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キンジョーの町

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 キンジョーの町。
 流通拠点としては中規模程度の、比較的豊かで活気ある町だと情報を仕入れてはいるが、まだ朝早い時間から多くの人々が行き交い、露店に並ぶ品物も豊富だ。
 ふむ、これなら生活雑貨や食品などは大抵の物は揃うだろう。

「ここが、町……」
 
 シャルにとっては初めての町だ、見るもの全てが珍しく映るのだろう。
 物資の買い付けももちろん重要だが、それよりも優先しなければならないのは、今日の宿だ。

「宿屋はどこかなと……」

 辺りを見回して、町の案内看板を見つけたので、そこで宿屋の場所を確認だ。
 えーと、ここが商業区だから……宿屋はどちらかと言うと居住区にあるかな?
 その見立ては正しかったようで、すぐに見つかった。
 ここからほんのすぐ近く……と言うか、ほぼ目と鼻の先のような距離だった。



 カランコロン、とドアベルを鳴らす。
 宿屋に入ってすぐ目の前がカウンターになっており、目が合うなり「いらっしゃいませ」と挨拶をしてくれる、店主らしき年配の女性が一人。
 がらんどうとしているが、宿泊客はまだ寝ているのかもしれないな。
 よし、早速要件だ。

「朝早くからですみませんが、空きの部屋はありますか?二人分で」

「二部屋ですね。ご兄妹でしょうか?」

「そうです、義妹と旅をしているもので。昨夜は野宿だったので、早く休ませたくて」

 野宿つっても、二時間だけどな。

「まぁ、若いのに大変な……っとと、二部屋でしたね。少々お待ち下さい」

 軽く話してしまったが、まぁいい。
 店主は帳簿を開きつつペンを取り、「お名前は?」と訊ねられたので、普通に「アルフ」「シャル」と答えておく。
 帳簿に名前が書き込まれると、店主は引き出しから紐の付いた鍵を二本用意する。

「こちら、それぞれ隣同士のお部屋の鍵になります。ごゆっくりどうぞ」

 俺はともかく、シャルのような年端もない少女が一人で部屋を使うのだ、何かあった時にお兄さんがすぐ駆け付けられるように配慮してくれたのだろう。ありがとうございます。



 今日の寝床も無事に確保出来たところで、早速朝ごはんだ。
 昨夜は野宿だったし朝はまだ食べてないんですよ、ってポロっと溢したら、厨房に立っていた頑固そうな親父さん――多分店主の旦那さんだろう――に聞かれてしまったのか、

「あんたらはまだ若いんだから、キッチリ食っとけ」

 と、ぶっきらぼうながらもちょっとだけモーニングメニューにサービスを加えてくれるそうだ。
 あざっす!ギャレット家のメシは美味いっちゃ美味いんだけど、ボリュームが微妙だったからなぁ。
 それに、シャルにはもっとちゃんと食べてほしい気持ちもある。

 そうして用意してもらったのは、程よく温められたロールパンに、雑多だけど具だくさんのスープ。

 いいね、こう言うどこの家庭の食卓にもあるような感じ。
 そこそこ美味くてボリューム満点なのが一番です。

 いただきます。
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