色褪せない幸福を

三冬月マヨ

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後日譚

贅沢な幸せ者

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 直接、言葉にするのは恥ずかしい物がありますので、お手紙にて失礼しますね。
 日々の寒さが和らぎ、今年も桜の蕾が今か今かと開花を待つ季節になりました。
 と。
 つい、先日もお電話でお話ししたばかりでしたね。
 同じ様なお話しばかりで、申し訳ありません。
 ですが、せい様を始め、皆様が笑顔で聞いて下さいますから、ついつい甘えてしまいますね。今も、こちらを笑顔で読んで下さる事と思います。

 最近、頓にゆかり様の…旦那様の夢を見るのです。
 お会いした頃の若々しいお姿で、何時も僕に笑い掛けて下さるのです。
 夢の中の僕も、その頃の様に幼くあるのです。
 この様な事を書きますと怒られてしまいそうですが…何となく、お迎えが近いのかなと思うのです。
 最近は眠る時間が多くなりました。
 起きていましても、何処か夢を見ている様な気がするのです。
 弱気を申し訳ございません。
 ですが、どうか最後まで読んで戴きたいと思います。

 僕は、幸せでした。
 
 泣かない時代がありました。
 笑わない時代もありました。
 あの頃の僕は、幸せではなかったのだと思います。
 ですが、不幸だったのだとは、やはり思えないのです。
 その時代がありましたから、こうして、今、幸せな想いを抱えていられるのですから。
 幸せな中を歩いて来られたのですから。
 僕は、本当に沢山の幸せを戴きました。
 ですから、その時が来ましても、どうか泣かないで下さい。
 笑顔でいて下さい。
 笑顔で送って下さい。
 いつか、また、笑顔で逢える日の為に。
 幸せですと胸を張って言えます様に。
 我が儘ではございますが、それが僕のお願いです。
 
 高梨 雪緖。

 うぅん、この様に畏まってしまいますと、やはり怒られそうな気がしますね。
 もう少し、ゆうもあと云う物を学ばないといけませんね。
 そうしましたら、このお手紙は書き直しますね。
 それでは、一先ずと云う事で筆を置きます。
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