俺様なイケメン先輩がアナルセックスに嵌まった

はに丸

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あなたの憂いは私の

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 趙武ちょうぶは初恋であり、士匄しかいは今までと趣き違う恋である。浮かれるな、と言うほうが難しいであろう。華やいだ空気をそこら中に振りまきかねない。それが恋情に酔った若者の特権でもある。

 が。この二人、そのあたりはつまらない若者であった。デバガメしがいがないと言うべきか。

 士匄は元々切り替えが早く、欲は深く我も強いが、理の男である。恋に興じる時以外は気持ちをシャットアウトできてしまう。冷静というより、どこまでも強烈に自分本位なのである。これで趙武が尻軽で他者の秋波をかたぱしから受け入れる人間であれば、さすがに情を表し、違う意味で浮ついたであろうが。

 趙武といえば、士匄が他者と話せば不安もある、独占欲もわく。しかし、根性が座っている。この青年は一族の醜聞も育ての親の死を背負っても、節度と根性で涼しい顔を保つよう心がけている。士匄と幼馴染みの距離が近い、と苛立ちながらも、その場では表にあらわさない。

 特に示し合わせておらぬが華やぎを隠しながら恋情を交わし、季節はすっかり春めいた。宮中の桃園は花がすっかりほころび色めいている。季節特有の強風が黄砂を舞い上げていく。

「あなたは欒伯らんぱくと仲が良いのですね、私は幼馴染がおりませんで、いまいちわかりません。大切なのでしょうね」

 二人で摘んだクコの葉を煎じ、飲んでいたときであった。趙武が、クコを一口飲むと、柔らかい笑みを浮かべて髪を揺らした。それまで、心地よくクコを飲んでいた士匄は、一気に表情を落とし、冷たい目を向けわらった。

悋気りんきか。浅ましい」

 約束のクコを飲むのだと喜びやってきて、少々浮かれていた姿はそこになく、侮蔑と嘲笑を隠す気もない。趙武は己の失言に気づいたが、謝る前にしらけた顔を向けてしまった。士匄が、嗜虐を前面に晒し、舌なめずりしているのがわかったからである。

「……だって、あなたはとても魅力的で、かっこよくてかわいいんですもの。恋は不思議です。私は昵懇じっこんの方々が他の人と仲良くしていても不快とは思いませんでしたが、范叔はんしゅくが他の方と仲良くしていると心にマキビシが巻かれたようにちくちくします。浅ましいと自分でも思います」

 口をとがらせ、胸に手を当てながらため息をつく趙武は、憂いを描いた絵画のように美しい。士匄はあてが外れた顔をしたあと、体の力を抜いた。

「お前は……まあ、そのバカ正直さは悪くない」

 毒気を抜かれるとはこのことである。言い訳さえも直球であった。そんなことはないと取り繕うこともなく、好きなんだから仕方ないでしょと開き直ることもない。士匄は手を伸ばし、趙武の頬を指の背で撫でた。

趙孟ちょうもう。お前がわたしを見て喜び、そして憂うのは、心地よい。お前の喜びはわたしの喜びとなり、お前の憂いはわたしの愉しみになる」

 士匄の言葉に趙武が目を丸くする。

「そういうものですか」

「そういうものだ」

 言うと、士匄は趙武の目尻をするりとなぞり離れた。趙武が、いまいちわからぬという顔をして見てくる。どう問うて良いかわからぬ彼は、士匄の袖に手を伸ばして軽く引っ張った。

「……お前には口があるだろう」

「いや。あの。そういうものなんですか?」

 口があっても、考えていることが言葉に直結するとは限らない。趙武の場合、己の恋情を見つけるまでに時間がかかったほどである。新しく生まれる感情も、そして手慣れすぎた士匄の態度も、疑問ばかりであるが、何がわからないのか、わからない。ひたりと、真剣な目を向けられ、士匄はさすがに苦笑した。

「お前がわたしを見て嫉妬を覚え、憂う。わたしの心を疑うでなく、妬心に悶える。その間、お前の心は、わたしで埋まる。わたししか無い。想われるとしてなかなかに、愉しいものだ」

 謳うように答えたあと、

「言わせるな、無粋というものだ」

 と、最後に吐き捨て、士匄はクコを飲み干した。趙武が少し眉をひそめ、首を傾げて口を開く。

「あなたは? あなたの心の中が私でいっぱいになる時は? 私で心が埋まったあなたが見たい。……あなたが、私だけを考え感じ、想い、憂う姿、それさえも幸せそうなあなたが見てみたい」

 袖を強く握りしめ、うっとりとした顔を向けてくる。鬱蒼とした森の奥のような瞳はコールタールのような粘性を帯びていた。底なしの沼に引きずりこまれていくような心地に、士匄は内心、狂喜で震える。

「今、目の前にある」

 その顔を覗き込んで言ってやれば、趙武が、そうなんですか? と不思議そうな顔をした。

 ところで。

 本人たちの態度は、それはもう節度があったと断言して良い、宮中では。しかし、頻繁に会っており、士匄が趙武の邸に行くことも極めて多くなった。

 士匄の幼馴染で、浅慮傲慢かつ発想が俗っぽい欒黶らんえんは、

 あの二人はデキた

 と結論づけた。また、間違っていない。ただ、関係性は逆と勘違いし、

「まさか食うとは! 俺も愛でたかったのに。……いや、融通してもらうか?」

 などと、黍飴きびあめを舐めながら極めて身勝手なことを一人つぶやいていた。

 士匄の父も、不審さに眉をひそめた。士匄は問いただされても、知らぬ存ぜぬ先輩として教導しているで押し通した。が、若者が思うより大人は察しが良い。

「……このようなことを申し上げるのは心苦しい。我が嗣子と趙孟の肌が馴染んでいると私は見た。趙氏の後見を務めておられるあなたに相談と詫びをせねばと馳せ参じたしだい」

 と、士氏の長は愚息が年下の青年に無体を働いたのだと思いこんで、趙武の後見人に頭を下げた。邸にわざわざやってきてくれた上役に、後見人は丁寧に全て説明した。逆、と知って士匄の父は一瞬呆けたが、なんとか己を取り戻した。

「いや、なんというか。我が息子は飽きやすい。趙孟には申し訳ない」

 と、ため息をつき、しかしこれ以上は聞かぬ、知らぬことにする、とした。他人の恋路など、親でも馬に蹴られるというものであった。

 恋に花咲く本人たちの知らぬ間に、親には筒抜けになっていたが、知らねば無いと同じである。少なくとも士匄は、バレているなどつゆほどにも思わなかった。
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