 134
第一章
33.消えた辺境
しおりを挟む
皆の知恵を出し合って、少しずつ食事も変化した。
そして私は生活魔術を使ってメイドの仕事を教えてもらったり……。
キィは相変わらず勉強ばかりして、どんどん知識を吸収した上に神力の扱いも上手だ。
琴子もそれなりに頑張っている。
真は……一体何をしているのやら。それなりに勉強も出来るようだけれど。
「ふわふわのパンというのは……とても美味しいですね」
和やかな朝食。
恵が辺境へと追いやられた時は変に肩ひじ張っていたけれど、今は少し気を緩める事が出来ている。
「勉強以外にも、色々と挑戦してみてください。こちらも教わる事があると思いますので」
微笑む枢機卿に、皆が小さく頷けば、ドタバタと乱暴な足音がこちらに向かってきた。
「失礼致します! 枢機卿!」
一体何事!?
入って来た兵士のような人は、肩で息をしながら食堂へとズカズカ入ってくる。もはやノックという礼儀すら省く緊急事態なのだろう。
もはやゆったりとした食事なんて出来るわけもなく、枢機卿も緊張した面持ちで兵士を見ている。勿論、私達もだ。
「辺境が……辺境が消えました!」
「なんだと!? どういう事だ!?」
消えた……消えた?
消えたとは?
一体どういう事かと、私達もお互いがお互いを見て焦る。
辺境には恵が居る。全く知らない間柄でもない分、心配になる。
「そのままの言葉通り、人や家畜、木々や農作物の全て消え去ったのです!」
「っ!!」
脳が理解するのを拒否したくなる。
消え去った。文字通り消え去ったのだろう。
……どこへ? どうして?
「……恵は……大丈夫なのかしら……」
それは消えずに残っているのかどうかという事か。
琴子の呟きに、誰も答える事なんて出来ない。
慌ただしく枢機卿は兵士と共に出て行き、私達は残されたけれど、それ以上、食事をする気にもなれない。誰かが何か言う事もなく、無言で席を立って私達は部屋へと戻って行った。
国全体が慌ただしくしている中、急に事態が動いた。
否、事態が動いたわけではなく、ただ単にいきなり私達へと声がかかっただけなのだが、こちらとしては青天の霹靂だ。
「贈り人方も辺境へと来て現場を見て、一緒に調べて欲しい」
王太子がやってきたかと思えば、枢機卿と共にそんな言葉を口にしたのだ。
……人が消えた現場へ?
「既に人をやって、現場に危険がない事は確認されている! もう消える人は居ない!」
表情に出ていたのだろうか、王太子は焦ったように言葉を吐く。
確かに贈り人を減らすような行為はしたくないだろう。というか、こちらに拒否権なんてないのも理解している。
私達が辺境へ行く事は決定事項なのだ。
そして私は生活魔術を使ってメイドの仕事を教えてもらったり……。
キィは相変わらず勉強ばかりして、どんどん知識を吸収した上に神力の扱いも上手だ。
琴子もそれなりに頑張っている。
真は……一体何をしているのやら。それなりに勉強も出来るようだけれど。
「ふわふわのパンというのは……とても美味しいですね」
和やかな朝食。
恵が辺境へと追いやられた時は変に肩ひじ張っていたけれど、今は少し気を緩める事が出来ている。
「勉強以外にも、色々と挑戦してみてください。こちらも教わる事があると思いますので」
微笑む枢機卿に、皆が小さく頷けば、ドタバタと乱暴な足音がこちらに向かってきた。
「失礼致します! 枢機卿!」
一体何事!?
入って来た兵士のような人は、肩で息をしながら食堂へとズカズカ入ってくる。もはやノックという礼儀すら省く緊急事態なのだろう。
もはやゆったりとした食事なんて出来るわけもなく、枢機卿も緊張した面持ちで兵士を見ている。勿論、私達もだ。
「辺境が……辺境が消えました!」
「なんだと!? どういう事だ!?」
消えた……消えた?
消えたとは?
一体どういう事かと、私達もお互いがお互いを見て焦る。
辺境には恵が居る。全く知らない間柄でもない分、心配になる。
「そのままの言葉通り、人や家畜、木々や農作物の全て消え去ったのです!」
「っ!!」
脳が理解するのを拒否したくなる。
消え去った。文字通り消え去ったのだろう。
……どこへ? どうして?
「……恵は……大丈夫なのかしら……」
それは消えずに残っているのかどうかという事か。
琴子の呟きに、誰も答える事なんて出来ない。
慌ただしく枢機卿は兵士と共に出て行き、私達は残されたけれど、それ以上、食事をする気にもなれない。誰かが何か言う事もなく、無言で席を立って私達は部屋へと戻って行った。
国全体が慌ただしくしている中、急に事態が動いた。
否、事態が動いたわけではなく、ただ単にいきなり私達へと声がかかっただけなのだが、こちらとしては青天の霹靂だ。
「贈り人方も辺境へと来て現場を見て、一緒に調べて欲しい」
王太子がやってきたかと思えば、枢機卿と共にそんな言葉を口にしたのだ。
……人が消えた現場へ?
「既に人をやって、現場に危険がない事は確認されている! もう消える人は居ない!」
表情に出ていたのだろうか、王太子は焦ったように言葉を吐く。
確かに贈り人を減らすような行為はしたくないだろう。というか、こちらに拒否権なんてないのも理解している。
私達が辺境へ行く事は決定事項なのだ。
81
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。
「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」
と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。
【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします
ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに
11年後、もう一人 聖女認定された。
王子は同じ聖女なら美人がいいと
元の聖女を偽物として追放した。
後に二人に天罰が降る。
これが この体に入る前の世界で読んだ
Web小説の本編。
だけど、読者からの激しいクレームに遭い
救済続編が書かれた。
その激しいクレームを入れた
読者の一人が私だった。
異世界の追放予定の聖女の中に
入り込んだ私は小説の知識を
活用して対策をした。
大人しく追放なんてさせない!
* 作り話です。
* 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。
* 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。
* 掲載は3日に一度。
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる