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煽てに弱いシャルせんせー
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さて、一度二階に上がって昼飯を作らねば……と思ったところで、一階の玄関からノックの音が聞こえた。
誰かが忘れ物でもしたのかと思いつつ「はいはい」と応じながらドアを開ければ、
「お疲れ様、アルフ先生とシャルさん」
クリスさんが訪問してきたではないか。
「あぁ、クリスさん。お疲れ様です。ちょうど今、午前の授業が終わったところでして。何かご用でも?」
「ご用と言うほどでも無いのだけど……これ、差し入れよ。代わり映えしなくて申し訳ないけど」
そう言ってクリスさんが見せるのは、香ばしい匂いのするバスケット。
差し入れということは、お弁当かな。
「おぉ、わざわざすみません。これから昼食を作ろうと思っていたので」
「あ、ありがとうございます」
シャルもペコペコと頭を下げてくれる。
それじゃぁ私はこれで、とクリスさんは学問所から去ろうとするが、
「あのっ、クリスさんっ」
ふと、シャルがクリスさんを引き止めた。
「何かしら?」
「その、一緒にお昼食べませんか?」
「うーん、お誘いは嬉しいけど、私はもうお昼は食べたのよ。それに、その差し入れは二人分の昼食しか無いし」
「で、でしたらっ、ただのお喋りでも構いませんっ」
つまりシャルは、クリスさんと色々話したいことがあるようだ。
「それならまぁ、のんびりし過ぎないくらいには」
「ありがとうございます!」
説得成功。
というわけで、クリスさんを二階のリビングにお連れして昼食だ。
「粗茶ですが」
「ありがとう、いただきます」
クリスさんと言うお客さんがウチに来た以上は、お茶のひとつでも用意せねばと、紅茶を淹れた。茶葉は安物だけど。
「ところで、村の子たちはどうだった?ご迷惑をかけてないかしら」
授業はちゃんと出来たのかどうかを訊いているのだと読み取って、俺はありのままを話す。
「迷惑ではありませんよ。みんな素直で、授業も真面目に取り組んでくれています。誰かに教科書を読ませようとすると、我先にと挙手してくるので、誰に読んでもらおうかと少し考えます」
「ふふっ、それは何よりだわ。シャルさんの方は?」
問題が起きていないことに安堵したクリスさんは、今度はシャルの方を向く。
「わたしの方も特に大きな問題はありませんでした。子ども達はみんな元気に、文字や数字の読み書きの練習をしていました」
「良かった。きっとシャル先生の教え方が上手なのね」
お世辞を言うように、クリスさんがシャルに"先生"を付けて呼ぶと、
「シャル先生っ」
クリスさんに"先生"と呼ばれたからか、シャルの琴線に触れたらしい。が、すぐに正気に戻った。
「はっ。……いえいえっ、わたしが先生なんて呼ばれるのは、まだ時期尚早ですっ」
「そんなことはないわ。シャル先生は立派に先生をやっているもの」
あっ、これはクリスさんお得意の『煽て上手』だ。最近なんだか分かってきた。
「せ、先生……えへへ……」
シャルはすっかり煽てに乗せられて、ふやけた顔をしているが、可愛いから良しとする。グッジョブクリスさん。
誰かが忘れ物でもしたのかと思いつつ「はいはい」と応じながらドアを開ければ、
「お疲れ様、アルフ先生とシャルさん」
クリスさんが訪問してきたではないか。
「あぁ、クリスさん。お疲れ様です。ちょうど今、午前の授業が終わったところでして。何かご用でも?」
「ご用と言うほどでも無いのだけど……これ、差し入れよ。代わり映えしなくて申し訳ないけど」
そう言ってクリスさんが見せるのは、香ばしい匂いのするバスケット。
差し入れということは、お弁当かな。
「おぉ、わざわざすみません。これから昼食を作ろうと思っていたので」
「あ、ありがとうございます」
シャルもペコペコと頭を下げてくれる。
それじゃぁ私はこれで、とクリスさんは学問所から去ろうとするが、
「あのっ、クリスさんっ」
ふと、シャルがクリスさんを引き止めた。
「何かしら?」
「その、一緒にお昼食べませんか?」
「うーん、お誘いは嬉しいけど、私はもうお昼は食べたのよ。それに、その差し入れは二人分の昼食しか無いし」
「で、でしたらっ、ただのお喋りでも構いませんっ」
つまりシャルは、クリスさんと色々話したいことがあるようだ。
「それならまぁ、のんびりし過ぎないくらいには」
「ありがとうございます!」
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というわけで、クリスさんを二階のリビングにお連れして昼食だ。
「粗茶ですが」
「ありがとう、いただきます」
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「ところで、村の子たちはどうだった?ご迷惑をかけてないかしら」
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「迷惑ではありませんよ。みんな素直で、授業も真面目に取り組んでくれています。誰かに教科書を読ませようとすると、我先にと挙手してくるので、誰に読んでもらおうかと少し考えます」
「ふふっ、それは何よりだわ。シャルさんの方は?」
問題が起きていないことに安堵したクリスさんは、今度はシャルの方を向く。
「わたしの方も特に大きな問題はありませんでした。子ども達はみんな元気に、文字や数字の読み書きの練習をしていました」
「良かった。きっとシャル先生の教え方が上手なのね」
お世辞を言うように、クリスさんがシャルに"先生"を付けて呼ぶと、
「シャル先生っ」
クリスさんに"先生"と呼ばれたからか、シャルの琴線に触れたらしい。が、すぐに正気に戻った。
「はっ。……いえいえっ、わたしが先生なんて呼ばれるのは、まだ時期尚早ですっ」
「そんなことはないわ。シャル先生は立派に先生をやっているもの」
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