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青年期
黒髪の簒奪者
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大剣を受ける為に収納庫から出した鉄剣が折れるのと同時、エルピスの障壁も数枚ほど割られる。
割られたのは魔法城壁のみ、邪神の障壁が破られることなどありえはしないがエルピスの魔法障壁を破っただけでも血の滲むような努力を重ねたことは想像に難くない。
「強いね君達。心の底から称賛するよ」
とめどなく転移を繰り返して位置を探らせないようにしながらも、エルピスは他に被害が及ばないように完璧に抑えきっていた。
転移魔法を使用しての回避は、ある程度の魔法使いであれば必須とも言える技能である。
だがそれを予想した様に飛来した矢は、ギリギリで避けたエルピスの頬を掠め、それによって先端に塗られた毒が体内に入ってくるのが感じ取れた。
「痛っ。貫通系の技能かな? 使用制限ありそうな感じだけど」
「ご名答よ」
敵の森霊種の持つ日に一度の防御無視の攻撃を受けて、エルピスの皮膚がほんの少しだけ傷つけられる。
傷の表面を見てみれば薄紫色の液体が少しだけ垂れていた、見た目からしておそらくは毒だろうと目星をつけたエルピスは、特に気にすることもなく戦闘に意識を戻す。
毒が神の身体を犯す事はほぼほぼありえない。
邪神の権能を持ち全ての毒性を無効化するエルピスの能力を考えれば、毒を塗っていたところで全ては無駄だ。
「毒効果遅延化? ……いえ、この感じは毒無効化の様ね。性濁豚!! 隙を作りなさい!」
「言ってくれるぜ森のヒキ引きこもり野郎が!! それが出来たらとっくの前にやってんだよ!!」
毒の無効化に気付く森霊種と、それをカバーするようにして前に飛び出る性濁豚。
パーティーとしてみるのであれば素晴らしい動きだ、種族間に強く根付いた嫌悪感を超越してここまでの連携を見せることができるのはここが戦場でなければ拍手喝采でも浴びせたいところである。
だが悲しいかな、ここは戦場。エルピスが容赦なく性濁豚の腕を切り飛ばすとその隙を狙っていたように新たな敵が現れる。
「ーーキッキッキッキ!! 森霊種も性濁豚も使いもんにならねぇなぁ! 緑鬼種最強の俺様がやってやんよォッ」
現れたのは緑鬼種、報告にはなかった亜人種の出現に対してエルピスは防御行動を取ることはない。
自身の身の丈程度の大きなナイフを持ちながら跳ねる様に飛び出してくる緑色の影と、それに合わせたのか同じ緑色の蟲が無数に辺りからエルピスに向かって突撃し、更にいくつかの亜人種からの魔法が飛ぶ。
集団で取り囲みただひたすらにリンチするその戦法は、残念ながら戦闘になりえる戦力差でなければ意味がなかった。
「おい! 下手に近寄るな!!」
「──sn&k.!!」
エルピスの障壁が一瞬色を変えたかと思うと、その間に触れていた生命体の全てが瞬時に溶けて消える。
邪神の権能によって生成された毒は、その効果を対象を害するという概念で構成している。
つまりエルピスがどれだけの割合で敵意を抱いているかによって毒の威力の調整は簡単な事で、肉体的な接触で彼を止めるにはそうとうな毒への耐性が必要である。
蒸発していく肉体の蒸気で一瞬視界が防がれたと思うと、先程エルピスに向かって突撃した緑鬼種とはまた別の緑鬼種がエルピスに向かって飛びかかった。
「ーーグギャゲヒヤァ!?」
「さすが、意外と早かったね」
防御するのも面倒だと攻撃を体で受け止めようとしていたエルピスだったが、障壁に向かって刃が届くよりも先に緑鬼種の胴と足はお別れしてしまう、
現れたのは四人の召使い達、戦場に主人が身を委ねていなかったからこそ暴れていた彼等だが、主人がその身を戦場に落とすというのであればその盾となるために動くのは彼等の本懐である。
