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見捨てられた開拓地と魔王討伐
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「さて、それじゃあ話をしよう」
具材に塩で味を付けただけのスープを食べ終えた俺の腹が落ち着いた頃。
ルリジオンが入れてくれたコーヒーのようなものを飲みながら薄暗い部屋の中で向き合う。
先ほどまで俺の近くではしゃいでいたリリエールは、既に隣りの部屋で眠ってしまったので二人きりだ。
「それじゃあ俺の話からでいいですか」
「ああ。手短に頼むぜ」
手元の温かなコーヒーカップを両手で包み込みながら俺は口を開いた。
突然なんの前触れも無くこの世界に召喚されたこと。
魔王を倒す勇者だと歓迎されたものの、鑑定球で無能と鑑定されたせいで無能勇者と呼ばれたこと。
そして元の世界に帰すと言われ騙されてこの村の近くへ転移させられたこと。
そこで魔物というものに初めて遭遇し、なんとか偶然倒せたはいいが、食べ物も何も無く彷徨いここを見つけたこと。
「良く無事だったな」
「ええ、まぁ。相手が小物だったんで」
ただし俺はミストルティンのことと、必然戦った相手がオークであることは誤魔化しておくことにした。
助けて貰って食事まで施されたが、それでも手の内全てをバラすのにはまだ抵抗がある。
なのでそれを教えるのは彼からも話を聞いてから決めようと考えた。
「こんなボロボロの短剣でよくもまぁ小物とはいえ魔物を倒せたもんだ」
説明のために手渡した短剣のままのミストルティンを眺めながらルリジオンは呆れた様な声を上げる。
実際一刺ししたらポッキリと折れてしまいそうな――実際に元の短剣は折れてしまったが――ボロボロの短剣で戦ったと言われたら驚くのは仕方が無い。
「運が良かったんですよ」
「だな。いくら小さくても魔物は油断できねぇ相手だ」
ルリジオンはそう言いながら机の上に短剣を置き「今度は俺が話す番だな」と両肘をテーブルについて、どこぞの指令のような格好でしゃべり出す。
「まず兄ちゃんが知りたいのはここがどこかってことだろ?」
「ええ、まぁ」
「ここはな。お前さんを召喚した国……バスラール王国の南側の国境から更に南下した場所だ」
俺を召喚したバスラール王国の南部には魔物が彷徨く広大な森が存在しているのだという。
かつて王国はその土地を自国の領土にするために何度か軍隊と共に開拓民を送り込み、森を切り開こうとした。
しかし森に住む魔物達は予想外に多く、手間取っている内に北方の国々との争いが始まってしまった。
おかげで軍は北方の戦いのために引き上げねばならず、南部の森の開発は中止。
残されたのは半ば強制的に移住させられた開拓民たちが作った村の残骸だけだったという。
「で、ここはその夢の跡の一つってわけだ」
「つまり開拓村跡地ってことですか……でもそんな所にどうしてルリジオンさんはリリと一緒に住んでいるんですか?」
彼の話では既に開拓民もいなくなって久しい場所のはず。
なのにそんな場所にリリエールの様な子供と二人で住んでいるのは何故なのか気になるのは当たり前のことだろう。
「ふぅ」
ルリジオンはゆっくりと冷めかけのコーヒーもどきを一口飲んでから表情を一変させた。
「そいつは言えねぇな。俺たちはまださっき知り合ったばかりなんだぜ?」
そしてテーブルの上から短剣を持ち上げるとその切っ先を俺に向けてくるくると回しながら。
「もしかするとお前さんは遭難者のふりをして俺を殺しに来た暗殺者かもしれねぇし、逆に俺が盗賊でお前が眠ったところをグサリってするかもしれねぇんだぜ」
とさっきの籠もった目を俺に向けた。
だが――
「なんてな。お前さんが暗殺者とかじゃねぇってことは見てりゃわかるよ」
