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第2章
ロングレンジフェス 6
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「本当にクロスボウで参加されるのですか?」
アイの冒険者登録証を確認した大会参加受付のスタッフが驚いた声を出した。
「ダメなの?」
アイは小首を傾げてキョトンとする。
「いえ、問題ありません。参加を受理します」
「ありがとうございます」
スタッフの許可を受けて、アイは笑顔でお辞儀をした。
「こちら、今大会の概要ですので、開始までに読んでおいてください」
アイはスタッフから冊子を受け取ると、おキクとフランの元に戻っていった。するとおキクが、冊子をペラペラとめくりながら中味を確認し始める。
・大会会場は山ひとつを使用する。
・山全体を覆う魔法陣を展開し、山林等は防護されている。
・大会参加者には特殊な防護魔法を施し、一定以上のダメージを受けると強制的に退場となる。
・参加者は、開始と同時に会場内にランダム転送され、最後のひとりになるまで戦う。
「簡単に言うと、こんな感じかしら」
おキクがアイに内容を説明した。
「とにかく、ソアラさんと対峙する前に誰かに負けないように気をつけるよ」
アイは指を組むと、手のひらを向こうに向けて両腕を伸ばすストレッチをしながら、少し真面目な表情で気合いを入れ直した。
~~~
参加者は街外れの山の麓に集められた。
どうやらここがメイン会場のようだ。屋台が店を並べて賑わっている。広場の中心には丸太が組み上げられており、夜にはキャンプファイヤーでもするのかもしれない。
「逃げずに来たことは、褒めて差し上げますわ」
アイの姿を見つけ、ソアラが声をかけてきた。
しかしアイは、チラリとソアラに一瞥をくれると何も言わずにソッポを向いた。
ソアラはそんなアイの態度に一瞬カッとなるが、直ぐに冷静さを取り戻す。
「私にそんな態度をとったこと、必ず後悔させてみせますわよ!」
ソアラはそう言い残すと、高らかに笑いながら去っていった。
「それでは参加者の皆さんは、こちらに集まってください」
拡声機をとおした主催者の声が会場に響く。
「本日は参加者が多かったため、組をふたつに分けて予選を行います。その後それぞれの組で生き残った20名、合わせて40名で決勝を行います。最後に生き残った勝者には毎年賞金を出していたのですが、今年は我が街から出土した聖遺物を差し上げます!」
主催者の宣言に「おおー!」と冒険者から歓声が上がった。
今年の大会参加者が増えた理由がこれであった。
「聖遺物って?」
おキクがフランの方に顔を向ける。
「神話の時代にあったとされる、不思議な力を宿した魔法道具のことです。まあ実際は、今の技術では作れないというだけで、本当にそんな昔からあるのかは怪しいですけどね」
「そんな凄い物、こんな簡単にあげちゃうの?」
「日常生活には役に立たないことが多いし、この道具もそうなんだろうけど……戦えない人たちも冒険者を支援することで、彼らなりに戦ってるって事だと思うの」
フランは会場にいる街の人々を、とても優しい瞳で見つめていた。
~~~
「それでは開始します。受付番号が60番までの方は前に出てください」
アイは受付が遅かったので、残念ながらもっと後半の番号であった。
ソアラが前に出て行くのが見える。どうやら前半の番号のようだ。
「てことは、対決は決勝か」
アイは「フンス」と両拳を握りしめた。
「燃える展開になってきたっ!」
アイの冒険者登録証を確認した大会参加受付のスタッフが驚いた声を出した。
「ダメなの?」
アイは小首を傾げてキョトンとする。
「いえ、問題ありません。参加を受理します」
「ありがとうございます」
スタッフの許可を受けて、アイは笑顔でお辞儀をした。
「こちら、今大会の概要ですので、開始までに読んでおいてください」
アイはスタッフから冊子を受け取ると、おキクとフランの元に戻っていった。するとおキクが、冊子をペラペラとめくりながら中味を確認し始める。
・大会会場は山ひとつを使用する。
・山全体を覆う魔法陣を展開し、山林等は防護されている。
・大会参加者には特殊な防護魔法を施し、一定以上のダメージを受けると強制的に退場となる。
・参加者は、開始と同時に会場内にランダム転送され、最後のひとりになるまで戦う。
「簡単に言うと、こんな感じかしら」
おキクがアイに内容を説明した。
「とにかく、ソアラさんと対峙する前に誰かに負けないように気をつけるよ」
アイは指を組むと、手のひらを向こうに向けて両腕を伸ばすストレッチをしながら、少し真面目な表情で気合いを入れ直した。
~~~
参加者は街外れの山の麓に集められた。
どうやらここがメイン会場のようだ。屋台が店を並べて賑わっている。広場の中心には丸太が組み上げられており、夜にはキャンプファイヤーでもするのかもしれない。
「逃げずに来たことは、褒めて差し上げますわ」
アイの姿を見つけ、ソアラが声をかけてきた。
しかしアイは、チラリとソアラに一瞥をくれると何も言わずにソッポを向いた。
ソアラはそんなアイの態度に一瞬カッとなるが、直ぐに冷静さを取り戻す。
「私にそんな態度をとったこと、必ず後悔させてみせますわよ!」
ソアラはそう言い残すと、高らかに笑いながら去っていった。
「それでは参加者の皆さんは、こちらに集まってください」
拡声機をとおした主催者の声が会場に響く。
「本日は参加者が多かったため、組をふたつに分けて予選を行います。その後それぞれの組で生き残った20名、合わせて40名で決勝を行います。最後に生き残った勝者には毎年賞金を出していたのですが、今年は我が街から出土した聖遺物を差し上げます!」
主催者の宣言に「おおー!」と冒険者から歓声が上がった。
今年の大会参加者が増えた理由がこれであった。
「聖遺物って?」
おキクがフランの方に顔を向ける。
「神話の時代にあったとされる、不思議な力を宿した魔法道具のことです。まあ実際は、今の技術では作れないというだけで、本当にそんな昔からあるのかは怪しいですけどね」
「そんな凄い物、こんな簡単にあげちゃうの?」
「日常生活には役に立たないことが多いし、この道具もそうなんだろうけど……戦えない人たちも冒険者を支援することで、彼らなりに戦ってるって事だと思うの」
フランは会場にいる街の人々を、とても優しい瞳で見つめていた。
~~~
「それでは開始します。受付番号が60番までの方は前に出てください」
アイは受付が遅かったので、残念ながらもっと後半の番号であった。
ソアラが前に出て行くのが見える。どうやら前半の番号のようだ。
「てことは、対決は決勝か」
アイは「フンス」と両拳を握りしめた。
「燃える展開になってきたっ!」
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