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バールの様なもの
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ミストルティンのセカンダリアイテムスキル。
それを使ってルリジオンと俺は手分けして壁の修復作業を始めた。
破られた壁の修理には何本もの丸太が必要だ。
最初オークたちが引っこ抜いたり倒した木を使おうと考えた。
そして枝を払い形を整えたまでは良かったんだけど……。
「むぐぐぐっ」
「ぐぬぬぬっ」
どさっ。
「やっぱ男二人じゃ持ち上げられねぇ」
「何か道具とか無いんですか?」
「ねぇよそんなもん」
「だったらこの村の人たちはどうやってこんな壁作ったんだろ」
「昔は軍も駐留してたらしいからそいつらがやったんだろ」
高さ数メートルの壁に使われている丸太の重さは想像を絶した。
とてもでは無いが何も道具を持たない大人二人で立てられるほど簡単なものではなかったのだ。
しかもついさっき引っこ抜かれたばかりの大木である。
中には水分もたっぷり含まれているはずで。
「あー、やめだやめ。とりあえず壁の穴だけ塞げば良いだろ」
「そんなのでいいんですか?」
「この辺りには本来ならあんな怪力のバケモンはいねぇからな。ちょいと強めのオオカミとかイノシシみたいなのだから穴さえ塞いどけばなんとかなる……はずだ」
不安だ。
だが今の自分たちでは元の頑丈な丸太で組み上げた壁は作れそうに無い。
今は破壊された部分を一刻でも早く塞ぐのが先決だろう。
「それじゃあどうやって塞ぐんですか?」
「そんなもん板でも打ち付けときゃいいだろ」
ルリジオンはそう言いながら破壊された壁の間から村の中へ歩いて行く。
慌ててその後を追う。
途中、一端物置小屋に寄ってバールのようなものを持ち出した彼は、そのまま村の奥へ歩いて行く。
「この家にすっか」
彼が向かったのは開拓村の端の方にある一見の小屋。
手入れがされていないせいで屋根も壁も所々剥がれているが、修理をすれば普通に使えそうだ。
「おいリュウジ。この家をバラして壁を直す材料にするぞ」
「えっ、でも修理すれば十分住めそうじゃないですか」
「だからだよ。朽ちた建物よりいい材料が取れんだろ?」
そう言うと彼は手にしていたバールのようなものを俺に差し出し告げる。
「それじゃ早速解体を始めるぞ」
「えっ」
「えっ……じゃねぇよ。さっさとその……アブなんとかってやつでコイツのバールを二つ作れって言ってんだよ」
どうやらバールのようなものは本当にバールだったらしい。
俺はいったんミストルティンを小枝状態に戻すといつもの通りアブソープションでバールを取り込む。
そしてバールに変形させてからセカンダリアイテムで同じものをもう一つ作り出した。
「はい」
「おう、それじゃあまずこの辺りの板から引っぺがすぜ」
建物の外装に使われているのは長さ三メートル、幅五十センチほどの板で。
釘で隙間鳴く打ち付けられている。
「釘抜きとか使わなくていいんですか?」
「そんな面倒なことしねぇよ。見てな」
ルリジオンはそう言いながらバーツを腰の辺りに構える。
そしてL字になった方とは逆側の部分を板と板の間に勢いよく何度も突き刺しはじめた。
ガスッ、ガスッ、ガスッ。
先端が数センチほど板の隙間に突き刺さるまで同じ動作を続けたあと彼は一端手を止めて俺の方を見た。
「リュウジ、いつまでも見てねぇでお前は反対側を外せ」
「あっ、すみません」
そう言われて俺も同じようにバールを突き刺す。
板に傷が付くが、これからの使用用途を考えると気にする必要は無い。
そして俺のバールが共にある程度板の左右の隙間に突き刺さったのを確認してから
「それじゃあ剥がすぜ」
ルリジオンはそういって今度はテコの原理を使って板を強引に引き剥がしはじめる。
それを見て俺も同じようにバールを持つ手に力を込めた。
ぎっ、ぎっ、ぎっ。
深く突き刺さった釘が柱か何かから抜けていく音が耳に届く。
やがてだんだんと釘が抜けるにつれ、手に伝わってくる抵抗も弱まり。
「外れるぞっ」
ルリジオンの声と共に大きな板が一枚剥がれ地面に音を立て落ちた。
同時に俺の顎からも汗が地面に落ちて染みを作る。
都会っ子にはこの程度の力仕事すら一苦労である。
だが同じことをやっているにもかかわらずルリジオンは汗一つかいていない。
「一枚剥がせば後はバールも差し込みやすくなる」
「ですね」
「じゃあ続けてやるぞ。大体10枚くらいあれば十分だろ」
「じゅ、十枚も同じようにするんですか?」
「当たり前だろ。特に壁の下の方は表と裏で二枚ずつ貼り付けなきゃなんねぇからな。
ルリジオンはさも当然そうにそう応えると、次の板の隙間にバールを差し込んだのだった。
※次回 みんなで楽しくお料理回?
