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あなたのものにして
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苦い顔を隠さず、眉をしかめたまま、士匄は趙武の勃起した陰茎をとり、己の肛門へあてがった。濡れて柔らかくなったそこはたやすく飲み込んでいくと思ったが、なかなかにうまくいかず、手が滑り先が当たってそれる。
「くそ」
やっぱり無理だ、と逃げようとしたが、趙武が
「少しは根性見せてください」
と妙な応援をする。こんなところで何を根性見せろというのか。士匄はバカバカしくなった。
「こ、ここにはきっと入らんのだ」
「昔、散々入れられてほじられて、極まってたのあなたじゃないですか」
士匄の往生際の悪い言葉を、趙武が一刀両断した。そのまま起き上がってきたため、士匄はこの辱めから解放されるのだと安堵し、寝転がろうとした。が、その手を趙武に取られ、制され、跨ったまま顔を覗かれる。
「范叔はずるい。本当はお一人でできちゃうのに、そうやって初々しさでお誘いになる。私のことを童貞くさいとかオボコいと散々おっしゃってましたが、あなたも処女のようなあざとさです。そんなにむずがるなら、手伝います」
すっかりかわいくなくなった後輩が、指で士匄の穴を広げにかかった。浅い場所をかき混ぜられ腰がもどかしく揺れる。そこから両手の指が縁を引っ張った。とろ、と散々入れ込まれていた潤滑剤があふれ落ちた。
士匄は見上げてくる趙武を睨みつけた。趙武といえば、怖じることはなくにっこりと微笑んでいる。相変わらず美しく麗しい顔であったが、粘液が絡みつくようなねばりけもあった。粘性の想いに足を完全にとられていた気持ちを思い出す。絡め取られて動けぬことに幸せがあった。ふ、と息を吐くと熱い。欲情そのものである。
「ん……」
士匄は趙武の興奮を後ろ手で支えながら、ゆっくりと腰を落とした。入り口がついっと引っかかったあと、中にぐりゅん、と先っぽが入った。その動きに合わせて趙武の指が抜け、手が引いていく。ぽす、と寝転んだ音がしたが、士匄はそれどころではない。
ぬるぬるに濡れた中を、肉が分け入っていく。己の体を少しずつ落としながら、圧迫を久々に感じた。十五年以上味わってなかったそれは、体はともかく心に馴染んでいる。趙武の熱さだ、と士匄に陶酔が訪れた。
「っ、あーっ」
最後、声を上げながら一息に腰を落とした。臀部に趙武の腰が触れた。布越しでも熱が伝わっていた。まだ始まってもいないのに、やりきった気分で士匄は前のめりに趙武の胸に両手を置いた。
「は。んん。入った……」
思わず声に出す。腹のうちにある趙武の象徴は苦しいほどであった。趙武も、はあ、と息を吐いて
「ええ、入りました」
と笑み、少し目をつむる。
「ふふ、嬉しい」
「……えぇ。お前はそんなにコレがしたかったのか」
騎乗位で幸せそうに微笑む趙武に、士匄は辟易した。男女であれば、女が支配的な体位であるが、受け身なものにさせれば羞恥を誘い身もだえる姿を見ることもできる。趙武が士匄にどちらを望んでいたのかわからぬが、こだわりすぎだろう、と呆れた。
「もちろんですとも」
趙武が、うっとりした顔をする。四十路前の練れた部分と、初恋の夢中さが混ざっていた。
「あなたを組み敷いて抱いてると、これは私のものだという想いで幸せでした。あなたも私に身を委ねてくださった。体だけでなく、魂も心も私に委ねるお約束もしてくれた」
趙武が手を伸ばし、士匄の手を取った。
「でもこうやって、あなた自らが私を求めて体のうちに入れてくれると、私はあなたのものなのだと嬉しく思う。あなただって、私を自分のものだとおもったから、こうやって来られたのでしょう」
は、と興奮と陶酔の息をつき、趙武が濡れたような瞳で士匄を見上げてくる。そこには、深い水底に沈んでいた恋情が確かに浮かび上がっていた。
趙武の指が、士匄の指と指の間をさすり、愛撫する。その仕草は、若い頃にはなかった。
「ねえ范叔。私をあなたのものにしてください。ええ、もうままごと以下の戯れと思っていいです。……私はあなたのものになりたかった、あなたのものにして」