ルリジオンはそう笑って一瞬で元の飄々としたつかみ所の無い笑顔に戻すと「それでもまぁ詳しくは言えねぇこともある」と言いながらカップの中身を一気に飲み干した。
「すみません。昨日からいろんな事があったせいで焦ってたみたいです」
俺は素直に頭を下げて謝罪の言葉を口にした。
自分だってルリジオンを信じることが出来ずにミストルティンのことを秘密にしているというのに。
それを棚に上げて彼らの深い事情を聞こうとしたのだから怒られて当然だ。
「いいってことよ。でもまぁ兄ちゃんの話が本当だったとしたら王国の奴ら本格的に戦争をおっぱじめる気だったのかもしんねぇな」
「えっ。魔王に操られてる北方の国々とはもう戦争してるんですよね?」
王城でも魔王軍として魔王に操られた国々に攻められているという話をしていたし、さっきルリジオンも北方の国と戦争が始まった生でこの森の開発が中止になったと言っていたはずだ。
「ああ? いや、俺の知ってる限りは北方の国との戦争は小さな局地戦ばかりだったんだよ。だけど『勇者』なんていう強力な武器を手に入れようとしたってことは――」
「魔王と戦うためじゃないんですか?」
俺は頭に浮んだある疑念を振り払いたくて、ルリジオンにそう問い掛けた。
「……違うね」
しかしルリジオンからの返答は俺が望んだものとは逆の答えで。
「そもそも魔王なんてモノは、俺の知る限りとっくの昔に討伐されちまって今はもういないはずだからな」
続くそんな言葉は、俺が召喚されたその意味すら完全に崩壊させてしまった。
「えっ……」
召喚されるよりも前に既に魔王は討伐されていた。
そんんあ話をルリジオンの口から聞いて俺は一瞬固まってしまう。
「どっかの国の『クェンジー』とかいう男が仲間数人を引き連れて魔王の住処に襲撃を掛けて倒したって聞いたな」
それももう一年ほど前の話だと言う。
だったらどうして俺は今になって『勇者召喚』されたのだろうか。
「よく知らねぇが、異世界から召喚された人間ってのは普通はとてつもねぇ力を持ってんだろ?」
「たぶんそんな感じのことをストルトスって人は言ってた気がします。でも……」
「お前さんは何の力も無かった……と。つまりはこういうことじゃねぇかな」
ルリジオンは一呼吸置いてから自分の推測を口にした。
「魔王を倒したクェンジーとかいうヤツも異世界から召喚された勇者だった。そしてその情報をバスラール王国の馬鹿どもは知った」
「俺より先にどこかの国が勇者召喚を行ったってことですか」
「そういうことだ。んで魔王なんていうバケモノを倒せるだけの力をもった『戦力』を自分の国にも欲しいと思ったんだろうな」
北方の国と本格的な戦争が近いバスラール王国としては、その戦争を勝利するための切り札が欲しかった。
だから勇者召喚によってその切り札を得ようとしたということか。
「でもまぁ結果的に失敗したってわけだ。それを知った時の彼奴らのアホ面は見てみたかったぜ」
隣りの部屋で眠っているリリエールを気遣って大声を出すことは無かったが、ルリジオンのゆかいそうな笑い声が部屋に響く。
どうやら彼もバスラール王国には何かしら恨みがあるようだ。
それがリリエールや彼の今の境遇と関係があるかどうかは断言できないが、無関係とも思えない。
「そうですか。俺にもし力があったら――」
「相手は魔王軍だって騙されて戦場に放り込まれていただろうな」
いくら魔王の手先と言われても俺に人が殺せるとは思えない。
だけど戦場の空気というのは平和な国でのほほんと暮らしていた人間でも変えてしまうとも聞く。
自分の命が危険にさらされても反撃しないとは絶対に言い切れないだろう。
そして一度でも一線を越えてしまえばどうなるか。
「無能で良かったなんて思う日が来るなんて思いませんでしたよ」
すっかり冷め切ってしまったコーヒーもどきを一口飲んで脱力した様に呟く。
心地よい苦みが口の中に広がって行くのを俺が感じていたその時だった。
「うおおっ!?」
突然ルリジオンが狼狽した様な声を上げたのである。