「まったく、近くで戦っていた私達の存在を忘れるとは。愚かですね」
「粘触種に緑鬼種、性濁豚にこいつは何だこれ。まったく異業種のオンパレードだな、こっちはリリィしかいないのに」
「――ぶっ殺す!!」
「ニャハハハ! この程度で私を殺れると思ったかニャァ!!」
「少しは落ち着きなさいメチル、相手もかなりの使い手よ。と言うかそこらに落ちて居た緑鬼種を使って、喧嘩するのは辞めなさいリリィ、フィトゥス」
当然の様に無詠唱で魔法を発動し、一切も隙もなくエルピスの周りを取り囲む四人に油断など少しも見受けられない。
故に亜人達は先程までの無謀な突撃を辞め四人の周りを取り囲む。
改めて口にしよう。この世界においては量など気休めでしか無く、ならばこの亜人達の判断はまともな判断だと。
「ほら喧嘩しないでよ。まあでもちょうどいいや。ちょっと時間稼いでくれる? 魔法戦闘もこれ以上は必要ないだろうし、形態を変えるよ」
「そういう事ですか了解しました」
しかも付け加えるのなら緑鬼種は先ほどから数度族長級の者をエルピスの手によって殺され、指揮系統すら麻痺して居た。
そんな状況下で誰があの化け物どもに攻めるのかと周りを伺い続ける彼らに対して、半人半龍の形態変化の危険性を知っている森霊種は大声で叫ぶ。
「――不味いッ!! 性濁豚、亜人達!! 死ぬ気で行きなさい!!」
「お前ら全員突撃だ!! なんとしても彼奴を龍化させるんじゃねぇ!!」
「主の見せ所だ。それを俺がみすみす通すわけがないだろう!!」
半人半龍の全力を知っている二人は、心からの嫌悪感と恐怖感を抱きながらそう叫ぶが時間は残念ながら圧倒的に足りえていない。
上位者の声かけに無意識のうちに飛び出した幾百、そして周辺に転がる幾千の亜人種の死体すらチリに変えて、この世界で最強の亜人種がその力を全て解放する。
龍種が人間に変質し龍人になった場合、身体の機能全てが人間の物へと作り変わる。
それはつまりただの弱体化である、龍という強大な力を無理やり人の形へ押し込めているに他ならない。
だが半人半龍であるエルピスは違った。
人間の身体はそのままに、背中からは髪の色と同じ夜空の闇を写したかの様な綺麗な黒色の翼が現れ、身体は対魔・対物理性能を持つ全亜人種の中で最硬と呼ばれる鱗で覆われて居た。
美しさの中に圧倒的な恐怖をを内包したその姿は、その場にいる全ての生命体が息を止めてしまうほどの威圧感を覚える。
だがその姿すらも成長段階の途中だ、赤と黒の魔力の風がエルピスを中心に吹き荒れたかと思うと、翼はより強靭に鱗はより強固に、そして強さの極地、この世界を統べる覇者たちの姿である龍神になっていく。
「黒翼……しかも完全な龍種のそれ」
「さあさあ亜人達! 見れるぞついにその力が!! この世で最も強い両親から生まれた御子の力が!!」
まるで酒に酔ったかのようなフィトゥスの言動の原因は、エルピスの神化によってあふれ出た魔力に充てられたことによる魔力酔いである。
龍神の側面が強く出たことによって多少は魔法操作がおぼつかなくなっているとはいえ、魔神の権能をもってしても制御できないほどの魔力は文字通りの無限であった。
そんな無限の魔力を身体強化に流用し、鍛冶神の能力を使用して作った剣を振ればどうなるか。
神の剣を受けて生存を可能とする生物などこの世に存在しないというのがその問いの答えである。
「全員避けろおおォォ!!!」
「性濁豚一体何を言っておるーーッなんだこれは!?」
「馬鹿デブ!! 技術を持った 半人半龍の剣撃威力を舐めたら死ぬわよ!!」
龍の力を持ってして人間の技術を使い、更に武具製作に優れる土精霊すら比較にならない程の武器を身につけて、獣人種をも凌駕する肉体強化術を使用しての一撃は、正に一振りで戦況を変える事のできる物だった。
