上 下
19 / 29

採取

しおりを挟む
 レシピを教えるのと同時に昼食を済ませた俺はトーアルさんと別れ再び冒険者ギルドへと向かった。これからのことを考えると他の仕事もやっておきたいと思ったからだ。

 掲示板を眺め今日やった運搬以外の仕事で出来ることを探す。討伐、護衛などの魔物との戦闘が必須になるもの以外でとなると、配達、掃除、採取、納品、子守? というのが目に入る。配達は運搬とあまり変わらないから無しとして、掃除ははっきり言ってやらなくていいならやりたくない。自分の部屋をやるだけで精いっぱいだ。で採取はそもそも採取対象のものが俺にわかるかどうかが問題なんだよな。草とか実とか枝とか? で、納品は規定緒数のものをどこかから集めてきて渡すもの。採取と違って自分で直接現場で集める必要がない。そして子守か…これって相手次第だよな? 対応がわかりやすい相手ならいいけど、何考えてんのか全くわからん相手だと苦労しそう。子供が好きじゃないとやれない。

 とりあえず今日は宿はあるしお試しということで採取やってみるか。一つだけ気になるのはそれが町の外だと言うことだろうか。魔物とか出たらおとりを出そう。

「すみません。これ受けたいんですが」
「はい、カノ草の採取ですね。こちらは10束で依頼1回分となり、回数制限がありません。端数に報酬は出ますが依頼としては切り捨てられますがよろしいですか?」
「ああ。ところでカノ草ってどんな草なんだ?」
「それでしたらあちらの資料室で閲覧をどうぞ」

 カウンターのお姉さんが左側の扉を指していた。どうやらそこが資料室らしい。依頼を受けてから俺は資料室に向かってカノ草を調べてみる。室内には種類別に本が並んでいて、カノ草は薬草のカテゴリー。本を手に取り色んな植物が乗っている中からカノ草を探すだす。というか一番最初のページにあった。もしかすると需要の高い草なのかもしれん。使い道は知らないが。

 カノ草の特徴を何かに書き出そうとしたところで俺は気がついた。召喚魔法の項目の中に従業員もいるのは以前も確認したのだが、よく見るとその中に俺もいるんだ…なんだこれ。それと休憩室には個人の私物ももちろん置かれていて、さらにいろんなものがあることに気がつく。休憩ということもあり、スマホを見ている人や本を読んでいる人、お菓子を食べている人もいれば化粧を直している人もいる。

「これってこれらも召喚対象なのか?」

 それは試してみればわかることだ。俺は召喚魔法を使用し、一つのものを呼び出してみた。俺が呼び出したのは自分が手にしていたスマホだ。それはちゃんと今俺の手元に取り出されていた。

「…でたな」

 クルクルと回して見た目はそのままなことがすぐにわかる。電源を入れて見るとついた。まあ…そりゃそうか、圏外。電波なんてとどくはずがない。まあそれは仕方がないのでいいとして、俺が使いたかったのはカメラ機能だ。これでパチリとカノ草のページを写真に収めれば…

「よし!」

 手書きの絵と植物の特徴が書かれたページがこれでいつでも見られるようになった。ついでだからと他のページもどんどん写真に収めた。その作業も面倒なので今見てた本だけ全ページ納めると俺は本を棚に戻しカノ草を探しに町の北から外へと出るのだった。

 今回採取することにしたカノ草は他の所にもまばらにあるらしいけど、この町の周辺では北側が一番多い。それはなぜなのか。北に出ると少し先に森が見える。まああれだ日陰の方がよく増える草らしいんだ。だから森があるこっち側の方が多く生えている。森に近づけば近づくほどさらに増えるみたいだけど、その分危険もある。町から北へと街道が走り森を迂回するように道が繋がっていて、基本街道沿いには魔物除けが設置されているけどそれ以外の場所にはそれがないということだ。つまり森に近づくと魔物がでてくるということだね。なので俺みたいに魔物と戦うのを避けたい奴は街道沿いか町の近くで探すしかないわけだな。