俺が一体何が起こったのかと慌てて目線をその方向へ向けると。
「なんだこの短剣っ」
テーブルの上に置いたままだった短剣が徐々に姿を変え、元の小枝の姿へともどってしまったのである。
「えっ……」
まさか指示してないのに姿を戻すとは思わなかった。
それどころか。
「あっ」
突然小枝が宙に浮いたかと思うと猛烈なスピードで俺に向かって飛んできたのである。
一メートルも離れていなかった俺はとっさに避けることも出来ず――
すぽん。
そのまま小枝は俺の胸ポケットに入るのを目で追うしか出来なかった。
「おい、リュウジ! これは一体どういうことなんだ! なんなんだよそれ!」
隣りの部屋でリリエールが眠っていることすら忘れたのか、ルリジオンが大きな声でそう言いつつ俺の胸ポケットを指さす。
言いたいことは凄くわかる。
俺だって突然こんなことが目の前で起こったらパニックになるだろう。
というか俺自身も結構パニクっている。
「あ……えっと……ちょっと深呼吸しても良いですか?」
俺は自分自身を落ち着かせるためと、どう説明したら良いのかを考えるためにゆっくりと深呼吸をした。
ミストルティンのことは、ルリジオンたちのことをもう少し知って信用できると確信するまでは話さないでいようと考えていた。
だが今更それを隠しきれるとも思えない。
それにどうやら彼らもバスラール王国には何かしら恨みを持っている同士のようだし。
ここは素直に話して、むしろこれからの異世界生活を助けて貰った方が良いだろう。
俺はそう決めると、胸ポケットからミストルティンを取り出し話し始めた。
「さっきの俺の話の中で一つだけ隠してたことがあるんです」
「それって、その枝のことかい?」
「はい。実は――」
そして俺は異世界に召喚される前からここにたどり着くまでのことを話す。
ミストルティンを押し売りされ、その力を知り、オークを倒し、行き倒れになりそうになってこの村にたどり着くまでの話を。
そうして俺が幸せを掴む開拓村での初めての夜は過ぎていったのだった。
具材に塩で味を付けただけのスープを食べ終えた俺の腹が落ち着いた頃。
ルリジオンが入れてくれたコーヒーのようなものを飲みながら薄暗い部屋の中で向き合う。
先ほどまで俺の近くではしゃいでいたリリエールは、既に隣りの部屋で眠ってしまったので二人きりだ。
「それじゃあ俺の話からでいいですか」
「ああ。手短に頼むぜ」
手元の温かなコーヒーカップを両手で包み込みながら俺は口を開いた。
突然なんの前触れも無くこの世界に召喚されたこと。
魔王を倒す勇者だと歓迎されたものの、鑑定球で無能と鑑定されたせいで無能勇者と呼ばれたこと。
そして元の世界に帰すと言われ騙されてこの村の近くへ転移させられたこと。
そこで魔物というものに初めて遭遇し、なんとか偶然倒せたはいいが、食べ物も何も無く彷徨いここを見つけたこと。
「良く無事だったな」
「ええ、まぁ。相手が小物だったんで」
ただし俺はミストルティンのことと、必然戦った相手がオークであることは誤魔化しておくことにした。
助けて貰って食事まで施されたが、それでも手の内全てをバラすのにはまだ抵抗がある。
なのでそれを教えるのは彼からも話を聞いてから決めようと考えた。
「こんなボロボロの短剣でよくもまぁ小物とはいえ魔物を倒せたもんだ」
説明のために手渡した短剣のままのミストルティンを眺めながらルリジオンは呆れた様な声を上げる。
実際一刺ししたらポッキリと折れてしまいそうな――実際に元の短剣は折れてしまったが――ボロボロの短剣で戦ったと言われたら驚くのは仕方が無い。
「運が良かったんですよ」
「だな。いくら小さくても魔物は油断できねぇ相手だ」
ルリジオンはそう言いながら机の上に短剣を置き「今度は俺が話す番だな」と両肘をテーブルについて、どこぞの指令のような格好でしゃべり出す。
「まず兄ちゃんが知りたいのはここがどこかってことだろ?」