「被害報告!」
「緑鬼種はほぼ全滅! 他種ももう多くは……」
性濁豚の警戒を聞き周辺の亜人種は即刻回避行動をとったが、それでもかなりの数の犠牲者が出る。
正に亜人種の頂点に立つに相応しいその一撃の破壊力は、その場にいた亜人種達を恐怖に陥れる。
そんな恐怖を乗り越えている筈の歴戦の戦士達ですら恐怖する様な行動をした当の本人であるエルピスも、周りを見渡しながらまずいなと小さく舌打ちをする
(裏に貼ってる奴らが出てくるまで使うつもりは無かったんだけど……これで出てこないならそれでもいいか)
矢を射られようともその箇所を気にする様子すら無く、魔法を撃たれ目の前で味方が死のうものなら、その死体を踏みしめて突撃してくる亜人達。
人間としか戦った事のないエルピスから見れば、正にそれは異形の集団であり、生物としても異質なもの達だった。
父ならば今自分の眼前にいる者達にも慈悲を向けるのだろうかと――そうふと思ったエルピスの耳元をすり抜ける様にして銃弾が飛来し、いつのまにか目の前まで寄ってきて射た敵の額を撃ち抜く。
〔あんたが余所見なんて珍しいわね。いまエラ達がそっちに向かったから、もう少し気張りなさい!!〕
「すまないアウローラ、助かった」
〔礼なんか良いわよ。それよりーー敵の親玉の位置が不明よ。気をつけなさい〕
脳内に鳴り響く激励を心の中でどこか期待していた自分を自嘲気味に笑いながら、エルピスは忠告を受け更に警戒を一段階上昇させる。
全体的に見れば人間が優勢に立てているこの状況ーーだが近衛兵やエラ達、そしてアルヘオ家直属の召使い達が居なくなれば瞬時に戦況は覆り、一瞬にして敵は王国を蹂躙するだろう。
そうすればあの村で起きていたことが王国全土、下手をすれば近隣諸国すべてで起きる。
それこそ世界の終わりだ、たとえ大地は焦土と化していまいとも安寧の地がどこにもなくなってしまったのならば、人という種は終わりを迎えたといっていいだろう。
だからこそ警戒心は持っておいて損はない。
まだ1万は残っているだろうという亜人達、それらを丁寧に殲滅するために端から削っていったエルピスの方に向かって敵を蹴散らしながらやってくる味方の姿が見えた。
「――ふぅ、ようやく辿り着けたよ…エルピスが助けながら来てっていうから時間がかかって仕方ない。戦場は敵が多くて少しの移動も戦闘が付き回っていやだね」
「戦争とはそう言う物よ。ニル、あそこ居る獣人種を倒しておいて貰える? 私はあの精霊もどきを張り倒してくるわ、エル問題は無いわよね?」
「そこら辺はエラに任せる、フィトゥスは少し周りの状況を見ててくれ――っと、会話くらいさせてくれよっ!」
「俺行ってきますけど気を付けてくださいね!」
予想よりも三分ほど早かった味方の到着に感謝しながら止まることなく襲い掛かる亜人を切り倒す。
完全にじり貧、はっきりと口にすればもはや死を待つのみの亜人達だが、何故かその顔は笑顔に染まって居た。
まるで罠に捕まった獲物を見つけたかの如く笑うその顔に不信感を覚えたエルピスは、その場から離れようと地面を踏みしめる。
「全員回避――って俺だけか逃げ遅れてたの」
だがその瞬間に足元から這い伝わってくるドロっとした感触に、言われようの無い嫌悪感を感じてエルピスは転移魔法でその場から離れた。
その瞬間に地面に居た性濁豚含む魔力に耐性の低い者達全てが、その身体を地面へと投げ打つ。
身体を麻痺させられたかの様にピクピクと動かす数人の兵士を見て、幾人かの亜人達は肝心のエルピスは捕まえられなかったものの他の者を拘束できた喜びに顔を歪ませている。
魔法というよりは呪術に近いそれ、魔神の権能ではなく邪神の権能が反応したのはそういったことだ。
「これも避けるんだァ、まったくおとりも出来ないなんて、性濁豚も使えないわね」
