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第壱部-Ⅲ:ぼくのきれいな人たち
27.日向 きれいがいっぱい
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「いるのがいいは、さびしい?」
「ええ、そばにいると嬉しいのにいないと涙がでたり、楽しくなかったり、ご飯がおしくなかったりするのは、寂しい、です。」
「たのしは?」
「楽しいは…そうですね、きれいなものがいっぱいあって、ご飯がおいしくて、嬉しいがいっぱいあることですねえ。」
ゆりねが、笑った。きれい。
ゆりねは、ふわふわ笑う。ふわふわしゃべる。
ぼくは、ゆりねの膝に座って、ゆりねとしゃべるとふわふわする。きれい。
きれいは、「すき」ともいうって、ゆりねが教えてくれた。
ぼくは、ゆりねとおしゃべりするのが、すき。
「さあ、ご飯もしっかり食べてください。」
「うん、」
朝と夜は、しおうと食べるけど、お昼はいつもゆりねと食べる。
昨日はお昼にしおうが来たけど、お昼はゆりね。
そういうきまり、ぼくのすきなきまり。
膝で食べると、いっぱい食べれるって教えてくれたのも、ゆりね。
ゆりねは、ぼくより、ぼくのことをわかる。すごい。
「すごい」、もゆりねが教えてくれた。
ぼくができなかったことをできたとき、いっぱい言う。ゆりねに言われると、ふわふわする。
それは、「うれしい」っていうんだって。
すごい、っていわれてふわふわするのは、「うれしい」。
うれしいがいっぱいあると、「たのしい」。
たのしいも、うれしいもなくて、元気がなくなるのが、「かなしい」。
いるのがいいのに、いなくてかなしいのは、「さびしい」。
「今は、たのしい」
「ええ、唯理音もとても楽しいですよ」
今日もお昼ごはんは、パンに葉っぱと黄色いのと白いのがはさまったやつ。サンドイッチ、っていう。
大きいのにちぎれないから、食べるのが大変。大変は、「むずかしい」って言う。
でも、がんばって食べると、ゆりねが「すごいですね」って、言う。うれしい。
うれしいから、むずかしいけどサンドイッチはすき。きれい。
ゆりねに、「すごいですね」「じょうずになりましたね」って言われるのが、ぼくはすき。きれい。
ぼくは「きれい」がいっぱい増えた。
ゆりねのおしゃべり、みずちのおそうじ、そらのうた、うつぎのおていれ、おぐりのしんさつ、とやのまほう、すみれこさまのおやつ、しおうのごはん、ホーホーの声。ぴーぴーもいる。
はるみはあんまりお部屋には来ないけど、何だかいつもそばにいるかんじがするのが、きれい。
みんなのお洋服もきれい。髪の毛もきれい。やさしくなでてくれるのもきれい。ぼくがびっくりしないように、いろんなことを考えてくれるのも、きれい。
言葉をたくさんおしえてもらった。それもきれい。
きれいがいっぱいあるって、教えてくれた。それもきれい。
「きれいがね、いっぱいあって、うれしいは、なんていったらいい?」
「きれいがいっぱいですか」
「うん、」
ゆりねは、待ってくれる。これもきれい。
「きれいがね、いっぱいあるの。朝おきたら、ぴーぴーの声がして、みんながおはようっていう。そしたら、ぼくがおはようっていう。きれい。ごはんのときね、しおうが赤いやつたべてくれるの、きれい。みずちとね、おそうじするの。そらがうたって、ぼくもうたうの。とってもきれい。うつぎがね、ぼくのかみをさらさらにしてくれるの、きれいなの。さっき、おぐりは、おおきくなりましたよっていった。とってもきれいだった。それから」
うん、うんって聞いてくれる。これもきれい。
全部伝えたくて、いっぱいしゃべった。
ぼくはゆりねみたいにたくさんは言葉を知らないから、伝えるのがむずかしいけど、ゆりねはいつも全部聞いてくれる。
「きれいがいっぱい、ずっときれい。夜、ねるとき、きれいでいっぱいになるの。今日はずっときれいだった、って。」
「きれいがいっぱいで、嬉しいですか?」
「うん、うれしいがいっぱいなのもきれい。」
「じゃあ、それは幸せですね」
「しあわせ、」
「そうですよ。幸せです。」
ゆりねの目がうるうるする。きっと涙がでる。
「ゆりねは、今かなしい?」
「いいえ、とても幸せです。」
「しあわせも泣くの?」
「泣く理由はたくさんありますよ。悲しくても、さびしくても、嬉しくても、楽しくても、涙が出ることがあります。今は、日向様が幸せなのが嬉しくて幸せで、涙が出るんですよ。」
「ぼくはしあわせ。」
「はい、」
「ぼくがしあわせは、ゆりねのうれしい」
「はい、」
「ゆりねがうれしいっていったら、もっときれいになった。これはしあわせ?」
「ええ、幸せです。」
「わかった」
ゆりねが、たくさん頭をなでてくれた。
ご飯も食べてくださいね、って泣きながら言った。これはうれしいときの涙。
ゆりねがうれしい、って教えてくれてから、ご飯がもっとおいしくなった。
