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アイルビーバック、サダルスウド
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最低限の手荷物だけを担いで、俺はベン村長と共に、村の西の方にある森――狩猟人達の狩り場でもある――へ向かっている。
闇ギルドの連中……シュヴァルツなんたらとかいう奴らの脅迫・恫喝通り、俺が我が身を差し出す代わりにクリスさんを返してもらうために。
奴らは非合法な組織かもしれないが、非合法には非合法なりの"筋"と言うものはあるだろう、こちらが要求に応じれば、素直にクリスさんを解放するはずだ。
「アルフ先生……本当にすまない」
「くどいですよ、ベン村長。そろそろ耳にタコどころか、イカが出来ますよ」
重苦しく謝罪するベン村長に、軽口で応じる。
西の森に足を踏み入れ、少し進んだところにそれは見えた。
木の幹にクリスさんを縛りつけ、油断なく武装している一団。
あれがシュヴァルツなんたらか。正式名称はどうでもいいけど。
「アルフレッド・ギャレットだ!要求通りに来たぞ!」
敢えて声を張って名乗りあげる。
クリスさんは俺の声に気付いたのか、視線をこちらに向ける。
「アルフ先生!?どうして……!」
彼女には見向きせずに、中心にいるリーダーっぽい、シグルドとか言う顔色悪そうな奴をガンを飛ばしてやる。
「さぁ、俺を拘束する前にまずは彼女を解放してもらおうか。そう言う筋のはずだな」
すると、シグルドはくくっ、と低く笑った。
「こうも容易く来てくれるとはな。分かった」
シグルドは目線で指示をすると、一人がクリスさんを縛る縄をナイフで切り、クリスさんは自由になる。
それを確認してから、俺は手荷物を足元に置き、両手を上げてホールドアップ。
「この通りだ。さっさと連れて行ってくれ」
そうして、両手を後ろ手に組まされて縛られ、奴らの馬車に乗せられていく。
パトカーで連行されるってこんな感じなのかな。
「アルフ先生……どうして私なんかのために!?」
ベン村長はクリスさんの前に立って手で制する。
「アルフ先生は、必ず帰ってくる。今は堪えるんだ、クリス」
馬車に乗せられる俺は、間際にクリスさんにお願いをする。
「クリスさん、シャルのことは頼みましたよ」
「アルフ先生!そんな……ッ!」
馬車が歩き始めて、幌から見える二人の姿が遠ざかっていく。
さて、今は雌伏の時だ。
村に帰れるのは……早くても半月後になるかなぁ。
アルフがシュヴァルツドラッヘに拘束されてから。
ベンとクリスが自宅に戻ると、シャルが待っていた。
何かを決意したような顔で。
それに意を介さず、クリスはシャルに謝った。
「ごめんなさいシャルさん!私が迂闊だったばかりに、お義兄さんが……!」
「わたしなら大丈夫です。顔を上げてください、クリスさん」
毅然としてシャルは言ってのけて、ベンに向き直る。
「村長さん、無理をお願いします。旅支度の準備を手伝ってくれませんか?」
「旅支度?まさか、シャルさん……」
「お兄様を助けに行きます。闇ギルドの人達の向かう先なら、分かります」
アルフが言っていた通りなら、あの闇ギルドの者達はガルシア・ギャレットが放った追手。
それなら行き着く先がどこなのかも、見当がつくし、その場所も分かる。
「お兄様は、ずっと一人ぼっちだったわたしを救い出してくれて、生きる喜びを与えてくれました。だから、今度はわたしがお兄様を救い出す番です」
闇ギルドの連中……シュヴァルツなんたらとかいう奴らの脅迫・恫喝通り、俺が我が身を差し出す代わりにクリスさんを返してもらうために。
奴らは非合法な組織かもしれないが、非合法には非合法なりの"筋"と言うものはあるだろう、こちらが要求に応じれば、素直にクリスさんを解放するはずだ。
「アルフ先生……本当にすまない」
「くどいですよ、ベン村長。そろそろ耳にタコどころか、イカが出来ますよ」
重苦しく謝罪するベン村長に、軽口で応じる。
西の森に足を踏み入れ、少し進んだところにそれは見えた。
木の幹にクリスさんを縛りつけ、油断なく武装している一団。
あれがシュヴァルツなんたらか。正式名称はどうでもいいけど。
「アルフレッド・ギャレットだ!要求通りに来たぞ!」
敢えて声を張って名乗りあげる。
クリスさんは俺の声に気付いたのか、視線をこちらに向ける。
「アルフ先生!?どうして……!」
彼女には見向きせずに、中心にいるリーダーっぽい、シグルドとか言う顔色悪そうな奴をガンを飛ばしてやる。
「さぁ、俺を拘束する前にまずは彼女を解放してもらおうか。そう言う筋のはずだな」
すると、シグルドはくくっ、と低く笑った。
「こうも容易く来てくれるとはな。分かった」
シグルドは目線で指示をすると、一人がクリスさんを縛る縄をナイフで切り、クリスさんは自由になる。
それを確認してから、俺は手荷物を足元に置き、両手を上げてホールドアップ。
「この通りだ。さっさと連れて行ってくれ」
そうして、両手を後ろ手に組まされて縛られ、奴らの馬車に乗せられていく。
パトカーで連行されるってこんな感じなのかな。
「アルフ先生……どうして私なんかのために!?」
ベン村長はクリスさんの前に立って手で制する。
「アルフ先生は、必ず帰ってくる。今は堪えるんだ、クリス」
馬車に乗せられる俺は、間際にクリスさんにお願いをする。
「クリスさん、シャルのことは頼みましたよ」
「アルフ先生!そんな……ッ!」
馬車が歩き始めて、幌から見える二人の姿が遠ざかっていく。
さて、今は雌伏の時だ。
村に帰れるのは……早くても半月後になるかなぁ。
アルフがシュヴァルツドラッヘに拘束されてから。
ベンとクリスが自宅に戻ると、シャルが待っていた。
何かを決意したような顔で。
それに意を介さず、クリスはシャルに謝った。
「ごめんなさいシャルさん!私が迂闊だったばかりに、お義兄さんが……!」
「わたしなら大丈夫です。顔を上げてください、クリスさん」
毅然としてシャルは言ってのけて、ベンに向き直る。
「村長さん、無理をお願いします。旅支度の準備を手伝ってくれませんか?」
「旅支度?まさか、シャルさん……」
「お兄様を助けに行きます。闇ギルドの人達の向かう先なら、分かります」
アルフが言っていた通りなら、あの闇ギルドの者達はガルシア・ギャレットが放った追手。
それなら行き着く先がどこなのかも、見当がつくし、その場所も分かる。
「お兄様は、ずっと一人ぼっちだったわたしを救い出してくれて、生きる喜びを与えてくれました。だから、今度はわたしがお兄様を救い出す番です」
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