「森霊種の癖に窟暗種の真似をするお前達よりは、随分と使えるさ」
「好きな事を言いなさい。私の誇りなど彼の方に使える為には不要。ならばそのお姿を拝見出来る幸せを噛み締めながら、誇りを踏みにじってでも彼の方に勝利を捧げましょう」
大っぴらな動作でまるで役者の様な仕草を見せる森霊種の姿は、正に熱狂な信者と言う言葉が相応しい。
だからこそエルピスは森霊を見やるのではなく、もっと別の――他の何かを探して〈神域〉を極限まで突き詰める。
神の域は突き詰めれば未来の気配すらも感じ取ることができる。確実に数瞬先に現れるであろう何か、今のエルピスの力を知っていながらもそれでも勝算があると思ってここに来るそれに向かってエルピスは剣を向けた。
その瞬間剣と剣が合わさる事で甲高い音が辺りに響き渡り、そして黒髪の男が姿を現わす。
「ーーさっきから見て居たが、本当に危機に対する感が鋭いな。昔の同郷にお前みたいなのが居たよ。最高に目障りだった」
その顔を見ても驚きはない。
かつての同級生、かつての敵、そしていまもまたこの世界で敵として己の目の前に立つ雄二を見てもエルピスに驚きはなかった。
ただそうであろうと思っていたことが、そうであってほしくないと考えていなかったことがそうであっただけだ。
「目障り? それはこっちが言いたいな。人間の癖に亜人種達を先導し人類に対して牙を剥くその行為。王国に住む人間として許せるものじゃない」
「――許す? ハァ? 何言ってんだ? 別に良いんだよ、俺が楽しかったら! お前らカスとの戦闘なんぞ俺の人生に起きるイベントの内の一つ!! つまりはお前らかどれだけ努力を重ね様が何をしようが、無意味なんだよ! カスはカスらしく無駄に足掻け!」
分かりやすく悪役が口にするようなそんな雄二の言葉に対して、エルピスは警戒心をさらに強くしていく。
目の前の男を唯一尊敬していることが一つだけ、たった一つだけであるがあるエルピスからしてみれば雄二の言葉は警戒するのには十分だ。
目の前の男は目的のために必要な事であれば、それが何であれどんなことであれ平気でしてしまう貪欲さがる。
それが何からくるものなのかはエルピスが知りえる所ではないが、その貪欲はおそらく雄二の持つ特殊技能強奪のために向けられていることは想像に難くない。
「無駄に吠えるのは構わないが、ここにはお前を守ってくれる学園長は居ないぞ? 覚悟してかかってくるんだな」
「――遥希からか? それとも……まあいい。ならとっとと戦闘を開始しよう、目的達成がまだ終わって無いんでな」
数多の死体で山を築いておきながらも雄二の目標はぶれていないようである。
改めて神としての力を使用するエルピスに対して、黒髪の男もその力を全て解放し転生者と転移者はその身体を物理法則すら超越する生命体として戦闘を開始する。
お互いに譲れないものがあるのならば、結局最後に物事を決めるのは武力による交渉術だ。
プライドをかけて始まった一騎打ちはどんどんとその熱量を加速させていく。
この戦闘が終わるときこそこの戦争が終わるときであろう。
割られたのは魔法城壁のみ、邪神の障壁が破られることなどありえはしないがエルピスの魔法障壁を破っただけでも血の滲むような努力を重ねたことは想像に難くない。
「強いね君達。心の底から称賛するよ」
とめどなく転移を繰り返して位置を探らせないようにしながらも、エルピスは他に被害が及ばないように完璧に抑えきっていた。
転移魔法を使用しての回避は、ある程度の魔法使いであれば必須とも言える技能である。
だがそれを予想した様に飛来した矢は、ギリギリで避けたエルピスの頬を掠め、それによって先端に塗られた毒が体内に入ってくるのが感じ取れた。
「痛っ。貫通系の技能かな? 使用制限ありそうな感じだけど」
「ご名答よ」