※アドソープション→アブソープションに修正統一しました
それを使ってルリジオンと俺は手分けして壁の修復作業を始めた。
破られた壁の修理には何本もの丸太が必要だ。
最初オークたちが引っこ抜いたり倒した木を使おうと考えた。
そして枝を払い形を整えたまでは良かったんだけど……。
「むぐぐぐっ」
「ぐぬぬぬっ」
どさっ。
「やっぱ男二人じゃ持ち上げられねぇ」
「何か道具とか無いんですか?」
「ねぇよそんなもん」
「だったらこの村の人たちはどうやってこんな壁作ったんだろ」
「昔は軍も駐留してたらしいからそいつらがやったんだろ」
高さ数メートルの壁に使われている丸太の重さは想像を絶した。
とてもでは無いが何も道具を持たない大人二人で立てられるほど簡単なものではなかったのだ。
しかもついさっき引っこ抜かれたばかりの大木である。
中には水分もたっぷり含まれているはずで。
「あー、やめだやめ。とりあえず壁の穴だけ塞げば良いだろ」
「そんなのでいいんですか?」
「この辺りには本来ならあんな怪力のバケモンはいねぇからな。ちょいと強めのオオカミとかイノシシみたいなのだから穴さえ塞いどけばなんとかなる……はずだ」
不安だ。
だが今の自分たちでは元の頑丈な丸太で組み上げた壁は作れそうに無い。
今は破壊された部分を一刻でも早く塞ぐのが先決だろう。
「それじゃあどうやって塞ぐんですか?」
「そんなもん板でも打ち付けときゃいいだろ」
ルリジオンはそう言いながら破壊された壁の間から村の中へ歩いて行く。
慌ててその後を追う。
途中、一端物置小屋に寄ってバールのようなものを持ち出した彼は、そのまま村の奥へ歩いて行く。
「この家にすっか」
彼が向かったのは開拓村の端の方にある一見の小屋。
手入れがされていないせいで屋根も壁も所々剥がれているが、修理をすれば普通に使えそうだ。
「おいリュウジ。この家をバラして壁を直す材料にするぞ」
「えっ、でも修理すれば十分住めそうじゃないですか」
「だからだよ。朽ちた建物よりいい材料が取れんだろ?」
そう言うと彼は手にしていたバールのようなものを俺に差し出し告げる。
「それじゃ早速解体を始めるぞ」
「えっ」
「えっ……じゃねぇよ。さっさとその……アブなんとかってやつでコイツのバールを二つ作れって言ってんだよ」
どうやらバールのようなものは本当にバールだったらしい。
俺はいったんミストルティンを小枝状態に戻すといつもの通りアブソープションでバールを取り込む。
そしてバールに変形させてからセカンダリアイテムで同じものをもう一つ作り出した。
「はい」
「おう、それじゃあまずこの辺りの板から引っぺがすぜ」
建物の外装に使われているのは長さ三メートル、幅五十センチほどの板で。
釘で隙間鳴く打ち付けられている。
「釘抜きとか使わなくていいんですか?」
「そんな面倒なことしねぇよ。見てな」
ルリジオンはそう言いながらバーツを腰の辺りに構える。
そしてL字になった方とは逆側の部分を板と板の間に勢いよく何度も突き刺しはじめた。
ガスッ、ガスッ、ガスッ。
先端が数センチほど板の隙間に突き刺さるまで同じ動作を続けたあと彼は一端手を止めて俺の方を見た。
「リュウジ、いつまでも見てねぇでお前は反対側を外せ」
「あっ、すみません」
そう言われて俺も同じようにバールを突き刺す。
板に傷が付くが、これからの使用用途を考えると気にする必要は無い。
そして俺のバールが共にある程度板の左右の隙間に突き刺さったのを確認してから
「それじゃあ剥がすぜ」
ルリジオンはそういって今度はテコの原理を使って板を強引に引き剥がしはじめる。
それを見て俺も同じようにバールを持つ手に力を込めた。
ぎっ、ぎっ、ぎっ。
深く突き刺さった釘が柱か何かから抜けていく音が耳に届く。
やがてだんだんと釘が抜けるにつれ、手に伝わってくる抵抗も弱まり。
「外れるぞっ」
ルリジオンの声と共に大きな板が一枚剥がれ地面に音を立て落ちた。
同時に俺の顎からも汗が地面に落ちて染みを作る。
都会っ子にはこの程度の力仕事すら一苦労である。
だが同じことをやっているにもかかわらずルリジオンは汗一つかいていない。
「一枚剥がせば後はバールも差し込みやすくなる」
「ですね」
「じゃあ続けてやるぞ。大体10枚くらいあれば十分だろ」
「じゅ、十枚も同じようにするんですか?」
「当たり前だろ。特に壁の下の方は表と裏で二枚ずつ貼り付けなきゃなんねぇからな。
ルリジオンはさも当然そうにそう応えると、次の板の隙間にバールを差し込んだのだった。
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