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第五節「交錯する想い 友よ知れ 命はそこにある」
~雄姿 砲撃 成長せしかの者達~
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「ヌウッ!! 魔剣使いが来たぞおッ!!」
「「「魔剣使いだ!! 陣形を乱すなあッ!!」」」
勇の存在に気付き、たちまち魔者達が一斉に叫びを上げる。
網目状に広がった布陣はこういった情報伝達も声を上げるだけで一瞬にして伝える事も目的としているのだろう。
それだけ彼等にとって魔剣使いは脅威であるという事に他ならない。
更に、攻撃の矛先は勇へと向けられる。
散らばる様に展開していた者達の動きが急激な動きを見せたのだ。
「【ジンジャラムの陣形】徹底せよッ!! 魔剣使いを逃がすなあっ!!」
迫る勇に対して魔者達が取った行動―――それは陣形の維持。
そう、彼等の布陣にはやはり意味があった。
その名も、対魔剣使い用布陣【ジンジャラムの陣形】。
【ザサブ族】が得意とする、魔剣使い対策に特化した戦術である。
魔者同士が網目状に広がっているのにも当然理由がある。
一つは、勇の様な近接型の魔剣使いを走らせて疲弊させる為。
各個撃破されようともその犠牲もいとわないスタンスで。
ただ憎き魔剣使いを確実に倒す為ならばと。
もう一つは、遠距離型の魔剣使いの攻撃による被害を防ぐ為でもある。
ちゃなの様な遠距離砲撃系魔剣使いの攻撃は大抵が一撃必殺で、影響範囲も広い。
だがこうして離れてしまえば、その被害は最小限に抑えられる。
一網打尽で無駄な死を避ける為の役目も果たしているという訳だ。
そして疲弊した所を攻めれば、如何に魔剣使いが強靭であろうとも倒す事は可能。
だからこうして彼等は今日まで生き残って来た。
持てる知識を動員し、天敵とも言える者達を退け続ける事で。
その戦い方は力でねじ伏せるダッゾ族とはまるで違う。
人間と同じ、考えて行動する相手なのである。
でもその戦法が必ずしも勇達に通じるとは限らない。
「おおーーーッ!!」
勇がその身を屈めさせながら緩やかな坂道を駆け登る。
そんな陣形の意味も知らないままに。
いや、その意味を考える必要は無いのだろう。
何故なら、勇にとっては退ける以外に道は無いのだから。
例え自分が如何に不利であろうとも。
今の勇には周囲の動きを読み取る事が出来る。
敵が剣や槍を奮う所も、投げ付けてくる石の軌道をも。
その時に生まれる風の音さえも。
まるで全てが手に取れるかの様に。
再三にして感じ取る事が出来た今、勇はその感覚をこう確信する。
これは明らかに魔剣に通ずる力なのだと。
その力を駆使する以上、もはや一介の雑兵が捉えられる理由などありはしない。
「何だコイツの動きはッ!? ウウッ!?」
そしてその力は【ザサブ族】にとっても例外だった。
魔者達がこぞって勇を囲み、一心不乱に武器を奮う。
しかしそのいずれもが空を切り、無為に消えるのみ。
それどころか、隙間を縫う様に駆け抜けては切り刻まれていく。
それだけではない。
小さな石ころによる投石ですらも軽く躱されるのだ。
しかも投げた直後には既に軌道から外れている程に素早く。
決して、こうして相対した者に魔剣使いと戦った経験が無い訳ではない。
この様な動きが出来る相手と戦った事が無いだけ。
そう、勇の動きは明らかに彼等にとって異常だったのである。
しかし彼等が慄くのはこれだけに留まらない。
ドゴォーンッ!!