敵の森霊種の持つ日に一度の防御無視の攻撃を受けて、エルピスの皮膚がほんの少しだけ傷つけられる。
傷の表面を見てみれば薄紫色の液体が少しだけ垂れていた、見た目からしておそらくは毒だろうと目星をつけたエルピスは、特に気にすることもなく戦闘に意識を戻す。
毒が神の身体を犯す事はほぼほぼありえない。
邪神の権能を持ち全ての毒性を無効化するエルピスの能力を考えれば、毒を塗っていたところで全ては無駄だ。
「毒効果遅延化? ……いえ、この感じは毒無効化の様ね。性濁豚!! 隙を作りなさい!」
「言ってくれるぜ森のヒキ引きこもり野郎が!! それが出来たらとっくの前にやってんだよ!!」
毒の無効化に気付く森霊種と、それをカバーするようにして前に飛び出る性濁豚。
パーティーとしてみるのであれば素晴らしい動きだ、種族間に強く根付いた嫌悪感を超越してここまでの連携を見せることができるのはここが戦場でなければ拍手喝采でも浴びせたいところである。
だが悲しいかな、ここは戦場。エルピスが容赦なく性濁豚の腕を切り飛ばすとその隙を狙っていたように新たな敵が現れる。
「ーーキッキッキッキ!! 森霊種も性濁豚も使いもんにならねぇなぁ! 緑鬼種最強の俺様がやってやんよォッ」
現れたのは緑鬼種、報告にはなかった亜人種の出現に対してエルピスは防御行動を取ることはない。
自身の身の丈程度の大きなナイフを持ちながら跳ねる様に飛び出してくる緑色の影と、それに合わせたのか同じ緑色の蟲が無数に辺りからエルピスに向かって突撃し、更にいくつかの亜人種からの魔法が飛ぶ。
集団で取り囲みただひたすらにリンチするその戦法は、残念ながら戦闘になりえる戦力差でなければ意味がなかった。
「おい! 下手に近寄るな!!」
「──sn&k.!!」
エルピスの障壁が一瞬色を変えたかと思うと、その間に触れていた生命体の全てが瞬時に溶けて消える。
邪神の権能によって生成された毒は、その効果を対象を害するという概念で構成している。
つまりエルピスがどれだけの割合で敵意を抱いているかによって毒の威力の調整は簡単な事で、肉体的な接触で彼を止めるにはそうとうな毒への耐性が必要である。
蒸発していく肉体の蒸気で一瞬視界が防がれたと思うと、先程エルピスに向かって突撃した緑鬼種とはまた別の緑鬼種がエルピスに向かって飛びかかった。
「ーーグギャゲヒヤァ!?」
「さすが、意外と早かったね」
防御するのも面倒だと攻撃を体で受け止めようとしていたエルピスだったが、障壁に向かって刃が届くよりも先に緑鬼種の胴と足はお別れしてしまう、
現れたのは四人の召使い達、戦場に主人が身を委ねていなかったからこそ暴れていた彼等だが、主人がその身を戦場に落とすというのであればその盾となるために動くのは彼等の本懐である。
「まったく、近くで戦っていた私達の存在を忘れるとは。愚かですね」
「粘触種に緑鬼種、性濁豚にこいつは何だこれ。まったく異業種のオンパレードだな、こっちはリリィしかいないのに」
「――ぶっ殺す!!」
「ニャハハハ! この程度で私を殺れると思ったかニャァ!!」
「少しは落ち着きなさいメチル、相手もかなりの使い手よ。と言うかそこらに落ちて居た緑鬼種を使って、喧嘩するのは辞めなさいリリィ、フィトゥス」
当然の様に無詠唱で魔法を発動し、一切も隙もなくエルピスの周りを取り囲む四人に油断など少しも見受けられない。
故に亜人達は先程までの無謀な突撃を辞め四人の周りを取り囲む。
改めて口にしよう。この世界においては量など気休めでしか無く、ならばこの亜人達の判断はまともな判断だと。
「ほら喧嘩しないでよ。まあでもちょうどいいや。ちょっと時間稼いでくれる? 魔法戦闘もこれ以上は必要ないだろうし、形態を変えるよ」
「そういう事ですか了解しました」