「んじゃちょっと探して見ますかね」

 スマホでとった写真を見ながらそれっぽいものを探す。見つけるたび特徴を確認してその特徴がないものは無視。合っていると思えるものだけをむしっていく。根がいるのかわからないので丸ごと引っ込むいていくとちょっと手で持っているのがつらくなってきたので、ボールを取り出しその中に採取したカノ草を入れておこう。

「こんなもんか?」

 ボールに山盛りにカノ草だと思われる草を集めた。これだけあれば多少間違っていても問題ないはずだ。少なくても1回、運が良ければ2回3回分の依頼達成になるはずだ。ただちょっと森に近づきすぎてしまったかな…とボールに入ったカノ草を保管庫にしまい、顔をあげると目の前にはもう見上げるような木が見えていた。

「魔物が出てくる前に帰るか」

 俺の言葉と同時にすぐ近くで枝が折れるようなパキッという音が聞こえた。フラグだ! もしかして俺はフラグを立ててそれを回収した!? ゆっくりと音がした方を見るとそこには肌が緑色をした小さな人…いや、どう見てもゲームなどで見たことがあるようなゴブリン。ごくりと自分の喉を鳴らす音が響く。ゲームってもしかしたら異世界にやってきた人が元の世界に帰って実物を元に作ったんじゃないかとかどうでもいいことが頭に浮かんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ
ファンタジー
今から約200年前。 ある一人の男が、この世界に存在する数多の人間を片っ端から大虐殺するという大事件が起こった。 犠牲となった人数は千にも万にも及び、その規模たるや史上最大・空前絶後であることは、誰の目にも明らかだった。 世界中の強者が権力者が、彼を殺そうと一心奮起し、それは壮絶な戦いを生んだ。 彼自身だけでなく国同士の戦争にまで発展したそれは、世界中を死体で埋め尽くすほどの大惨事を引き起こし、血と恐怖に塗れたその惨状は、正に地獄と呼ぶにふさわしい有様だった。 世界は瀕死だったーー。 世界は終わりかけていたーー。 世界は彼を憎んだーー。 まるで『鬼』のように残虐で、 まるで『神』のように強くて、 まるで『鬼神』のような彼に、 人々は恐れることしか出来なかった。 抗わず、悲しんで、諦めて、絶望していた。 世界はもう終わりだと、誰もが思った。 ーー英雄は、そんな時に現れた。 勇気ある5人の戦士は彼と戦い、致命傷を負いながらも、時空間魔法で彼をこの時代から追放することに成功した。 彼は強い憎しみと未練を残したまま、英雄たちの手によって別の次元へと強制送還され、新たな1日を送り始める。 しかしーー送られた先で、彼には記憶がなかった。 彼は一人の女の子に拾われ、自らの復讐心を忘れたまま、政府の管理する学校へと通うことになる。

自由気ままに異世界を放浪しよう

れのひと
ファンタジー
突然異世界に召喚されたらしい。能力を一つ貰ったもちろん召喚魔法だ! これで俺は人生勝ち組…のはずだったんだがなぜか布団しか召喚出来ない。まあ寝れるからいいよね? それに誰かに会えって言われたけどわからないんで、自由にしたいと思います。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

Switch jobs ~転移先で自由気ままな転職生活~

天秤兎
ファンタジー
突然、何故か異世界でチート能力と不老不死を手に入れてしまったアラフォー38歳独身ライフ満喫中だったサラリーマン 主人公 神代 紫(かみしろ ゆかり)。 現実世界と同様、異世界でも仕事をしなければ生きて行けないのは変わりなく、突然身に付いた自分の能力や異世界文化に戸惑いながら自由きままに転職しながら生活する行き当たりばったりの異世界放浪記です。

処理中です...