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幼馴染み
【番外編】芋虫
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それは確かに近付いていた。
それは確かに、じわじわと青い空を侵食して行ったのだ。
「おっちゃん、おいらチキンカレー大盛り一つな!」
食堂に今日も元気な星の声が響き渡る。
が。
「は!? どうした!? どっか具合でも悪いのか!?」
とは、星の注文を受けた食堂の厨房で働く親父の言葉だ。
「どうしたの、星君!? 何処かの池の鯉でも食べてお腹壊したの!?」
とは、瑠璃子の言葉で。
「ありえないわ。星先輩が鶏肉だなんてヘルシーな物を食べるなんて」
とは、亜矢の言葉だ。
「…なあ、皆何気に酷くないか?」
「…星先輩だって、ああ見えて人間だ。食欲が湧かない日もあるだろう…まあ、大盛りを注文する時点で食欲が減退してるとは思わないけどな」
本日のお薦めの、月見とろろ定食のとろろをご飯に掛けながら瑞樹が言えば、何気に優士も澄ました顔で酷い事を言う。
「皆うるさいぞ! とにかく、早く!!」
耳をピクピクと動かしながら星が叫べば『…ああ、来るのか』と、親子丼を食べていた隊員が窓へと視線を向けてぽつりと呟く。そうすれば別の隊員が『今日は朝から気温が高かったからな~』と、同じく窓の向こうに広がる青空を見た。
「あ、ああ、そうか! 良し、ちょっと待ってろよ」
その言葉を聞いた親父が、慌てて皿を用意してご飯をよそい、その上にカレーを掛けた。
チキンカレーはこの食堂のベーシックなメニューで、常に直ぐに提供出来る様にされている。つまり、待つ必要が無いのである。一分一秒でも時間が惜しい今の星にとっては、とてもありがたい代物なのだ。
星はチキンカレーを受け取り手近な席に座ると、スプーンを使い、それを一気に流し込んだ。時間にして一分も経ってはいないだろう。『カレーは飲み物』と云う名言があるが、星のそれは見事にその名言を体現した物だった。
「ごっそさん!!」
と、星は空になった皿を、厨房と食堂を仕切るカウンターの端にある『空の器はこちらへ』と書かれた場所へと置いて、さっさと食堂を出て行った。星が食堂に滞在した時間は五分も無かっただろう。
「…え、何…?」
「何か用事が?」
瑞樹と優士が呆然と星の背中を見送った後直ぐに。
「ひいんっ!!」
と云う、星の叫び声が廊下から聞こえて来た。そしてバタバタと走り去る足音も。
「え、そうなんですか!?」
「うん、星君、本当に耳が良いよねー」
訳が解らずにひたすらに首を傾げる瑞樹と優士の耳に、隣のテーブル席に付いた瑠璃子と亜矢の会話が届く。
何の事なのかと、瑞樹が瑠璃子に声を掛けようとした時『ゴロンッ』とした音が鳴り響いた。
その音に窓の方へと視線を向ければ、青かった空は何時の間にか黒い雲に侵食されていて、今にもその重い雲から雫が零れ落ちようとしていた。
「…あんなに晴れていたのに…」
「…え…? いや…まさか…?」
布団を干して来なくて良かったと思う瑞樹だったが、優士は眉間に皺を寄せて顎に指をあてている。彼は一つの可能性に辿り着いていたが、そんな筈は無いと小さく頭を振った。
その頃、医務室のベッドの一つを大きな芋虫が占拠していた。
時折、雷の鳴り響く音に合わせて『ひいんっ!』、『ひぃんっ!!』と鳴く芋虫がそこには居たのだった。
それは確かに、じわじわと青い空を侵食して行ったのだ。
「おっちゃん、おいらチキンカレー大盛り一つな!」
食堂に今日も元気な星の声が響き渡る。
が。
「は!? どうした!? どっか具合でも悪いのか!?」
とは、星の注文を受けた食堂の厨房で働く親父の言葉だ。
「どうしたの、星君!? 何処かの池の鯉でも食べてお腹壊したの!?」
とは、瑠璃子の言葉で。
「ありえないわ。星先輩が鶏肉だなんてヘルシーな物を食べるなんて」
とは、亜矢の言葉だ。
「…なあ、皆何気に酷くないか?」
「…星先輩だって、ああ見えて人間だ。食欲が湧かない日もあるだろう…まあ、大盛りを注文する時点で食欲が減退してるとは思わないけどな」
本日のお薦めの、月見とろろ定食のとろろをご飯に掛けながら瑞樹が言えば、何気に優士も澄ました顔で酷い事を言う。
「皆うるさいぞ! とにかく、早く!!」
耳をピクピクと動かしながら星が叫べば『…ああ、来るのか』と、親子丼を食べていた隊員が窓へと視線を向けてぽつりと呟く。そうすれば別の隊員が『今日は朝から気温が高かったからな~』と、同じく窓の向こうに広がる青空を見た。
「あ、ああ、そうか! 良し、ちょっと待ってろよ」
その言葉を聞いた親父が、慌てて皿を用意してご飯をよそい、その上にカレーを掛けた。
チキンカレーはこの食堂のベーシックなメニューで、常に直ぐに提供出来る様にされている。つまり、待つ必要が無いのである。一分一秒でも時間が惜しい今の星にとっては、とてもありがたい代物なのだ。
星はチキンカレーを受け取り手近な席に座ると、スプーンを使い、それを一気に流し込んだ。時間にして一分も経ってはいないだろう。『カレーは飲み物』と云う名言があるが、星のそれは見事にその名言を体現した物だった。
「ごっそさん!!」
と、星は空になった皿を、厨房と食堂を仕切るカウンターの端にある『空の器はこちらへ』と書かれた場所へと置いて、さっさと食堂を出て行った。星が食堂に滞在した時間は五分も無かっただろう。
「…え、何…?」
「何か用事が?」
瑞樹と優士が呆然と星の背中を見送った後直ぐに。
「ひいんっ!!」
と云う、星の叫び声が廊下から聞こえて来た。そしてバタバタと走り去る足音も。
「え、そうなんですか!?」
「うん、星君、本当に耳が良いよねー」
訳が解らずにひたすらに首を傾げる瑞樹と優士の耳に、隣のテーブル席に付いた瑠璃子と亜矢の会話が届く。
何の事なのかと、瑞樹が瑠璃子に声を掛けようとした時『ゴロンッ』とした音が鳴り響いた。
その音に窓の方へと視線を向ければ、青かった空は何時の間にか黒い雲に侵食されていて、今にもその重い雲から雫が零れ落ちようとしていた。
「…あんなに晴れていたのに…」
「…え…? いや…まさか…?」
布団を干して来なくて良かったと思う瑞樹だったが、優士は眉間に皺を寄せて顎に指をあてている。彼は一つの可能性に辿り着いていたが、そんな筈は無いと小さく頭を振った。
その頃、医務室のベッドの一つを大きな芋虫が占拠していた。
時折、雷の鳴り響く音に合わせて『ひいんっ!』、『ひぃんっ!!』と鳴く芋虫がそこには居たのだった。
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