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第3章
ヨーケバ城跡の悪魔 4
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ターニャに連れられて、アイたちは詰所の奥へと進んで行く。アイたちはいつも入口近くにいるエリサに全部任せているので、建物の奥に行くのは初めてのことになる。
「どこに向かってるんですか?」
アイは前を歩くターニャに声をかけた。
「昇格基準は結構厳しいが、A級以上になれば色々と便利になるんだ。これもそのひとつ」
ターニャは振り返ると、意味深に笑う。
それから喫煙所のような小さな部屋に3人を案内した。5、6人も入れば満室の狭い空間である。床一面に魔法陣が描かれており、部屋の奥にはコンソールのようなものが設置されていた。
「ここは転移部屋だ」
「転移部屋!?」
アイが目を丸くして繰り返す。
ターニャはアイの反応に満足すると、部屋の奥へと進み自分の登録証を制御卓にかざした。すると制御卓に接続されている画面に地図が映し出される。
「各地に同じような部屋があって、選んだ部屋に一瞬で転移するというスグレモノだ」
「へぇーーー!」
アイとおキクとフランは眩しいくらいに瞳を輝かせて、食い入るように制御卓を覗き込んだ。
「この画面には、現在転移可能な場所が表示されてるから、今日は目的地近くのヤータ市を選ぶことにする」
言いながらターニャは、画面のヤータ市にある光るマークに指で触れる。
すると床の魔法陣から光が湧き上がり、アイたちは一瞬の浮遊感に襲われた。それから床の光が、ゆっくりと収まっていく。
「どうだった?」
ターニャが3人に悪戯っぽい笑顔を向けた。
「…え?」
言葉の意味が分からず、3人はポカンとする。
「もう着いたぞ」
「ええっ!?」
アイたちは慌てて、部屋のアチコチに目を向けた。
パッと見は似たような部屋だが、言われてみれば違和感がある。壁の材質も違うような気がする。
「外に出れば一目瞭然だ」
そう言ってターニャが部屋を出たので、アイたちも恐る恐る後に続く。
部屋の外は大きな建物のロビーのようであった。多くの人が忙しそうに行き来している。周りの人たちも、あまりアイたちに興味を示さない。彼らにとっては、慣れた光景ということなのだろう。
「ヤータ市には詰所がないからな、転移部屋はヤータ市長の官邸に間借りしてる」
それを聞いて、アイは走って玄関から勢いよく飛び出した。
確かに先日訪れたヤータ市の街並みである。
「ホントにヤータ市だーーー!」
アイは大声で叫びながら、空に向かって両手をいっぱいに振り上げた。
~~~
ヨーケバ城跡はヤータ市の北東にある。
一級河川であるヨルド河は、ヤータ市の付近で3本の川が合流することによって成り立っている。北から、カツラン川、ウジル川、キーツ川である。
ヨーケバ城跡とは、カツラン川とウジル川の合流点付近にある遺跡であった。
この3本の川はそれほど大きな河ではないので、普通に橋が架かっている。ヨルド河に一本の大橋を架けるより、ここに3本の橋を架ける方が、余程安易で安価だからだ。
以前はこちら側の橋を使って、北側へ進軍する作戦が何度も遂行された。しかしそのことごとくを、ヨーケバ城跡に棲む1体の黒地竜に阻まれた。
それ以来、ヨーケバ城跡には悪魔が棲むとして、このルートが使われることは無くなってしまった。
「黒地竜?」
荷馬車に揺られながらアイが小首を傾げる。
ターニャの提案で、移動手段のために荷馬車を手配することにした。着くころにはお昼になってるだろうから、お弁当も用意する。
今回もフランが御者役になり、その横には前回同様おキクが座った。アイとターニャは荷車の長椅子に隣り合って腰掛けている。
「翼はないが、黒く硬い鱗と厚い皮膚に覆われた巨大な竜だ」
「そんなに強いの?」
「軍隊や多くの冒険者が、ことごとく返り討ちに合っているんだから、多分そーなんだろ?」
それを聞いて「ひぇー」とアイの顔が蒼くなる。
「今までの敗因は、このオレがいなかったのが原因だ。サクッと討伐してやるから心配すんな!」