「ええ、まぁ」
「ここはな。お前さんを召喚した国……バスラール王国の南側の国境から更に南下した場所だ」
俺を召喚したバスラール王国の南部には魔物が彷徨く広大な森が存在しているのだという。
かつて王国はその土地を自国の領土にするために何度か軍隊と共に開拓民を送り込み、森を切り開こうとした。
しかし森に住む魔物達は予想外に多く、手間取っている内に北方の国々との争いが始まってしまった。
おかげで軍は北方の戦いのために引き上げねばならず、南部の森の開発は中止。
残されたのは半ば強制的に移住させられた開拓民たちが作った村の残骸だけだったという。
「で、ここはその夢の跡の一つってわけだ」
「つまり開拓村跡地ってことですか……でもそんな所にどうしてルリジオンさんはリリと一緒に住んでいるんですか?」
彼の話では既に開拓民もいなくなって久しい場所のはず。
なのにそんな場所にリリエールの様な子供と二人で住んでいるのは何故なのか気になるのは当たり前のことだろう。
「ふぅ」
ルリジオンはゆっくりと冷めかけのコーヒーもどきを一口飲んでから表情を一変させた。
「そいつは言えねぇな。俺たちはまださっき知り合ったばかりなんだぜ?」
そしてテーブルの上から短剣を持ち上げるとその切っ先を俺に向けてくるくると回しながら。
「もしかするとお前さんは遭難者のふりをして俺を殺しに来た暗殺者かもしれねぇし、逆に俺が盗賊でお前が眠ったところをグサリってするかもしれねぇんだぜ」
とさっきの籠もった目を俺に向けた。
だが――
「なんてな。お前さんが暗殺者とかじゃねぇってことは見てりゃわかるよ」
ルリジオンはそう笑って一瞬で元の飄々としたつかみ所の無い笑顔に戻すと「それでもまぁ詳しくは言えねぇこともある」と言いながらカップの中身を一気に飲み干した。
「すみません。昨日からいろんな事があったせいで焦ってたみたいです」
俺は素直に頭を下げて謝罪の言葉を口にした。
自分だってルリジオンを信じることが出来ずにミストルティンのことを秘密にしているというのに。
それを棚に上げて彼らの深い事情を聞こうとしたのだから怒られて当然だ。
「いいってことよ。でもまぁ兄ちゃんの話が本当だったとしたら王国の奴ら本格的に戦争をおっぱじめる気だったのかもしんねぇな」
「えっ。魔王に操られてる北方の国々とはもう戦争してるんですよね?」
王城でも魔王軍として魔王に操られた国々に攻められているという話をしていたし、さっきルリジオンも北方の国と戦争が始まった生でこの森の開発が中止になったと言っていたはずだ。
「ああ? いや、俺の知ってる限りは北方の国との戦争は小さな局地戦ばかりだったんだよ。だけど『勇者』なんていう強力な武器を手に入れようとしたってことは――」
「魔王と戦うためじゃないんですか?」
俺は頭に浮んだある疑念を振り払いたくて、ルリジオンにそう問い掛けた。
「……違うね」
しかしルリジオンからの返答は俺が望んだものとは逆の答えで。
「そもそも魔王なんてモノは、俺の知る限りとっくの昔に討伐されちまって今はもういないはずだからな」
続くそんな言葉は、俺が召喚されたその意味すら完全に崩壊させてしまった。
「えっ……」
召喚されるよりも前に既に魔王は討伐されていた。
そんんあ話をルリジオンの口から聞いて俺は一瞬固まってしまう。
「どっかの国の『クェンジー』とかいう男が仲間数人を引き連れて魔王の住処に襲撃を掛けて倒したって聞いたな」
それももう一年ほど前の話だと言う。
だったらどうして俺は今になって『勇者召喚』されたのだろうか。
「よく知らねぇが、異世界から召喚された人間ってのは普通はとてつもねぇ力を持ってんだろ?」
「たぶんそんな感じのことをストルトスって人は言ってた気がします。でも……」
「お前さんは何の力も無かった……と。つまりはこういうことじゃねぇかな」
ルリジオンは一呼吸置いてから自分の推測を口にした。
