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「あら、ルミー。なにか面白い事でもあった?」

「ううん。大した事ないの。異国のお客様が来ているのでしょ?ちょっと興味があって」

「そうそう。晩餐会の準備で大忙しだわ。大広間で、主要貴族も集めて開催されるのですって。王が招き入れるなんて珍しいわよね。あんなに毛嫌いしているのに。もしかして姫様達の婚約相手の殿方かしら」

「昨日はすごかったわよね。馬車の大行列。先頭の金縁黒塗りの馬車なんて、光り輝いていたわ。」

「本当にすごかったわよね。」

(晩餐会か、、、もしかしたら。)

ルミアはふと思い出し、慌てて立ち上がった。

「あら?どうしたのルミー?」

「ごめんなさい。用事を思い出したわ。今日は手伝えそうにないの。」

「まあ、真面目なルミーにしては珍しいね。もしかして男かい!」

「まあ、ふふふふ」「いいわね」

ルミアは少し暗い顔で微笑んだ。

「本当にごめんなさい。急がなきゃ」

ルミーは駆け足で、森の奥へ急いで行った。






雑草が生い茂る小道を抜け、鬱蒼とした葉や小枝を押しのけてたどり着いたのは、古びた塔だった。母が生きていた時から城から離れたこの塔がルミアの居室だった。

現在のインダルア王には3人の妻がいた。王妃ルクラシアは子供を長い間、授かる事が出来なかった。王は第2妃としてリリアンナを妻に迎えた。若く美しいリリアンナは双子の姫を産んだ。王は子供が無事産まれたことを喜んだが、王子でない事に酷くショックを受けたらしい。リリアンナが出産後体調を崩し、療養していた時の夜会で王は異国から来た旅芸人の娘を手籠めにした。

それがルミアの母だった。

ルミアは、塔の裏口に回り、ドアノブを思いっきり引っ張った。

ガゴッ。

ドアノブは音とともに、ドアからあっさりと外れた。

ドアノブがあった穴から腕をいれて、中から鍵を外す。

ルミアはドアを開いた。

ギーーーーーー。

きしみながら古いドアがゆっくり開く。ドアノブを元に戻し鍵をかけた。母が亡くなってから塔を訪れる者はほとんどいなくなった。特に王妃がルミアが3歳の時に王子を産んでからは、異国の踊り子が産んだ姫を気に掛ける者はいなくなった。

そう、彼女以外は。




ドン、ドン、ドン、ドン。



正面扉を叩く音がする。

間一髪間に合ったみたいだ。

ルミアは、使用人エプロンを外し、結い上げていた髪を解き、顔を隠すようにボサボサにした。所々解れたストールを羽織って正面扉へ向かった。


塔の鍵は内外からかけられるようになっている。

ルミアは内カギを開けた。

ガチャリ。

「・・・・はあー。忌々しい。」

外からため息が聞こえる。

ガシャン。

外鍵がはずされた。


ギーーーーーーーー。

正面扉の向こうには数人の人物が立っていた。












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