ターニャは左の手のひらに右拳を打ちつけて、自信満々にニヤッと笑った。
「どこに向かってるんですか?」
アイは前を歩くターニャに声をかけた。
「昇格基準は結構厳しいが、A級以上になれば色々と便利になるんだ。これもそのひとつ」
ターニャは振り返ると、意味深に笑う。
それから喫煙所のような小さな部屋に3人を案内した。5、6人も入れば満室の狭い空間である。床一面に魔法陣が描かれており、部屋の奥にはコンソールのようなものが設置されていた。
「ここは転移部屋だ」
「転移部屋!?」
アイが目を丸くして繰り返す。
ターニャはアイの反応に満足すると、部屋の奥へと進み自分の登録証を制御卓にかざした。すると制御卓に接続されている画面に地図が映し出される。
「各地に同じような部屋があって、選んだ部屋に一瞬で転移するというスグレモノだ」
「へぇーーー!」
アイとおキクとフランは眩しいくらいに瞳を輝かせて、食い入るように制御卓を覗き込んだ。
「この画面には、現在転移可能な場所が表示されてるから、今日は目的地近くのヤータ市を選ぶことにする」
言いながらターニャは、画面のヤータ市にある光るマークに指で触れる。
すると床の魔法陣から光が湧き上がり、アイたちは一瞬の浮遊感に襲われた。それから床の光が、ゆっくりと収まっていく。
「どうだった?」
ターニャが3人に悪戯っぽい笑顔を向けた。
「…え?」
言葉の意味が分からず、3人はポカンとする。
「もう着いたぞ」
「ええっ!?」
アイたちは慌てて、部屋のアチコチに目を向けた。
パッと見は似たような部屋だが、言われてみれば違和感がある。壁の材質も違うような気がする。
「外に出れば一目瞭然だ」
そう言ってターニャが部屋を出たので、アイたちも恐る恐る後に続く。
部屋の外は大きな建物のロビーのようであった。多くの人が忙しそうに行き来している。周りの人たちも、あまりアイたちに興味を示さない。彼らにとっては、慣れた光景ということなのだろう。
「ヤータ市には詰所がないからな、転移部屋はヤータ市長の官邸に間借りしてる」
それを聞いて、アイは走って玄関から勢いよく飛び出した。
確かに先日訪れたヤータ市の街並みである。
「ホントにヤータ市だーーー!」
アイは大声で叫びながら、空に向かって両手をいっぱいに振り上げた。
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ヨーケバ城跡はヤータ市の北東にある。
一級河川であるヨルド河は、ヤータ市の付近で3本の川が合流することによって成り立っている。北から、カツラン川、ウジル川、キーツ川である。
ヨーケバ城跡とは、カツラン川とウジル川の合流点付近にある遺跡であった。
この3本の川はそれほど大きな河ではないので、普通に橋が架かっている。ヨルド河に一本の大橋を架けるより、ここに3本の橋を架ける方が、余程安易で安価だからだ。
以前はこちら側の橋を使って、北側へ進軍する作戦が何度も遂行された。しかしそのことごとくを、ヨーケバ城跡に棲む1体の黒地竜に阻まれた。
それ以来、ヨーケバ城跡には悪魔が棲むとして、このルートが使われることは無くなってしまった。
「黒地竜?」
荷馬車に揺られながらアイが小首を傾げる。
ターニャの提案で、移動手段のために荷馬車を手配することにした。着くころにはお昼になってるだろうから、お弁当も用意する。
今回もフランが御者役になり、その横には前回同様おキクが座った。アイとターニャは荷車の長椅子に隣り合って腰掛けている。
「翼はないが、黒く硬い鱗と厚い皮膚に覆われた巨大な竜だ」
「そんなに強いの?」
「軍隊や多くの冒険者が、ことごとく返り討ちに合っているんだから、多分そーなんだろ?」
それを聞いて「ひぇー」とアイの顔が蒼くなる。
「今までの敗因は、このオレがいなかったのが原因だ。サクッと討伐してやるから心配すんな!」
ターニャは左の手のひらに右拳を打ちつけて、自信満々にニヤッと笑った。
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