しかも付け加えるのなら緑鬼種は先ほどから数度族長級の者をエルピスの手によって殺され、指揮系統すら麻痺して居た。
そんな状況下で誰があの化け物どもに攻めるのかと周りを伺い続ける彼らに対して、半人半龍の形態変化の危険性を知っている森霊種は大声で叫ぶ。
「――不味いッ!! 性濁豚、亜人達!! 死ぬ気で行きなさい!!」
「お前ら全員突撃だ!! なんとしても彼奴を龍化させるんじゃねぇ!!」
「主の見せ所だ。それを俺がみすみす通すわけがないだろう!!」
半人半龍の全力を知っている二人は、心からの嫌悪感と恐怖感を抱きながらそう叫ぶが時間は残念ながら圧倒的に足りえていない。
上位者の声かけに無意識のうちに飛び出した幾百、そして周辺に転がる幾千の亜人種の死体すらチリに変えて、この世界で最強の亜人種がその力を全て解放する。
龍種が人間に変質し龍人になった場合、身体の機能全てが人間の物へと作り変わる。
それはつまりただの弱体化である、龍という強大な力を無理やり人の形へ押し込めているに他ならない。
だが半人半龍であるエルピスは違った。
人間の身体はそのままに、背中からは髪の色と同じ夜空の闇を写したかの様な綺麗な黒色の翼が現れ、身体は対魔・対物理性能を持つ全亜人種の中で最硬と呼ばれる鱗で覆われて居た。
美しさの中に圧倒的な恐怖をを内包したその姿は、その場にいる全ての生命体が息を止めてしまうほどの威圧感を覚える。
だがその姿すらも成長段階の途中だ、赤と黒の魔力の風がエルピスを中心に吹き荒れたかと思うと、翼はより強靭に鱗はより強固に、そして強さの極地、この世界を統べる覇者たちの姿である龍神になっていく。
「黒翼……しかも完全な龍種のそれ」
「さあさあ亜人達! 見れるぞついにその力が!! この世で最も強い両親から生まれた御子の力が!!」
まるで酒に酔ったかのようなフィトゥスの言動の原因は、エルピスの神化によってあふれ出た魔力に充てられたことによる魔力酔いである。
龍神の側面が強く出たことによって多少は魔法操作がおぼつかなくなっているとはいえ、魔神の権能をもってしても制御できないほどの魔力は文字通りの無限であった。
そんな無限の魔力を身体強化に流用し、鍛冶神の能力を使用して作った剣を振ればどうなるか。
神の剣を受けて生存を可能とする生物などこの世に存在しないというのがその問いの答えである。
「全員避けろおおォォ!!!」
「性濁豚一体何を言っておるーーッなんだこれは!?」
「馬鹿デブ!! 技術を持った 半人半龍の剣撃威力を舐めたら死ぬわよ!!」
龍の力を持ってして人間の技術を使い、更に武具製作に優れる土精霊すら比較にならない程の武器を身につけて、獣人種をも凌駕する肉体強化術を使用しての一撃は、正に一振りで戦況を変える事のできる物だった。
「被害報告!」
「緑鬼種はほぼ全滅! 他種ももう多くは……」
性濁豚の警戒を聞き周辺の亜人種は即刻回避行動をとったが、それでもかなりの数の犠牲者が出る。
正に亜人種の頂点に立つに相応しいその一撃の破壊力は、その場にいた亜人種達を恐怖に陥れる。
そんな恐怖を乗り越えている筈の歴戦の戦士達ですら恐怖する様な行動をした当の本人であるエルピスも、周りを見渡しながらまずいなと小さく舌打ちをする
(裏に貼ってる奴らが出てくるまで使うつもりは無かったんだけど……これで出てこないならそれでもいいか)
矢を射られようともその箇所を気にする様子すら無く、魔法を撃たれ目の前で味方が死のうものなら、その死体を踏みしめて突撃してくる亜人達。
人間としか戦った事のないエルピスから見れば、正にそれは異形の集団であり、生物としても異質なもの達だった。
父ならば今自分の眼前にいる者達にも慈悲を向けるのだろうかと――そうふと思ったエルピスの耳元をすり抜ける様にして銃弾が飛来し、いつのまにか目の前まで寄ってきて射た敵の額を撃ち抜く。
