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レシピ
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台車で荷物を運んで4回目。トーアル商会で荷物をおろしていると見知った人と目があった。
「あ…」
「あ~…」
「…昨日は悪かったな」
「普通に言ってくれればあげたんだけどね」
「そんなことありえるわけがないだろう?」
いや、そんなこと言われても本当なのに。むしろなんで試さずいきなり強硬手段を取ったのかが聞きたいわ。
「おやあなたは昨日の…っ 本当にすみませんでした!!」
雑談しているとトーアルさんが通りがかり息子の頭を押さえつけ再び謝り出した。
「ユニも無事家に帰れたしもういいですよ? こっちも被害という被害はないですし」
「ぜひぜひ何かお詫びをさせていただきたく…ところでそれはうちの荷物ですよね?」
「はい、冒険者ギルドで受けた依頼ですね~」
「さらに仕事まで受けてもらえているだなんてっ」
「まあ仕事しないと宿も泊まれませんからね~」
そう仕事に罪はないのだ。やることさえやればちゃんとお金になる。というか別にトーアルさんを恨んでいたりはしないし。そもそも悪さしたのはその息子だしね。一応反省はしているみたいなのでこれ以上文句を言っても仕方がないのだ。
「宿ですか…そうだっ お詫びにうちの宿舎に泊まりませんか? 寝泊まりのためだけの部屋なので狭いですが。もちろんどこかほかの町へ行くなどありましたらいつでも出ていただいて構いません」
「えーと…いくらです?」
「お代はいりません。期間もお好きなだけ! ただ食事は出ませんので各自になっていますが」
悪くはない話だ。はっきり言って贅沢を言わなければ食事に関しては自分の魔法で何とかなる。問題は住む場所や日々の生活で必要になってくるものの代金。だけどこれを受けてしまうと働かなくてもいいやーとなまけてしまうような気もするんだよね。
「ではありがたく1日だけお願いしていいですか?」
だからこれが正解だと思う。ちゃんとお詫びは貰う。だけど貰いすぎない。
「本当に何日いてもいいんですよ?」
「いえいえそれにはおよびませんよ。働かないとなまけてしまいそうですからね」
「わかりました。気が変わりましたら言ってください。部屋の方は用意しておきますのでまた後で声をかけてくださいね」
「はい」
話のきりが付いたので仕事の続きを終わらせよう。俺は台車を押して港へと戻った。
結局運搬の仕事は6回運んで終わった。最後は3箱だったので2300リラの稼ぎとなる。多いのか少ないのかはよくわからないけど、まだ午後も何か仕事を探したほうがいいかもしれない。
「まずは昼食だよな」
その前に食事を済ませたい。ここはちょっと節約もしたいし、ついでもあるから再びトーアルさんに会った方がいいだろう。トーアル商家に向かって店の中に入ると早速トーアルさんを見つけた。
「あ、いた。トーアルさんっ」
「おや、もう来たのですか? まだちょっと部屋の準備は整っていないのですけども」
「いえ、昨日レシピを教えると言ったやつです。丁度いいので作ってそれで昼食としませんか?」
「…本当に教えていただいてもよろしいのでしょうか」
「昨日も言いましたけど作れる人がいれば自分で作らなくてよくなるので、教えられるものなら覚えてもらいたいですね」
「わかりました。では調理が出来る場所へと移動しましょうか」
俺とトーアルさんはトーアル商会を出て一つの店舗へと入っていった。
「すまないが調理場を一部貸してもらえるかね?」
「はいっ でしたらこっちの見習いが使用している場所でしたらご自由にお使いください」
店の厨房へと行くと何人もの料理人がいて昼時ということもあり忙しそうに動いていた。その厨房の片隅を貸してもらえるみたいだけど…ちょっと一部の人たちからの視線が痛い。まあ俺みたいな見知らぬやつがいるもんだから警戒しているのかもしれないね。さっさと済ませて帰ったほうがよさそうだ。
「さあ、ここでお願いします。えーと…そういえばお名前を聞いていませんでした」
「カイです」
「カイさんですねわかりました」
俺はまず道具を取り出し並べた。どこからともなく取り出すもんだから少しトーアルさんが驚いた顔をしている。質問は後でまとめてにしてもらおう。
「ちょっとそこの」
「…俺っすか?」
「今から彼が作るものの記録を取りなさい」
「はあ…わかりました」
どうやらメモを取る人が横につくらしい。じゃあまずは最初に米を炊くところから…それにしてもメモを取る人近すぎないか? 半分俺にもたれかかるような感じで張り付いているんだが。流石にちょっと動きずらい。
「米を…ん? それはなんだ??」
「あー俺用の専用道具だとでも思って。普通に米をまずたけばいいよ」
そうか道具が同じじゃないからこの辺を説明しないといけないのか。となるとパンケーキはフライパンで焼くタイプじゃないと出来ないな。そういえば味噌とかはあるんだろうか? ユニ父は何も言っていなかったから問題ないと思うんだけどね。
「こんな所かな?」
俺はフライパンで焼いたパンケーキ、ライスボールは具材を考えれば色々出来ること、串カツも串に刺さず皿に乗せたりご飯の上に乗せた食べ方などを教えた。そして味噌とかだしとかは普通にあった。ただ味噌は量産されていないらしくてお高い物らしい。
