矢は的を射る

三冬月マヨ

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番外編

バレンタイン…の、一ヶ月後

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時系列は『焼きそばパン』後。

――――――――

 風呂から上がり、シャコシャコと歯を磨いている時だった。ピポピポピポンと呼び鈴が鳴ったのは。
 風呂に入ったのは、十時半過ぎだったから、もう十一時を過ぎている筈だ。
 誰だと思うものの、心当たりが一つあった。
 まさかと云う思いと、嬉しいと云う思いが混ざり合う。
 口を濯ぎ、首に掛けたタオルで拭いながら玄関へと向かう。

「馬鹿っ!」

 ドアを開ければ、そこに立つのは赤い顔をした穂稀ほまれだった。
 開口一番に怒鳴られたが、俺は口を笑みの形にしてしまう。
 それは、サプライズが成功した事の嬉しさもあるし、それに対して、こうして駆け付けてくれた嬉しさにもある。

「どうした? こんな時間に」

「バイト明けだから、こんな時間になったんだよっ! ああ、もう! 仕事から帰ったら不在通知票あるし! バイト前にセンターに取りに行って、もう、ずっと落ち着かなかったし! 一昨日日曜日でも良かっただろ!? てか、言えよ!!」

 肩を怒らせ、眉を吊り上げるこの可愛い恋人に、やはり俺は笑みを貼り付けたままで答える。

「すまん。当日の方が嬉しいかなと思って。それに、驚かせたかったからな」

 笑みを崩さない俺に、穂稀はますます顔を赤くして、ずいっと、手にしていたビニール袋を差し出して来た。

「驚いたよ! もうっ! これっ! お返し!! じゃ、俺、帰るから! おやすみっ!!」

 ありがとうと言い終わる前に、穂稀は走って行ってしまった。
 事故るなよと思いながら、ドアを閉めて部屋へ向かう。
 コタツの上に穂稀から貰った袋を置いて、そこにあるスマホを手に取り、メッセージアプリを開き、文字をタップして行く。

『ありがとう。気を付けて帰れよ。また週末に。待っている』

「運転中には見るなよ」

 呟きながら袋の中を見れば、色とりどりの包装紙に包まれた、様々な大きさの箱が五つ程入っていた。

「ぷっ。どれだけコンビニハシゴしたんだか」

 思わず噴き出して、その中の一つを手に取る。それには赤いリボンが巻かれていて、ずれないようにと丸いシールが貼ってある。そのシールには『Happy White Day』と印字されていた。

――――――――

ホワイトデーに的場が贈ったのは、焼きそばパンの形のルームライト(笑)
穂稀はその日の内に返礼をしたかったから、取り敢えずコンビニに駆け込んだ。
この礼をしっかり返す日は来るのか?(笑)
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