双子の妹に全てを奪われた令嬢は訳あり公爵様と幸せになる

甘糖むい

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「ミシャル様!どこに行ってらしたんですか!」

ヴァイスと話をしながら長い廊下を戻っていると、ミシャルを呼ぶゼリヌが慌てた表情で近寄ってきた。
足を止めたミシャルを早足で寄ってきたゼリヌが庇うようにヴァイスとの間に入る。

何故か敵対するような強い視線で睨むゼリヌをヴァイスは気にしていないようで、むしろ面白い物が始まったと怪しい笑みを浮かべていた。

ゼリヌの背中越しにその笑みを見たミシャルは、ぞっと背中に走った悪寒に身体を震わせた。
見てはいけない物を見てしまった気になって咄嗟にゼリヌの背中に身体を隠すことにした。

「ごめんなさいゼリヌ、あなたを探しに行こうとしたら迷ってしまって」

申し訳なく思ってミシャルが謝ると自分がミシャルから離れてしまったからだと勢いよく振り向いたゼリヌにミシャルは逆に謝られてしまった。
身体を検分するように見つめてくるゼリヌに怪我がないか問われる。
室内で何をそんなに恐ろしいことがあるのかと、不思議に思ったものの口にするのは必死の形相を浮かべているゼリヌの表情に憚られて口を閉じた。

「この男に何かされませんでしたか?」
「…おいおい、迷っているようだから声をかけただけだろう」
「貴方は信用なりません、自分さえ楽しければ何でもする悪魔なんですから!」
「誤解を抱く言い方はよせ、そこまで非道ではないぞ。たぶん」

ぽんぽんとリズムよく言葉のやり取りが始まる。
ゼリヌが一方的に嫌っている様子で邪険に扱っているのに対して、ヴァイスは何処か楽し気なやり取りはミシャルを放って次々と進んでいく。
ヴァイスを庇おうとすればゼリヌの視線がきつくなったためミシャルは二人のやり取りが終わるまで大人しくゼリヌの背に隠れていることにした。

「大体貴方は…」

きゅう。
小さいとはいいがたい鳴き声に似た音が鳴ってゼリヌの言葉はぴたりとやんだ。
ゼリヌのまだ小言が続きそうな状況の中、ミシャルに4つの目が向く。

「随分と面白いモノを飼ってるなぁ」

心の底から感心したようなヴァイスの物言いに、ミシャルは逃げ出したい気持ちになった。
俯いてまっかに染まる頬を見られないようにしようと蹲るものの、動いた事でまたお腹が大きな音を立てる。
羞恥心で動けなくなったミシャルは暫く動くことが出来ずにその場に座り込んでいたが、ゼリヌにひっぱりあげられて食堂にヴァイスを従えて向かうことになった。
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