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アホが見るブタのケツ
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サンドイッチを食して一息ついたら、再出発だ。
平坦な道も増えてきているので、ここらでベルク山道と呼ばれる山域は終わりかもしれない。
地勢図と見比べても、やはりこの辺りでベルク山道は区切られている。
それなら、サダルスウドまであと一時間ほどだ。
「シャル、あと一時間ほどでサダルスウドに着くぞ」
「あと少しですね」
エニケイ村で騒動に巻き込まれこそしたが、思ったより順調な旅路だった。
もっとこう、RPGみたいに魔物の襲撃を何度も退けながらの旅になるかと思ったが、それはあくまでゲームの世界であって、本来なら魔物も、気が立ってなければそこまで積極的に人間を襲ったりはしないんだろうな。
……なーんて思ったのが間違いだったのかもしれん。
ふと見えない位置からか、獰猛そうな咆哮や土を蹴るような音が聞こえてきた。
咄嗟にロングソードの柄に手を添え、シャルもすぐにレイピアを抜刀出来るように構えている。
曲がり道を曲がってすぐに、その光景は見えた。
幌を破られて横転した馬車と散乱した積荷。
その周囲には、何人もの人が倒れ、中には怪我を負っているものもいる。
商人と、その護衛の冒険者だろうか?
ただ一人だけが立っているが、立つのが精一杯のようだ。
相対するのは、クソデカい豚を二足歩行にしてこれでもかと醜くなったような魔物。
あれは多分、『オーク』だな。
手にしているのは槍のような武器。
……察するに、馬車の積荷を狙って襲撃した、と言ったところだろうか。それで、護衛の冒険者達も歯が立たずにこのような惨状になってしまった、と。
冒険者数人をまとめて相手して圧倒するということは、かなり強いオーク(或いはオークの上位種であるウルクか?)のようだ。
「お兄様……」
「シャル。お前は倒れている人を助けるんだ。奴は俺がやる」
それだけ言い付けて、俺は曲がり角から飛び出した。
俺の出現に気付いたのか、オークの視線が追ってくる。
気色悪っ、こっち見んな。
冒険者さんを巻き込まない位置から、奴の豚鼻に火球を放つ。
するとオークは咄嗟に腕で顔を覆って火球を受けた。
なかなか賢いな?
「あ、あんたは……?」
今にも倒れそうな冒険者さんは俺を見て目を見開く。
「奴は俺が。あなたは下がってくれ」
そんなところに立ってたら邪魔ださっさと逃げろ、と言外に告げて、俺はさらに火球を連発する。
しかし、数発もの火球を受けても、腕が焦げたぐらいのダメージしか見られない。
ブグォォォォォッ、と豚の鳴き声をやたらと厳つくしたような咆哮を発して、オークは槍を構え直す。
「ったく、せっかく気持よくサダルスウドに着けると思ったのに……」
ロングソードを抜き放って、切っ先を突き付ける。
「来いブタ野郎。腸引き摺り出してソーセージにしてやるよ」
平坦な道も増えてきているので、ここらでベルク山道と呼ばれる山域は終わりかもしれない。
地勢図と見比べても、やはりこの辺りでベルク山道は区切られている。
それなら、サダルスウドまであと一時間ほどだ。
「シャル、あと一時間ほどでサダルスウドに着くぞ」
「あと少しですね」
エニケイ村で騒動に巻き込まれこそしたが、思ったより順調な旅路だった。
もっとこう、RPGみたいに魔物の襲撃を何度も退けながらの旅になるかと思ったが、それはあくまでゲームの世界であって、本来なら魔物も、気が立ってなければそこまで積極的に人間を襲ったりはしないんだろうな。
……なーんて思ったのが間違いだったのかもしれん。
ふと見えない位置からか、獰猛そうな咆哮や土を蹴るような音が聞こえてきた。
咄嗟にロングソードの柄に手を添え、シャルもすぐにレイピアを抜刀出来るように構えている。
曲がり道を曲がってすぐに、その光景は見えた。
幌を破られて横転した馬車と散乱した積荷。
その周囲には、何人もの人が倒れ、中には怪我を負っているものもいる。
商人と、その護衛の冒険者だろうか?
ただ一人だけが立っているが、立つのが精一杯のようだ。
相対するのは、クソデカい豚を二足歩行にしてこれでもかと醜くなったような魔物。
あれは多分、『オーク』だな。
手にしているのは槍のような武器。
……察するに、馬車の積荷を狙って襲撃した、と言ったところだろうか。それで、護衛の冒険者達も歯が立たずにこのような惨状になってしまった、と。
冒険者数人をまとめて相手して圧倒するということは、かなり強いオーク(或いはオークの上位種であるウルクか?)のようだ。
「お兄様……」
「シャル。お前は倒れている人を助けるんだ。奴は俺がやる」
それだけ言い付けて、俺は曲がり角から飛び出した。
俺の出現に気付いたのか、オークの視線が追ってくる。
気色悪っ、こっち見んな。
冒険者さんを巻き込まない位置から、奴の豚鼻に火球を放つ。
するとオークは咄嗟に腕で顔を覆って火球を受けた。
なかなか賢いな?
「あ、あんたは……?」
今にも倒れそうな冒険者さんは俺を見て目を見開く。
「奴は俺が。あなたは下がってくれ」
そんなところに立ってたら邪魔ださっさと逃げろ、と言外に告げて、俺はさらに火球を連発する。
しかし、数発もの火球を受けても、腕が焦げたぐらいのダメージしか見られない。
ブグォォォォォッ、と豚の鳴き声をやたらと厳つくしたような咆哮を発して、オークは槍を構え直す。
「ったく、せっかく気持よくサダルスウドに着けると思ったのに……」
ロングソードを抜き放って、切っ先を突き付ける。
「来いブタ野郎。腸引き摺り出してソーセージにしてやるよ」
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