はにかむあざとさは過去を愛でる男の顔だろう。陶酔の瞳と桃のように染まった頬は初恋に浮かれる若者のものだった。士匄は過去にすがりに来たのか、昔に捕まりに来たのか、青年の熱さに戻ったのか、わからないまま、誘われるように腰を動かし始めた。
中を開くように何度も腰を上げては落とす。そのたびに中が痺れ、奥が疼く。我慢できなく、奥までつっこむと脳天に響く悦楽で、
「あっ、ぁあ……っ」
と身を縮こませて呻いた。全然、達してはいないが、気持ちよくて腿が震え、動くのも辛い。
趙武は何も言わないが、目が促してくる。早く気持ちよくして。そうもとれるし、早く乱れて、ともとれる。たくさん食べて、かもしれない。
士匄はこの年で、などと考える余裕なく再び腰を上げて落とす。そのうち、浅さを越えたところが良すぎて、そこに当たるように腰を振った。
「はひ、きもちいい、きもち、いい、あ、うっ」
半勃ちの性器からどろりと精が流れ出た。内側からの射精に士匄の内側が波打つ。趙武が狙ったのか思わずなのか、下から突き上げた。
「ひゃ、あっ、それっ、あっ、だ、め」
「やっぱり、出したあとの范叔の中、好き。きもち、いい」
突き上げと自重で串刺しになり、カクカクと体を震わす士匄を熱っぽく見ながら、趙武が劣情にまみれた声で言う。そこからせかすように揺さぶられ、士匄は腰を必死に振った。ゆっくりとした動き以上ができず、己で己を焦らすような追い詰め方をしていた。奥に当たれば、一旦止まり、こすりつけるように尻を揺らした。
「や、むり、あっ、むりこれっ」
趙武の胸に手を置き、半ば崩れかけて士匄は叫んだ。かつての趙武であれば苦笑して、仕方ないですね、と許してくれたであろう。しかし、年を経た趙武は続きを促す。
「士氏の当主とあろうかたが、淫奔を求めて男に跨り陽物を自らくわえこんだというのに、早々に諦めるなんて、みっともない。さ、お励みを」
へたりこむ士匄に趙武が柔らかく諭した。言外に、すがってグチャグチャにしてほしかったのだろう、と言っている。士匄はもちろんわかっている。自暴自棄につきあっているのは趙武であった。
「あー、あ」
士匄はもう、とにかく何も考えずに腰を動かすことにした。次第に、抜き差しの感覚が狭まり、早くなり、奥に趙武の亀頭をぶつけてすりつける動きが多くなる。とうとう、趙武の胸に手を置いて腰を前後に動かし、奥をグリグリと押し付けながら、中をわずかにこすり続け始めた。腹の奥にある疼きが弾けては生まれ、士匄は口を半開きにして喘ぎ、時には首を横に振って何かを散らそうとした。
「はひっ、あひ、あっ、きもち、いいっ、これ、きもち、いい、趙孟の、熱いぃ、あ、あっ」
趙武が士匄の手の甲をなぞり、指や指股をいやらしくつつくと、士匄は一瞬歯を食いしばって、ひ、い、と我慢もせずに感じ入る。
「范叔かわいい。ふふ、卿のあなたはかっこいいのに、私の范叔はかわいい」
うっとりとかけられた声が聞こえるのに、何が何やらわからない。士匄は中を貪ろうと必死に腰を動かす。むり、もっと、きもちいい、むり。ぶつぶつと呟いては、喘いだ。尻の動きは淫靡で快楽を無我夢中で追いかけている。
「あーっ、きもちいいっ、いいっ、あっ、あっ、も、いく、いくっ、むり、いく、」
士匄は前のめりになりながら器用にのけぞり、自分で達した。泣きながら、もう無理、と言い、いった、いったから、と懇願し、きもちいい、と喜びながら、震え、腰をぐちゃぐちゃと無秩序に動かしていく。
「あっ、むりっ、とま、止まらな……っ、いく、またぁっ」
「私もっ、気持ちいい、范叔の中、いいです」
狂ったように腰を振り悶え叫ぶ士匄に、趙武が熱に浮かされた顔でゆるく笑う。そして、両手を取り、指を絡めて結んだ。
「好き。范叔、ずっと好きです。中に出すから、出す、っので、孕んで……、っ」
「わ、私も、好き、好きっ、趙孟っ、あっ、中っ、孕む、あー」
趙武の戯言ごと中に精を放たれ、士匄はわけがわからないまま、言葉を繰り返し、重くて粘っこい恋情を受け入れた。趙武の孕めという言葉に応じるように、出された精液ごと腰を揺らして奥にすりつけ、余韻どころか興奮し、
