【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

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第一章

33.消えた辺境

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 皆の知恵を出し合って、少しずつ食事も変化した。
 そして私は生活魔術を使ってメイドの仕事を教えてもらったり……。
 キィは相変わらず勉強ばかりして、どんどん知識を吸収した上に神力の扱いも上手だ。
 琴子もそれなりに頑張っている。
 真は……一体何をしているのやら。それなりに勉強も出来るようだけれど。

「ふわふわのパンというのは……とても美味しいですね」

 和やかな朝食。
 恵が辺境へと追いやられた時は変に肩ひじ張っていたけれど、今は少し気を緩める事が出来ている。

「勉強以外にも、色々と挑戦してみてください。こちらも教わる事があると思いますので」

 微笑む枢機卿に、皆が小さく頷けば、ドタバタと乱暴な足音がこちらに向かってきた。

「失礼致します! 枢機卿!」

 一体何事!?
 入って来た兵士のような人は、肩で息をしながら食堂へとズカズカ入ってくる。もはやノックという礼儀すら省く緊急事態なのだろう。
 もはやゆったりとした食事なんて出来るわけもなく、枢機卿も緊張した面持ちで兵士を見ている。勿論、私達もだ。

「辺境が……辺境が消えました!」
「なんだと!? どういう事だ!?」

 消えた……消えた?
 消えたとは?
 一体どういう事かと、私達もお互いがお互いを見て焦る。
 辺境には恵が居る。全く知らない間柄でもない分、心配になる。

「そのままの言葉通り、人や家畜、木々や農作物の全て消え去ったのです!」
「っ!!」

 脳が理解するのを拒否したくなる。
 消え去った。文字通り消え去ったのだろう。
 ……どこへ? どうして?

「……恵は……大丈夫なのかしら……」

 それは消えずに残っているのかどうかという事か。
 琴子の呟きに、誰も答える事なんて出来ない。
 慌ただしく枢機卿は兵士と共に出て行き、私達は残されたけれど、それ以上、食事をする気にもなれない。誰かが何か言う事もなく、無言で席を立って私達は部屋へと戻って行った。



 国全体が慌ただしくしている中、急に事態が動いた。
 否、事態が動いたわけではなく、ただ単にいきなり私達へと声がかかっただけなのだが、こちらとしては青天の霹靂だ。

「贈り人方も辺境へと来て現場を見て、一緒に調べて欲しい」

 王太子がやってきたかと思えば、枢機卿と共にそんな言葉を口にしたのだ。
 ……人が消えた現場へ?

「既に人をやって、現場に危険がない事は確認されている! もう消える人は居ない!」

 表情に出ていたのだろうか、王太子は焦ったように言葉を吐く。
 確かに贈り人を減らすような行為はしたくないだろう。というか、こちらに拒否権なんてないのも理解している。
 私達が辺境へ行く事は決定事項なのだ。
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