そうか、きれいがいっぱいだと、もっと増えるんだ。
それが、しあわせ。
ぼくは、しあわせ。
これは、しあわせ。
とてもいい。
「ええ、そばにいると嬉しいのにいないと涙がでたり、楽しくなかったり、ご飯がおしくなかったりするのは、寂しい、です。」
「たのしは?」
「楽しいは…そうですね、きれいなものがいっぱいあって、ご飯がおいしくて、嬉しいがいっぱいあることですねえ。」
ゆりねが、笑った。きれい。
ゆりねは、ふわふわ笑う。ふわふわしゃべる。
ぼくは、ゆりねの膝に座って、ゆりねとしゃべるとふわふわする。きれい。
きれいは、「すき」ともいうって、ゆりねが教えてくれた。
ぼくは、ゆりねとおしゃべりするのが、すき。
「さあ、ご飯もしっかり食べてください。」
「うん、」
朝と夜は、しおうと食べるけど、お昼はいつもゆりねと食べる。
昨日はお昼にしおうが来たけど、お昼はゆりね。
そういうきまり、ぼくのすきなきまり。
膝で食べると、いっぱい食べれるって教えてくれたのも、ゆりね。
ゆりねは、ぼくより、ぼくのことをわかる。すごい。
「すごい」、もゆりねが教えてくれた。
ぼくができなかったことをできたとき、いっぱい言う。ゆりねに言われると、ふわふわする。
それは、「うれしい」っていうんだって。
すごい、っていわれてふわふわするのは、「うれしい」。
うれしいがいっぱいあると、「たのしい」。
たのしいも、うれしいもなくて、元気がなくなるのが、「かなしい」。
いるのがいいのに、いなくてかなしいのは、「さびしい」。
「今は、たのしい」
「ええ、唯理音もとても楽しいですよ」
今日もお昼ごはんは、パンに葉っぱと黄色いのと白いのがはさまったやつ。サンドイッチ、っていう。
大きいのにちぎれないから、食べるのが大変。大変は、「むずかしい」って言う。
でも、がんばって食べると、ゆりねが「すごいですね」って、言う。うれしい。
うれしいから、むずかしいけどサンドイッチはすき。きれい。
ゆりねに、「すごいですね」「じょうずになりましたね」って言われるのが、ぼくはすき。きれい。
ぼくは「きれい」がいっぱい増えた。
ゆりねのおしゃべり、みずちのおそうじ、そらのうた、うつぎのおていれ、おぐりのしんさつ、とやのまほう、すみれこさまのおやつ、しおうのごはん、ホーホーの声。ぴーぴーもいる。
はるみはあんまりお部屋には来ないけど、何だかいつもそばにいるかんじがするのが、きれい。
みんなのお洋服もきれい。髪の毛もきれい。やさしくなでてくれるのもきれい。ぼくがびっくりしないように、いろんなことを考えてくれるのも、きれい。
言葉をたくさんおしえてもらった。それもきれい。
きれいがいっぱいあるって、教えてくれた。それもきれい。
「きれいがね、いっぱいあって、うれしいは、なんていったらいい?」
「きれいがいっぱいですか」
「うん、」
ゆりねは、待ってくれる。これもきれい。
「きれいがね、いっぱいあるの。朝おきたら、ぴーぴーの声がして、みんながおはようっていう。そしたら、ぼくがおはようっていう。きれい。ごはんのときね、しおうが赤いやつたべてくれるの、きれい。みずちとね、おそうじするの。そらがうたって、ぼくもうたうの。とってもきれい。うつぎがね、ぼくのかみをさらさらにしてくれるの、きれいなの。さっき、おぐりは、おおきくなりましたよっていった。とってもきれいだった。それから」
うん、うんって聞いてくれる。これもきれい。
全部伝えたくて、いっぱいしゃべった。
ぼくはゆりねみたいにたくさんは言葉を知らないから、伝えるのがむずかしいけど、ゆりねはいつも全部聞いてくれる。
「きれいがいっぱい、ずっときれい。夜、ねるとき、きれいでいっぱいになるの。今日はずっときれいだった、って。」
「きれいがいっぱいで、嬉しいですか?」
「うん、うれしいがいっぱいなのもきれい。」
「じゃあ、それは幸せですね」
「しあわせ、」
「そうですよ。幸せです。」
ゆりねの目がうるうるする。きっと涙がでる。
「ゆりねは、今かなしい?」
「いいえ、とても幸せです。」
「しあわせも泣くの?」
「泣く理由はたくさんありますよ。悲しくても、さびしくても、嬉しくても、楽しくても、涙が出ることがあります。今は、日向様が幸せなのが嬉しくて幸せで、涙が出るんですよ。」
「ぼくはしあわせ。」
「はい、」
「ぼくがしあわせは、ゆりねのうれしい」
「はい、」
「ゆりねがうれしいっていったら、もっときれいになった。これはしあわせ?」
「ええ、幸せです。」
「わかった」
ゆりねが、たくさん頭をなでてくれた。
ご飯も食べてくださいね、って泣きながら言った。これはうれしいときの涙。
ゆりねがうれしい、って教えてくれてから、ご飯がもっとおいしくなった。
そうか、きれいがいっぱいだと、もっと増えるんだ。
それが、しあわせ。
ぼくは、しあわせ。
これは、しあわせ。
とてもいい。
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