「魔王を倒したクェンジーとかいうヤツも異世界から召喚された勇者だった。そしてその情報をバスラール王国の馬鹿どもは知った」
「俺より先にどこかの国が勇者召喚を行ったってことですか」
「そういうことだ。んで魔王なんていうバケモノを倒せるだけの力をもった『戦力』を自分の国にも欲しいと思ったんだろうな」
北方の国と本格的な戦争が近いバスラール王国としては、その戦争を勝利するための切り札が欲しかった。
だから勇者召喚によってその切り札を得ようとしたということか。
「でもまぁ結果的に失敗したってわけだ。それを知った時の彼奴らのアホ面は見てみたかったぜ」
隣りの部屋で眠っているリリエールを気遣って大声を出すことは無かったが、ルリジオンのゆかいそうな笑い声が部屋に響く。
どうやら彼もバスラール王国には何かしら恨みがあるようだ。
それがリリエールや彼の今の境遇と関係があるかどうかは断言できないが、無関係とも思えない。
「そうですか。俺にもし力があったら――」
「相手は魔王軍だって騙されて戦場に放り込まれていただろうな」
いくら魔王の手先と言われても俺に人が殺せるとは思えない。
だけど戦場の空気というのは平和な国でのほほんと暮らしていた人間でも変えてしまうとも聞く。
自分の命が危険にさらされても反撃しないとは絶対に言い切れないだろう。
そして一度でも一線を越えてしまえばどうなるか。
「無能で良かったなんて思う日が来るなんて思いませんでしたよ」
すっかり冷め切ってしまったコーヒーもどきを一口飲んで脱力した様に呟く。
心地よい苦みが口の中に広がって行くのを俺が感じていたその時だった。
「うおおっ!?」
突然ルリジオンが狼狽した様な声を上げたのである。
俺が一体何が起こったのかと慌てて目線をその方向へ向けると。
「なんだこの短剣っ」
テーブルの上に置いたままだった短剣が徐々に姿を変え、元の小枝の姿へともどってしまったのである。
「えっ……」
まさか指示してないのに姿を戻すとは思わなかった。
それどころか。
「あっ」
突然小枝が宙に浮いたかと思うと猛烈なスピードで俺に向かって飛んできたのである。
一メートルも離れていなかった俺はとっさに避けることも出来ず――
すぽん。
そのまま小枝は俺の胸ポケットに入るのを目で追うしか出来なかった。
「おい、リュウジ! これは一体どういうことなんだ! なんなんだよそれ!」
隣りの部屋でリリエールが眠っていることすら忘れたのか、ルリジオンが大きな声でそう言いつつ俺の胸ポケットを指さす。
言いたいことは凄くわかる。
俺だって突然こんなことが目の前で起こったらパニックになるだろう。
というか俺自身も結構パニクっている。
「あ……えっと……ちょっと深呼吸しても良いですか?」
俺は自分自身を落ち着かせるためと、どう説明したら良いのかを考えるためにゆっくりと深呼吸をした。
ミストルティンのことは、ルリジオンたちのことをもう少し知って信用できると確信するまでは話さないでいようと考えていた。
だが今更それを隠しきれるとも思えない。
それにどうやら彼らもバスラール王国には何かしら恨みを持っている同士のようだし。
ここは素直に話して、むしろこれからの異世界生活を助けて貰った方が良いだろう。
俺はそう決めると、胸ポケットからミストルティンを取り出し話し始めた。
「さっきの俺の話の中で一つだけ隠してたことがあるんです」
「それって、その枝のことかい?」
「はい。実は――」
そして俺は異世界に召喚される前からここにたどり着くまでのことを話す。
ミストルティンを押し売りされ、その力を知り、オークを倒し、行き倒れになりそうになってこの村にたどり着くまでの話を。
そうして俺が幸せを掴む開拓村での初めての夜は過ぎていったのだった。
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