無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生

文字の大きさ
18 / 33

バールの様なもの

しおりを挟む
 ミストルティンのセカンダリアイテムスキル。
 それを使ってルリジオンと俺は手分けして壁の修復作業を始めた。

 破られた壁の修理には何本もの丸太が必要だ。
 最初オークたちが引っこ抜いたり倒した木を使おうと考えた。
 そして枝を払い形を整えたまでは良かったんだけど……。

「むぐぐぐっ」
「ぐぬぬぬっ」

 どさっ。

「やっぱ男二人じゃ持ち上げられねぇ」
「何か道具とか無いんですか?」
「ねぇよそんなもん」
「だったらこの村の人たちはどうやってこんな壁作ったんだろ」
「昔は軍も駐留してたらしいからそいつらがやったんだろ」

 高さ数メートルの壁に使われている丸太の重さは想像を絶した。
 とてもでは無いが何も道具を持たない大人二人で立てられるほど簡単なものではなかったのだ。

 しかもついさっき引っこ抜かれたばかりの大木である。
 中には水分もたっぷり含まれているはずで。

「あー、やめだやめ。とりあえず壁の穴だけ塞げば良いだろ」
「そんなのでいいんですか?」
「この辺りには本来ならあんな怪力のバケモンはいねぇからな。ちょいと強めのオオカミとかイノシシみたいなのだから穴さえ塞いどけばなんとかなる……はずだ」

 不安だ。
 だが今の自分たちでは元の頑丈な丸太で組み上げた壁は作れそうに無い。
 今は破壊された部分を一刻でも早く塞ぐのが先決だろう。

「それじゃあどうやって塞ぐんですか?」
「そんなもん板でも打ち付けときゃいいだろ」

 ルリジオンはそう言いながら破壊された壁の間から村の中へ歩いて行く。
 慌ててその後を追う。

 途中、一端物置小屋に寄ってバールのようなものを持ち出した彼は、そのまま村の奥へ歩いて行く。

「この家にすっか」

 彼が向かったのは開拓村の端の方にある一見の小屋。
 手入れがされていないせいで屋根も壁も所々剥がれているが、修理をすれば普通に使えそうだ。

「おいリュウジ。この家をバラして壁を直す材料にするぞ」
「えっ、でも修理すれば十分住めそうじゃないですか」
「だからだよ。朽ちた建物よりいい材料が取れんだろ?」

 そう言うと彼は手にしていたバールのようなものを俺に差し出し告げる。

「それじゃ早速解体を始めるぞ」
「えっ」
「えっ……じゃねぇよ。さっさとその……アブなんとかってやつでコイツのバールを二つ作れって言ってんだよ」

 どうやらバールのようなものは本当にバールだったらしい。
 俺はいったんミストルティンを小枝状態に戻すといつもの通りアブソープションでバールを取り込む。
 そしてバールに変形させてからセカンダリアイテムで同じものをもう一つ作り出した。

「はい」
「おう、それじゃあまずこの辺りの板から引っぺがすぜ」

 建物の外装に使われているのは長さ三メートル、幅五十センチほどの板で。
 釘で隙間鳴く打ち付けられている。

「釘抜きとか使わなくていいんですか?」
「そんな面倒なことしねぇよ。見てな」

 ルリジオンはそう言いながらバーツを腰の辺りに構える。
 そしてL字になった方とは逆側の部分を板と板の間に勢いよく何度も突き刺しはじめた。

 ガスッ、ガスッ、ガスッ。

 先端が数センチほど板の隙間に突き刺さるまで同じ動作を続けたあと彼は一端手を止めて俺の方を見た。

「リュウジ、いつまでも見てねぇでお前は反対側を外せ」
「あっ、すみません」

 そう言われて俺も同じようにバールを突き刺す。
 板に傷が付くが、これからの使用用途を考えると気にする必要は無い。

 そして俺のバールが共にある程度板の左右の隙間に突き刺さったのを確認してから

「それじゃあ剥がすぜ」

 ルリジオンはそういって今度はテコの原理を使って板を強引に引き剥がしはじめる。
 それを見て俺も同じようにバールを持つ手に力を込めた。

 ぎっ、ぎっ、ぎっ。

 深く突き刺さった釘が柱か何かから抜けていく音が耳に届く。
 やがてだんだんと釘が抜けるにつれ、手に伝わってくる抵抗も弱まり。

「外れるぞっ」

 ルリジオンの声と共に大きな板が一枚剥がれ地面に音を立て落ちた。
 同時に俺の顎からも汗が地面に落ちて染みを作る。

 都会っ子にはこの程度の力仕事すら一苦労である。
 だが同じことをやっているにもかかわらずルリジオンは汗一つかいていない。

「一枚剥がせば後はバールも差し込みやすくなる」
「ですね」
「じゃあ続けてやるぞ。大体10枚くらいあれば十分だろ」
「じゅ、十枚も同じようにするんですか?」
「当たり前だろ。特に壁の下の方は表と裏で二枚ずつ貼り付けなきゃなんねぇからな。

 ルリジオンはさも当然そうにそう応えると、次の板の隙間にバールを差し込んだのだった。




※次回 みんなで楽しくお料理回?

※アドソープション→アブソープションに修正統一しました
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...