〔あんたが余所見なんて珍しいわね。いまエラ達がそっちに向かったから、もう少し気張りなさい!!〕
「すまないアウローラ、助かった」
〔礼なんか良いわよ。それよりーー敵の親玉の位置が不明よ。気をつけなさい〕
脳内に鳴り響く激励を心の中でどこか期待していた自分を自嘲気味に笑いながら、エルピスは忠告を受け更に警戒を一段階上昇させる。
全体的に見れば人間が優勢に立てているこの状況ーーだが近衛兵やエラ達、そしてアルヘオ家直属の召使い達が居なくなれば瞬時に戦況は覆り、一瞬にして敵は王国を蹂躙するだろう。
そうすればあの村で起きていたことが王国全土、下手をすれば近隣諸国すべてで起きる。
それこそ世界の終わりだ、たとえ大地は焦土と化していまいとも安寧の地がどこにもなくなってしまったのならば、人という種は終わりを迎えたといっていいだろう。
だからこそ警戒心は持っておいて損はない。
まだ1万は残っているだろうという亜人達、それらを丁寧に殲滅するために端から削っていったエルピスの方に向かって敵を蹴散らしながらやってくる味方の姿が見えた。
「――ふぅ、ようやく辿り着けたよ…エルピスが助けながら来てっていうから時間がかかって仕方ない。戦場は敵が多くて少しの移動も戦闘が付き回っていやだね」
「戦争とはそう言う物よ。ニル、あそこ居る獣人種を倒しておいて貰える? 私はあの精霊もどきを張り倒してくるわ、エル問題は無いわよね?」
「そこら辺はエラに任せる、フィトゥスは少し周りの状況を見ててくれ――っと、会話くらいさせてくれよっ!」
「俺行ってきますけど気を付けてくださいね!」
予想よりも三分ほど早かった味方の到着に感謝しながら止まることなく襲い掛かる亜人を切り倒す。
完全にじり貧、はっきりと口にすればもはや死を待つのみの亜人達だが、何故かその顔は笑顔に染まって居た。
まるで罠に捕まった獲物を見つけたかの如く笑うその顔に不信感を覚えたエルピスは、その場から離れようと地面を踏みしめる。
「全員回避――って俺だけか逃げ遅れてたの」
だがその瞬間に足元から這い伝わってくるドロっとした感触に、言われようの無い嫌悪感を感じてエルピスは転移魔法でその場から離れた。
その瞬間に地面に居た性濁豚含む魔力に耐性の低い者達全てが、その身体を地面へと投げ打つ。
身体を麻痺させられたかの様にピクピクと動かす数人の兵士を見て、幾人かの亜人達は肝心のエルピスは捕まえられなかったものの他の者を拘束できた喜びに顔を歪ませている。
魔法というよりは呪術に近いそれ、魔神の権能ではなく邪神の権能が反応したのはそういったことだ。
「これも避けるんだァ、まったくおとりも出来ないなんて、性濁豚も使えないわね」
「森霊種の癖に窟暗種の真似をするお前達よりは、随分と使えるさ」
「好きな事を言いなさい。私の誇りなど彼の方に使える為には不要。ならばそのお姿を拝見出来る幸せを噛み締めながら、誇りを踏みにじってでも彼の方に勝利を捧げましょう」
大っぴらな動作でまるで役者の様な仕草を見せる森霊種の姿は、正に熱狂な信者と言う言葉が相応しい。
だからこそエルピスは森霊を見やるのではなく、もっと別の――他の何かを探して〈神域〉を極限まで突き詰める。
神の域は突き詰めれば未来の気配すらも感じ取ることができる。確実に数瞬先に現れるであろう何か、今のエルピスの力を知っていながらもそれでも勝算があると思ってここに来るそれに向かってエルピスは剣を向けた。
その瞬間剣と剣が合わさる事で甲高い音が辺りに響き渡り、そして黒髪の男が姿を現わす。
「ーーさっきから見て居たが、本当に危機に対する感が鋭いな。昔の同郷にお前みたいなのが居たよ。最高に目障りだった」
その顔を見ても驚きはない。
かつての同級生、かつての敵、そしていまもまたこの世界で敵として己の目の前に立つ雄二を見てもエルピスに驚きはなかった。