「あ…」
「あ~…」
「…昨日は悪かったな」
「普通に言ってくれればあげたんだけどね」
「そんなことありえるわけがないだろう?」
いや、そんなこと言われても本当なのに。むしろなんで試さずいきなり強硬手段を取ったのかが聞きたいわ。
「おやあなたは昨日の…っ 本当にすみませんでした!!」
雑談しているとトーアルさんが通りがかり息子の頭を押さえつけ再び謝り出した。
「ユニも無事家に帰れたしもういいですよ? こっちも被害という被害はないですし」
「ぜひぜひ何かお詫びをさせていただきたく…ところでそれはうちの荷物ですよね?」
「はい、冒険者ギルドで受けた依頼ですね~」
「さらに仕事まで受けてもらえているだなんてっ」
「まあ仕事しないと宿も泊まれませんからね~」
そう仕事に罪はないのだ。やることさえやればちゃんとお金になる。というか別にトーアルさんを恨んでいたりはしないし。そもそも悪さしたのはその息子だしね。一応反省はしているみたいなのでこれ以上文句を言っても仕方がないのだ。
「宿ですか…そうだっ お詫びにうちの宿舎に泊まりませんか? 寝泊まりのためだけの部屋なので狭いですが。もちろんどこかほかの町へ行くなどありましたらいつでも出ていただいて構いません」
「えーと…いくらです?」
「お代はいりません。期間もお好きなだけ! ただ食事は出ませんので各自になっていますが」
悪くはない話だ。はっきり言って贅沢を言わなければ食事に関しては自分の魔法で何とかなる。問題は住む場所や日々の生活で必要になってくるものの代金。だけどこれを受けてしまうと働かなくてもいいやーとなまけてしまうような気もするんだよね。
「ではありがたく1日だけお願いしていいですか?」
だからこれが正解だと思う。ちゃんとお詫びは貰う。だけど貰いすぎない。
「本当に何日いてもいいんですよ?」
「いえいえそれにはおよびませんよ。働かないとなまけてしまいそうですからね」
「わかりました。気が変わりましたら言ってください。部屋の方は用意しておきますのでまた後で声をかけてくださいね」
「はい」
話のきりが付いたので仕事の続きを終わらせよう。俺は台車を押して港へと戻った。
結局運搬の仕事は6回運んで終わった。最後は3箱だったので2300リラの稼ぎとなる。多いのか少ないのかはよくわからないけど、まだ午後も何か仕事を探したほうがいいかもしれない。
「まずは昼食だよな」
その前に食事を済ませたい。ここはちょっと節約もしたいし、ついでもあるから再びトーアルさんに会った方がいいだろう。トーアル商家に向かって店の中に入ると早速トーアルさんを見つけた。
「あ、いた。トーアルさんっ」
「おや、もう来たのですか? まだちょっと部屋の準備は整っていないのですけども」
「いえ、昨日レシピを教えると言ったやつです。丁度いいので作ってそれで昼食としませんか?」
「…本当に教えていただいてもよろしいのでしょうか」
「昨日も言いましたけど作れる人がいれば自分で作らなくてよくなるので、教えられるものなら覚えてもらいたいですね」
「わかりました。では調理が出来る場所へと移動しましょうか」
俺とトーアルさんはトーアル商会を出て一つの店舗へと入っていった。
「すまないが調理場を一部貸してもらえるかね?」
「はいっ でしたらこっちの見習いが使用している場所でしたらご自由にお使いください」
店の厨房へと行くと何人もの料理人がいて昼時ということもあり忙しそうに動いていた。その厨房の片隅を貸してもらえるみたいだけど…ちょっと一部の人たちからの視線が痛い。まあ俺みたいな見知らぬやつがいるもんだから警戒しているのかもしれないね。さっさと済ませて帰ったほうがよさそうだ。
「さあ、ここでお願いします。えーと…そういえばお名前を聞いていませんでした」
「カイです」
「カイさんですねわかりました」
俺はまず道具を取り出し並べた。どこからともなく取り出すもんだから少しトーアルさんが驚いた顔をしている。質問は後でまとめてにしてもらおう。
「ちょっとそこの」
「…俺っすか?」
「今から彼が作るものの記録を取りなさい」
「はあ…わかりました」
どうやらメモを取る人が横につくらしい。じゃあまずは最初に米を炊くところから…それにしてもメモを取る人近すぎないか? 半分俺にもたれかかるような感じで張り付いているんだが。流石にちょっと動きずらい。
「米を…ん? それはなんだ??」
「あー俺用の専用道具だとでも思って。普通に米をまずたけばいいよ」
そうか道具が同じじゃないからこの辺を説明しないといけないのか。となるとパンケーキはフライパンで焼くタイプじゃないと出来ないな。そういえば味噌とかはあるんだろうか? ユニ父は何も言っていなかったから問題ないと思うんだけどね。
「こんな所かな?」
俺はフライパンで焼いたパンケーキ、ライスボールは具材を考えれば色々出来ること、串カツも串に刺さず皿に乗せたりご飯の上に乗せた食べ方などを教えた。そして味噌とかだしとかは普通にあった。ただ味噌は量産されていないらしくてお高い物らしい。
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