「趙孟、ここ。ここに、あは、は、あっ」
とふにゃふにゃの声で呟いた。恥辱と快感と掘り返した恋情で士匄の頭もふにゃふにゃだった。
「くそ」
やっぱり無理だ、と逃げようとしたが、趙武が
「少しは根性見せてください」
と妙な応援をする。こんなところで何を根性見せろというのか。士匄はバカバカしくなった。
「こ、ここにはきっと入らんのだ」
「昔、散々入れられてほじられて、極まってたのあなたじゃないですか」
士匄の往生際の悪い言葉を、趙武が一刀両断した。そのまま起き上がってきたため、士匄はこの辱めから解放されるのだと安堵し、寝転がろうとした。が、その手を趙武に取られ、制され、跨ったまま顔を覗かれる。
「范叔はずるい。本当はお一人でできちゃうのに、そうやって初々しさでお誘いになる。私のことを童貞くさいとかオボコいと散々おっしゃってましたが、あなたも処女のようなあざとさです。そんなにむずがるなら、手伝います」
すっかりかわいくなくなった後輩が、指で士匄の穴を広げにかかった。浅い場所をかき混ぜられ腰がもどかしく揺れる。そこから両手の指が縁を引っ張った。とろ、と散々入れ込まれていた潤滑剤があふれ落ちた。
士匄は見上げてくる趙武を睨みつけた。趙武といえば、怖じることはなくにっこりと微笑んでいる。相変わらず美しく麗しい顔であったが、粘液が絡みつくようなねばりけもあった。粘性の想いに足を完全にとられていた気持ちを思い出す。絡め取られて動けぬことに幸せがあった。ふ、と息を吐くと熱い。欲情そのものである。
「ん……」
士匄は趙武の興奮を後ろ手で支えながら、ゆっくりと腰を落とした。入り口がついっと引っかかったあと、中にぐりゅん、と先っぽが入った。その動きに合わせて趙武の指が抜け、手が引いていく。ぽす、と寝転んだ音がしたが、士匄はそれどころではない。
ぬるぬるに濡れた中を、肉が分け入っていく。己の体を少しずつ落としながら、圧迫を久々に感じた。十五年以上味わってなかったそれは、体はともかく心に馴染んでいる。趙武の熱さだ、と士匄に陶酔が訪れた。
「っ、あーっ」
最後、声を上げながら一息に腰を落とした。臀部に趙武の腰が触れた。布越しでも熱が伝わっていた。まだ始まってもいないのに、やりきった気分で士匄は前のめりに趙武の胸に両手を置いた。
「は。んん。入った……」
思わず声に出す。腹のうちにある趙武の象徴は苦しいほどであった。趙武も、はあ、と息を吐いて
「ええ、入りました」
と笑み、少し目をつむる。
「ふふ、嬉しい」
「……えぇ。お前はそんなにコレがしたかったのか」
騎乗位で幸せそうに微笑む趙武に、士匄は辟易した。男女であれば、女が支配的な体位であるが、受け身なものにさせれば羞恥を誘い身もだえる姿を見ることもできる。趙武が士匄にどちらを望んでいたのかわからぬが、こだわりすぎだろう、と呆れた。
「もちろんですとも」
趙武が、うっとりした顔をする。四十路前の練れた部分と、初恋の夢中さが混ざっていた。
「あなたを組み敷いて抱いてると、これは私のものだという想いで幸せでした。あなたも私に身を委ねてくださった。体だけでなく、魂も心も私に委ねるお約束もしてくれた」
趙武が手を伸ばし、士匄の手を取った。
「でもこうやって、あなた自らが私を求めて体のうちに入れてくれると、私はあなたのものなのだと嬉しく思う。あなただって、私を自分のものだとおもったから、こうやって来られたのでしょう」
は、と興奮と陶酔の息をつき、趙武が濡れたような瞳で士匄を見上げてくる。そこには、深い水底に沈んでいた恋情が確かに浮かび上がっていた。
趙武の指が、士匄の指と指の間をさすり、愛撫する。その仕草は、若い頃にはなかった。
「ねえ范叔。私をあなたのものにしてください。ええ、もうままごと以下の戯れと思っていいです。……私はあなたのものになりたかった、あなたのものにして」
はにかむあざとさは過去を愛でる男の顔だろう。陶酔の瞳と桃のように染まった頬は初恋に浮かれる若者のものだった。士匄は過去にすがりに来たのか、昔に捕まりに来たのか、青年の熱さに戻ったのか、わからないまま、誘われるように腰を動かし始めた。