なんと勇を囲んでいた魔者達が一人、また一人と爆発に巻き込まれ始めたのだ。
それだけに留まらず、前線で自衛隊員を押していた魔者さえも。
それは遠方からの、ちゃなの【ドゥルムエーヴェ】による砲撃。
小さな炎弾が高速で魔者の陣営へと放たれていたのである。
その全てが正確無比で一撃必殺。
しかもそれが大量に。
何度も何度も、留まる事を知らずに光を放ち続けていたのだ。
これだけの攻撃を連射出来るなど、本来はあり得ない事。
それを可能にする彼女の存在は魔者達にとって明らかな脅威に他ならない。
今の陣形はそんな砲撃の被害を最小限に食い止める為。
こうして数を撃てる相手が居ないと信じていたからこその布陣だ。
でもその常識とも言える認識が瓦解した時、彼等の戦いの根底が覆る。
「この二人は今までの普通の魔剣使いとは訳が違う」のだと。
その事を、勇達自身はまだ気付いていない。
ただ勇はちゃなの事に気付いていて。
ちゃなは勇の事に気が付いている。
互いに「やはりあの人は凄い」と想いを連ねる程に。
そして「自分も負けられない」と思える程に。
◇◇◇
勇が駆け出し、ちゃなが陣営前に陣取ってまだ十分と経っていない。
その間だけで既に魔者達が次々と大地に伏し、勇はあっという間に景色の彼方へ。
更にちゃなからは炎弾が光の筋を伴ってとめどなく放たれ続けていて。
その圧倒的な光景を前に、心輝達のみならず福留や自衛隊員達までもが驚きを隠せない。
「す、すげぇ!! なんだよあの動き!?」
心輝が双眼鏡を顔に食い込む程に押し付けながら勇の姿を眺め観る。
目にした動きは、アニメや漫画を嗜む彼ですら興奮する程に軽快そのもの。
縦横無尽に大地を跳ね、鋭く刻む様に動き回る雄姿は憧れのバトル主人公像そのものだったのだ。
「池上に勝てるワケだ、魔剣使いってあんな強くなっちまうんだな」
心輝が初めて勇の力を目の当たりにしたのは池上との戦いの折。
目にも止まらぬ素早さであっという間に距離を詰めた時の印象は今でも脳裏に残ったままだ。
それも最初はただの錯覚だとも思っていたものだが。
今、心輝は確信する。
その動きでさえも、勇にとっては力の一端に過ぎなかったのだと。
「ちゃなちゃんもすごいよ、火の玉ボンボン飛んで行って色々ヤバイ!!」
「あんなに撃ちまくって疲れないの!? デメリット無しであんなの撃てるとか……」
その一方で、ちゃなによる無尽蔵の連続砲撃に興奮を見せる瀬玲とあずー。
砲撃が直撃した相手は漏れなく爆砕、炎に包まれながら大地に転がっていく。
例え万が一躱しても、その着弾によって巻き起こる爆風が着弾地点の魔者を焼くのだ。
普段は大人しく物静かなちゃなが撃っているとは思えない程に凶悪な威力。
それを秒間とも言える速度で撃ち出しているのだ、不安すら呼び込んでならない。
心輝達は移動の折に魔剣に関する事を既に聞いている。
身体能力が飛躍的に向上する事。
魔法の様な力が使える事。
そして魔者を傷つける事が出来る特性を持っているという事も。
でもここまで激しい力だとはまさかとも思っていなかったのだろう。
初めて垣間見る真の戦闘能力を前にはその目すら疑う。
彼等にとってはそれ程までに衝撃的だったのである。
とはいえ、命力の特性まではまだ不明な事だらけで。
さすがにこの砲撃を続ける事のデメリットまでは伝えていない。
無用な心配をさせたくないという事もあっての事だが。
「そう言えば命力が尽きると死ぬと聞いた気がしますねぇ」
それも二人が出立した今なら伝える事も吝かではなく。
ただそう放たれた一言は多大な不安を煽るには充分で。
「ええっ、それ不味くないですか!?」
「ちゃなちゃんヤバイの!?」
たちまちこうして心輝達に動揺を呼ぶ事に。
しかしそれも福留による一種のプレゼンテーションに過ぎない。
その証拠に、顔には微笑みが浮かんでいて。
