あの子の花に祝福を。

ぽんた

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42.我等が天使の幸せ。

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 ~モブメイドSide~

 私はアーバスノット公爵家のしがないメイドです。
 毎日掃除、洗濯、備品の手入れ…その繰り返し。
 もうかれこれ15年ほどじゃないでしょうか。このお屋敷では、15年でやっと一人前。それくらい人が長く働いていて、楽しい職場であると自慢できます。

 そんな公爵家には、ある暗黙の了解が。

 奥方様とルカリオン様には目を合わせてはならない。

 そんな約束事があるのです。決して、嫌がらせ目的とかではございません。私達使用人の心の安寧を保つためのものです。

 このお二方と目が合うと、あまりの美しさに目が潰れる…そんなことがまことしやかに囁かれております。

 実際、おいたわしいことに、ルカリオン様が6歳のとき。誘拐されて心にも身体にも深刻な傷を抱えてお戻りになられたとき。

 皆が心配してルカリオン様の部屋周辺の掃除に行く人数が増えておりました。

 そのとき、ようやくお部屋から出ることが出来たルカリオン様に、運良くお目にかかることの出来た使用人達がいたのです。

 あの愛らしい声音で、『ただいま』と言われるのがもうたまらなくって……いけない、脱線しました。

 そのときに目が合った使用人達全員、その場では何とか取り繕えたものの、休憩に入った途端天に召されてしまいました…。私もその一人です。

 中には自身の汚物を立てた人間も居ましたが、そいつ達は文字通り天に召しました。ルカリオン様のお目に触れてはなりませんからね。

 奥方様も同様です。もう遠くから観るだけでも眩しくて眩しくて。

 あぁ…本当に。良い職場です、ここは。

 ですが…そのルカリオン様。あの糞王子…失礼しました。
 我が屋敷の天使の心を傷つけ自死しようとするまで追い詰めたあのゼイン殿下が…!運命なんですよっ…!!

 あの方のどこが良いのか…!

 仕事は出来る様ですが、ルカリオン様のことを何一つ分かっていらっしゃらない!
 あんなに愛されていらっしゃるのに、どうして私達の天使を泣かせるのか!!

 あの、旅行から早めに帰ってこられたと思いきや、屋敷に着いたとたん熱をお出しになられたとき。フースカで何が起きたかを聞いた私達の心を知っておりますか!!

『あの王子許すまじ!』

 まあ…結局両想いなのでね。許すも許さないもないのですが。

 そんなこんなで色々あったルカリオン様…。

 本日、お屋敷を出発されます。

 原因はあの王子にあるのでとても腹立たしいですが。

 とても、ご立派に成長されました。

 私達使用人ともっといたかったとおっしゃってくださり、誠にありがとうございます。

 私達使用人一同、ルカリオン様の幸せを第一に願っております。

 どうか、お幸せに。

 結婚式をするときは屋敷全体の使用人全てを招いて欲しいです!!切実に!!

 ルカリオン様のウェディングスーツ見たいです!!








「こら、モーヴィ。ルカリオン様が居なくなったからって手を止めるな!」

「あっ先輩。いえ、あの方の幸せを願っておりました。」

 私の肩を叩いたのは20年目の先輩。髭がとても良い感じにセットされていて憧れの人です。

「………はぁ…。本当に、世界一幸せになってほしいよな…。」

「ええ。でも私、ルカリオン様より先に先輩を幸せにします。」

 私達はここに16で勤めに来ています。もう先輩も私も30は超え、そろそろ相手が欲しいところ。

「はっ…?!」

「ね、先輩。お互いもういい歳です。私達、相性良いでしょ?結婚しましょうよ。私、先輩を幸せにする自信、あります。」

 みるみるうちに顔を赤く染める先輩。可愛い。

「だっ、いや、お前…!あれはっ…!抱かせてくれって言ったから…!」

「でも先輩、気持ちよさそうにして、最後は自分からおしりを―――」

「わああああっ!!やめろやめろ!!それ以上は言うな!!」

 ふふ、ルカリオン様の次に幸せにしますよ、先輩。















 ※※※※※※※※






 久しぶりのモブ視点ですが如何でしたでしょうか。

 メイドさんね、ここ漢しかいない世界なので漏れなく漢です。

 あのワンピースは着ませんよ?普通に燕尾服みたいなやつです。ただ、あのカチューシャみたいな『ホワイトブリム』はつけてます。

 ルカちゃんが中々メイドに慣れなかったのはそれが理由です。

 屈強な男達がふわふわの可愛いカチューシャをつけてるんです。

 いくら幼く常識を知らなかったルカちゃんでも、そのあべこべさを理解するには時間を要しました。

 もともとホワイトブリムは髪が落ちてこないようにするものらしいのですが、この世界。髪が長い男、多いんです。

 だからそれがあるんですけども。

 でもデザインはシンプルで良かったんじゃない?

 そう思われる方、いらっしゃるんではないでしょうか。

 最初に作ったデザイナーを恨みなさい、メイド達よ…。

 完全にデザイナーの趣味でした。

 現実では理由はわからないですよ!ここは創作の世界なので!

 でも可愛いですよねぇ、あのカチューシャ。




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