双子の妹に全てを奪われた令嬢は訳あり公爵様と幸せになる

甘糖むい

文字の大きさ
上 下
17 / 76

16

しおりを挟む
「わぁ…」

舌で押しつぶしただけでとろけるように消えたオムレツに、ミシャルは驚いて声を上げた。

食べた事もない卵の優しい甘さと共に喉の奥へと消えたオムレツはミシャルに空腹である事を思い出させるには十分な代物だった。
くぅ、と満たされていないとお腹が鳴って、耳ざとく聞き届けたクロディクスがふきだした。

「ははっ、腹の虫はずいぶんと素直らしいな。そら、こちらも食べなさい」

またもや魔法でクロディクスは新しい取り皿に別の料理をよそうと、ミシャルに届けた。
千切りにされた野菜の餡がたっぷりかかった魚は、一度素揚げされていて食べなくてもふわふわとした食感であることが伺えた。

取り繕うのもやめて、ミシャルはお礼を告げたあと、オムレツを食べたフォークで魚のあんかけを頬張るように口に入れた。
口の端についた餡もぺろり、と舌で拭って咀嚼する。

想像よりもしっとりとしてふわふわな身と、野菜の甘さがしっかりと染み出たとろりとしたあんがまっちして飲み込まないうちにまたくちに入れたくなるほど美味しかった。

リュークが置いて行ってくれたスープもコリコリとした食感の黒いもの、クロディクスがきくらげと教えてくれた。
キクラゲの触感と、とろみのついたスープはさっぱりとした口に戻してくれる少し酸味のきいた味だった。

あまりなじみのない味わいに驚いていると、クロディクスはリュークは別の国の出身と聞き、どれも食べたことがない味でもおいしい理由に行きついた。

特にミシャルが気に入ったのは甘い餡が入った蒸しまんじゅうだった。
うさぎのかたちが可愛いとなかなか口にしないミシャルにクロディクスは人差し指を振ってミシャルの口にうさぎをほりこんだ。

目を白黒させて咀嚼するミシャルを笑っていたクロディクスはミシャルが噛むたびに顔を光らせて余計に笑い声をあげた。

「甘くていろんな木の実の味がしておいしいです!」

1匹を食べ終えたミシャルがクロディクスに報告をしたとき、クロディクスは息も絶え絶えな様子でミシャルの前に蒸し饅頭ののった皿を移動させてやった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済】侯爵令息様のお飾り妻

鳴宮野々花@軍神騎士団長1月15日発売
恋愛
 没落の一途をたどるアップルヤード伯爵家の娘メリナは、とある理由から美しい侯爵令息のザイール・コネリーに“お飾りの妻になって欲しい”と持ちかけられる。期間限定のその白い結婚は互いの都合のための秘密の契約結婚だったが、メリナは過去に優しくしてくれたことのあるザイールに、ひそかにずっと想いを寄せていて─────

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~

Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。 そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。 「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」 ※ご都合主義、ふんわり設定です ※小説家になろう様にも掲載しています

はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ
恋愛
 姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。  婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。  こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。  そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

成人したのであなたから卒業させていただきます。

ぽんぽこ狸
恋愛
 フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。  すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。  メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。  しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。  それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。  そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。  変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」  夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。  後に夫から聞かされた衝撃の事実。  アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。 ※シリアスです。 ※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

【完結】婚約者が好きなのです

maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。 でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。 冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。 彼の幼馴染だ。 そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。 私はどうすればいいのだろうか。 全34話(番外編含む) ※他サイトにも投稿しております ※1話〜4話までは文字数多めです 注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)

処理中です...