「まぁその手の人曰く、彼女は特別らしいので多分平気でしょう」
「はぁ……そういうもんなんスかね?」
この様に上げて落とす事で人の緊張は緩和出来る。
その事を福留はよく理解しているのだろう。
そのお陰か、今の不安もあっという間になりを潜めていて。
再び勇達を覗き込む三人には、気付けばまた無邪気な興奮の様子が生まれていた。
その姿を不謹慎だと思う者も居るだろう。
でも彼等は当事者であっても戦う者ではない。
だから福留は敢えて彼等を笑わせるように仕向けたのだ。
例え勇達が如何に必死であろうとも。
戦いを終えた時、この様な笑顔で迎える者もまた必要なのだから。
「「「魔剣使いだ!! 陣形を乱すなあッ!!」」」
勇の存在に気付き、たちまち魔者達が一斉に叫びを上げる。
網目状に広がった布陣はこういった情報伝達も声を上げるだけで一瞬にして伝える事も目的としているのだろう。
それだけ彼等にとって魔剣使いは脅威であるという事に他ならない。
更に、攻撃の矛先は勇へと向けられる。
散らばる様に展開していた者達の動きが急激な動きを見せたのだ。
「【ジンジャラムの陣形】徹底せよッ!! 魔剣使いを逃がすなあっ!!」
迫る勇に対して魔者達が取った行動―――それは陣形の維持。
そう、彼等の布陣にはやはり意味があった。
その名も、対魔剣使い用布陣【ジンジャラムの陣形】。
【ザサブ族】が得意とする、魔剣使い対策に特化した戦術である。
魔者同士が網目状に広がっているのにも当然理由がある。
一つは、勇の様な近接型の魔剣使いを走らせて疲弊させる為。
各個撃破されようともその犠牲もいとわないスタンスで。
ただ憎き魔剣使いを確実に倒す為ならばと。
もう一つは、遠距離型の魔剣使いの攻撃による被害を防ぐ為でもある。
ちゃなの様な遠距離砲撃系魔剣使いの攻撃は大抵が一撃必殺で、影響範囲も広い。
だがこうして離れてしまえば、その被害は最小限に抑えられる。
一網打尽で無駄な死を避ける為の役目も果たしているという訳だ。
そして疲弊した所を攻めれば、如何に魔剣使いが強靭であろうとも倒す事は可能。
だからこうして彼等は今日まで生き残って来た。
持てる知識を動員し、天敵とも言える者達を退け続ける事で。
その戦い方は力でねじ伏せるダッゾ族とはまるで違う。
人間と同じ、考えて行動する相手なのである。
でもその戦法が必ずしも勇達に通じるとは限らない。
「おおーーーッ!!」
勇がその身を屈めさせながら緩やかな坂道を駆け登る。
そんな陣形の意味も知らないままに。
いや、その意味を考える必要は無いのだろう。
何故なら、勇にとっては退ける以外に道は無いのだから。
例え自分が如何に不利であろうとも。
今の勇には周囲の動きを読み取る事が出来る。
敵が剣や槍を奮う所も、投げ付けてくる石の軌道をも。
その時に生まれる風の音さえも。
まるで全てが手に取れるかの様に。
再三にして感じ取る事が出来た今、勇はその感覚をこう確信する。
これは明らかに魔剣に通ずる力なのだと。
その力を駆使する以上、もはや一介の雑兵が捉えられる理由などありはしない。
「何だコイツの動きはッ!? ウウッ!?」
そしてその力は【ザサブ族】にとっても例外だった。
魔者達がこぞって勇を囲み、一心不乱に武器を奮う。
しかしそのいずれもが空を切り、無為に消えるのみ。
それどころか、隙間を縫う様に駆け抜けては切り刻まれていく。
それだけではない。
小さな石ころによる投石ですらも軽く躱されるのだ。
しかも投げた直後には既に軌道から外れている程に素早く。
決して、こうして相対した者に魔剣使いと戦った経験が無い訳ではない。
この様な動きが出来る相手と戦った事が無いだけ。
そう、勇の動きは明らかに彼等にとって異常だったのである。
しかし彼等が慄くのはこれだけに留まらない。
ドゴォーンッ!!