中を開くように何度も腰を上げては落とす。そのたびに中が痺れ、奥が疼く。我慢できなく、奥までつっこむと脳天に響く悦楽で、
「あっ、ぁあ……っ」
と身を縮こませて呻いた。全然、達してはいないが、気持ちよくて腿が震え、動くのも辛い。
趙武は何も言わないが、目が促してくる。早く気持ちよくして。そうもとれるし、早く乱れて、ともとれる。たくさん食べて、かもしれない。
士匄はこの年で、などと考える余裕なく再び腰を上げて落とす。そのうち、浅さを越えたところが良すぎて、そこに当たるように腰を振った。
「はひ、きもちいい、きもち、いい、あ、うっ」
半勃ちの性器からどろりと精が流れ出た。内側からの射精に士匄の内側が波打つ。趙武が狙ったのか思わずなのか、下から突き上げた。
「ひゃ、あっ、それっ、あっ、だ、め」
「やっぱり、出したあとの范叔の中、好き。きもち、いい」
突き上げと自重で串刺しになり、カクカクと体を震わす士匄を熱っぽく見ながら、趙武が劣情にまみれた声で言う。そこからせかすように揺さぶられ、士匄は腰を必死に振った。ゆっくりとした動き以上ができず、己で己を焦らすような追い詰め方をしていた。奥に当たれば、一旦止まり、こすりつけるように尻を揺らした。
「や、むり、あっ、むりこれっ」
趙武の胸に手を置き、半ば崩れかけて士匄は叫んだ。かつての趙武であれば苦笑して、仕方ないですね、と許してくれたであろう。しかし、年を経た趙武は続きを促す。
「士氏の当主とあろうかたが、淫奔を求めて男に跨り陽物を自らくわえこんだというのに、早々に諦めるなんて、みっともない。さ、お励みを」
へたりこむ士匄に趙武が柔らかく諭した。言外に、すがってグチャグチャにしてほしかったのだろう、と言っている。士匄はもちろんわかっている。自暴自棄につきあっているのは趙武であった。
「あー、あ」
士匄はもう、とにかく何も考えずに腰を動かすことにした。次第に、抜き差しの感覚が狭まり、早くなり、奥に趙武の亀頭をぶつけてすりつける動きが多くなる。とうとう、趙武の胸に手を置いて腰を前後に動かし、奥をグリグリと押し付けながら、中をわずかにこすり続け始めた。腹の奥にある疼きが弾けては生まれ、士匄は口を半開きにして喘ぎ、時には首を横に振って何かを散らそうとした。
「はひっ、あひ、あっ、きもち、いいっ、これ、きもち、いい、趙孟の、熱いぃ、あ、あっ」
趙武が士匄の手の甲をなぞり、指や指股をいやらしくつつくと、士匄は一瞬歯を食いしばって、ひ、い、と我慢もせずに感じ入る。
「范叔かわいい。ふふ、卿のあなたはかっこいいのに、私の范叔はかわいい」
うっとりとかけられた声が聞こえるのに、何が何やらわからない。士匄は中を貪ろうと必死に腰を動かす。むり、もっと、きもちいい、むり。ぶつぶつと呟いては、喘いだ。尻の動きは淫靡で快楽を無我夢中で追いかけている。
「あーっ、きもちいいっ、いいっ、あっ、あっ、も、いく、いくっ、むり、いく、」
士匄は前のめりになりながら器用にのけぞり、自分で達した。泣きながら、もう無理、と言い、いった、いったから、と懇願し、きもちいい、と喜びながら、震え、腰をぐちゃぐちゃと無秩序に動かしていく。
「あっ、むりっ、とま、止まらな……っ、いく、またぁっ」
「私もっ、気持ちいい、范叔の中、いいです」
狂ったように腰を振り悶え叫ぶ士匄に、趙武が熱に浮かされた顔でゆるく笑う。そして、両手を取り、指を絡めて結んだ。
「好き。范叔、ずっと好きです。中に出すから、出す、っので、孕んで……、っ」
「わ、私も、好き、好きっ、趙孟っ、あっ、中っ、孕む、あー」
趙武の戯言ごと中に精を放たれ、士匄はわけがわからないまま、言葉を繰り返し、重くて粘っこい恋情を受け入れた。趙武の孕めという言葉に応じるように、出された精液ごと腰を揺らして奥にすりつけ、余韻どころか興奮し、
「趙孟、ここ。ここに、あは、は、あっ」
とふにゃふにゃの声で呟いた。恥辱と快感と掘り返した恋情で士匄の頭もふにゃふにゃだった。
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