ただそうであろうと思っていたことが、そうであってほしくないと考えていなかったことがそうであっただけだ。
「目障り? それはこっちが言いたいな。人間の癖に亜人種達を先導し人類に対して牙を剥くその行為。王国に住む人間として許せるものじゃない」
「――許す? ハァ? 何言ってんだ? 別に良いんだよ、俺が楽しかったら! お前らカスとの戦闘なんぞ俺の人生に起きるイベントの内の一つ!! つまりはお前らかどれだけ努力を重ね様が何をしようが、無意味なんだよ! カスはカスらしく無駄に足掻け!」
分かりやすく悪役が口にするようなそんな雄二の言葉に対して、エルピスは警戒心をさらに強くしていく。
目の前の男を唯一尊敬していることが一つだけ、たった一つだけであるがあるエルピスからしてみれば雄二の言葉は警戒するのには十分だ。
目の前の男は目的のために必要な事であれば、それが何であれどんなことであれ平気でしてしまう貪欲さがる。
それが何からくるものなのかはエルピスが知りえる所ではないが、その貪欲はおそらく雄二の持つ特殊技能強奪のために向けられていることは想像に難くない。
「無駄に吠えるのは構わないが、ここにはお前を守ってくれる学園長は居ないぞ? 覚悟してかかってくるんだな」
「――遥希からか? それとも……まあいい。ならとっとと戦闘を開始しよう、目的達成がまだ終わって無いんでな」
数多の死体で山を築いておきながらも雄二の目標はぶれていないようである。
改めて神としての力を使用するエルピスに対して、黒髪の男もその力を全て解放し転生者と転移者はその身体を物理法則すら超越する生命体として戦闘を開始する。
お互いに譲れないものがあるのならば、結局最後に物事を決めるのは武力による交渉術だ。
プライドをかけて始まった一騎打ちはどんどんとその熱量を加速させていく。
この戦闘が終わるときこそこの戦争が終わるときであろう。
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※カクヨムでも連載しています

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yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。
しかしそれは神のミスによるものだった。
神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。
そして橘 涼太に提案をする。
『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。
橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。
しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。
さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。
これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
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五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
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もはや文字ですら無かった
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