なんと勇を囲んでいた魔者達が一人、また一人と爆発に巻き込まれ始めたのだ。
それだけに留まらず、前線で自衛隊員を押していた魔者さえも。
それは遠方からの、ちゃなの【ドゥルムエーヴェ】による砲撃。
小さな炎弾が高速で魔者の陣営へと放たれていたのである。
その全てが正確無比で一撃必殺。
しかもそれが大量に。
何度も何度も、留まる事を知らずに光を放ち続けていたのだ。
これだけの攻撃を連射出来るなど、本来はあり得ない事。
それを可能にする彼女の存在は魔者達にとって明らかな脅威に他ならない。
今の陣形はそんな砲撃の被害を最小限に食い止める為。
こうして数を撃てる相手が居ないと信じていたからこその布陣だ。
でもその常識とも言える認識が瓦解した時、彼等の戦いの根底が覆る。
「この二人は今までの普通の魔剣使いとは訳が違う」のだと。
その事を、勇達自身はまだ気付いていない。
ただ勇はちゃなの事に気付いていて。
ちゃなは勇の事に気が付いている。
互いに「やはりあの人は凄い」と想いを連ねる程に。
そして「自分も負けられない」と思える程に。
◇◇◇
勇が駆け出し、ちゃなが陣営前に陣取ってまだ十分と経っていない。
その間だけで既に魔者達が次々と大地に伏し、勇はあっという間に景色の彼方へ。
更にちゃなからは炎弾が光の筋を伴ってとめどなく放たれ続けていて。
その圧倒的な光景を前に、心輝達のみならず福留や自衛隊員達までもが驚きを隠せない。
「す、すげぇ!! なんだよあの動き!?」
心輝が双眼鏡を顔に食い込む程に押し付けながら勇の姿を眺め観る。
目にした動きは、アニメや漫画を嗜む彼ですら興奮する程に軽快そのもの。
縦横無尽に大地を跳ね、鋭く刻む様に動き回る雄姿は憧れのバトル主人公像そのものだったのだ。
「池上に勝てるワケだ、魔剣使いってあんな強くなっちまうんだな」
心輝が初めて勇の力を目の当たりにしたのは池上との戦いの折。
目にも止まらぬ素早さであっという間に距離を詰めた時の印象は今でも脳裏に残ったままだ。
それも最初はただの錯覚だとも思っていたものだが。
今、心輝は確信する。
その動きでさえも、勇にとっては力の一端に過ぎなかったのだと。
「ちゃなちゃんもすごいよ、火の玉ボンボン飛んで行って色々ヤバイ!!」
「あんなに撃ちまくって疲れないの!? デメリット無しであんなの撃てるとか……」
その一方で、ちゃなによる無尽蔵の連続砲撃に興奮を見せる瀬玲とあずー。
砲撃が直撃した相手は漏れなく爆砕、炎に包まれながら大地に転がっていく。
例え万が一躱しても、その着弾によって巻き起こる爆風が着弾地点の魔者を焼くのだ。
普段は大人しく物静かなちゃなが撃っているとは思えない程に凶悪な威力。
それを秒間とも言える速度で撃ち出しているのだ、不安すら呼び込んでならない。
心輝達は移動の折に魔剣に関する事を既に聞いている。
身体能力が飛躍的に向上する事。
魔法の様な力が使える事。
そして魔者を傷つける事が出来る特性を持っているという事も。
でもここまで激しい力だとはまさかとも思っていなかったのだろう。
初めて垣間見る真の戦闘能力を前にはその目すら疑う。
彼等にとってはそれ程までに衝撃的だったのである。
とはいえ、命力の特性まではまだ不明な事だらけで。
さすがにこの砲撃を続ける事のデメリットまでは伝えていない。
無用な心配をさせたくないという事もあっての事だが。
「そう言えば命力が尽きると死ぬと聞いた気がしますねぇ」
それも二人が出立した今なら伝える事も吝かではなく。
ただそう放たれた一言は多大な不安を煽るには充分で。
「ええっ、それ不味くないですか!?」
「ちゃなちゃんヤバイの!?」
たちまちこうして心輝達に動揺を呼ぶ事に。
しかしそれも福留による一種のプレゼンテーションに過ぎない。
その証拠に、顔には微笑みが浮かんでいて。
「まぁその手の人曰く、彼女は特別らしいので多分平気でしょう」
「はぁ……そういうもんなんスかね?」
この様に上げて落とす事で人の緊張は緩和出来る。
その事を福留はよく理解しているのだろう。
そのお陰か、今の不安もあっという間になりを潜めていて。
再び勇達を覗き込む三人には、気付けばまた無邪気な興奮の様子が生まれていた。
その姿を不謹慎だと思う者も居るだろう。
でも彼等は当事者であっても戦う者ではない。
だから福留は敢えて彼等を笑わせるように仕向けたのだ。
例え勇達が如何に必死であろうとも。
戦いを終えた時、この様な笑顔で迎える者もまた必要なのだから。
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