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第2章
ロングレンジフェス 5
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フランは以前、ソアラたちのパーティに入れてもらえるよう願い出たことがある。冒険者に登録したばかりの頃のとこだ。カタン市とは別の街の冒険者の詰所に訪れた日のことであった。
ソアラ自身はA級の魔法士、他にA級の男剣士と男重戦士にB級の女回復士の4人パーティであった。
「フランさんね。アナタ、クラスと職業は?」
「C級盾士です」
「…そう」
ソアラは冷めた目で頷くと、仲間の回復士に耳打ちをする。すると回復士は何かの魔法を唱えた。恐らく人物鑑定系の魔法である。
鑑定結果の説明を受けて、ソアラは声を大にして笑った。
「申し訳ございませんが、フランさん。アナタの居場所は私たちのところには有りませんわ」
ソアラはわざとロビーに響くように言った。
「魔法も全く駄目。それにその盾!そんな材質の盾など見たこともありませんわ。大層立派な盾士さんだこと」
ソアラはフランの顔を覗きこむと、優しく優雅に微笑んだ。
「アナタ、そんなに可愛らしいのだから冒険者を辞めた方が需要がありますわよ。とはいえ、エルフだと見た目どおりの年齢ではないのかしら?」
フランは唇を噛みしめながら、只々その場に立ち尽くしていた。
~~~
「ひょっとしてお仲間が出来たのかしら?」
ソアラがフランのそばに立つ、少女ふたりに目を向ける。
「フランさんには、とてもお似合いだこと」
小馬鹿にしたような顔でソアラが笑った。
「そうだ!アナタたちはご存知かしら?フランさんの盾の素材がただの断熱材だってこと」
こちらで言うところの、発泡スチロールのような物である。とても軽いが誰でも簡単にパキリと割ることが出来る。
ソアラはアイとおキクに意地悪く笑いかけた。
「そんな盾で盾士なんて誰も守れませんよ。アナタ方ひょっとして騙されているのではなくて?」
「ソアラさんは、フランと一緒に戦ったことがあるの?」
アイは静かにソアラに尋ねた。
「まさか!パーティを組むこと自体が、もう本当にあり得なくてよ!」
答えを聞き、アイはソアラを睨みつける。
「ソアラさんて、イヤな人だね。大キライ」
「アイ!」
フランが制止をかけるが、もう遅い。ソアラの鋭い眼光が、アイを上から見下ろした。
「私にそのような口を聞いて、ただで済むと思っていますの?」
「ちょうどいい大会があるから、私もこれに参加する。これでいいんでしょ?」
アイの宣言に、ソアラの気持ちが昂ぶる。
「いい度胸ね。私はアナタのこと、結構好きになれそうよ」
最後にそう言い残すと、ソアラは踵を返して去っていった。
~~~
アイは大会に参加するために、受付を探して歩いていた。
「アイ!」
フランが焦ったように、前を行くアイの手を掴み引き止める。
「ソアラさんはA級魔法士なのよ。お願い、思い直して!」
「…フラン。あんなに言われて悔しくないの?」
アイは静かにフランを見た。
「本当のことだからね。言われても仕方がない」
「ホントに?」
アイの声は決して大きくはない。しかしフランの心にズシンと響く。フランは俯き押し黙った。
「フランの本心を聞かせて」
フランは俯いたまま答えない。
アイは黙ってフランを待った。
「…悔しい」
フランの目から涙が一粒零れ落ちた。
「私、ホントは悔しい!アイ、お願い!アイツ思いっきりやっつけてよ!」
「任せて!」
アイが右手の親指をたて「ニカッ」と笑う。
ことの成り行きを見守っていたおキクも、嬉しそうに大きく頷いた。
ソアラ自身はA級の魔法士、他にA級の男剣士と男重戦士にB級の女回復士の4人パーティであった。
「フランさんね。アナタ、クラスと職業は?」
「C級盾士です」
「…そう」
ソアラは冷めた目で頷くと、仲間の回復士に耳打ちをする。すると回復士は何かの魔法を唱えた。恐らく人物鑑定系の魔法である。
鑑定結果の説明を受けて、ソアラは声を大にして笑った。
「申し訳ございませんが、フランさん。アナタの居場所は私たちのところには有りませんわ」
ソアラはわざとロビーに響くように言った。
「魔法も全く駄目。それにその盾!そんな材質の盾など見たこともありませんわ。大層立派な盾士さんだこと」
ソアラはフランの顔を覗きこむと、優しく優雅に微笑んだ。
「アナタ、そんなに可愛らしいのだから冒険者を辞めた方が需要がありますわよ。とはいえ、エルフだと見た目どおりの年齢ではないのかしら?」
フランは唇を噛みしめながら、只々その場に立ち尽くしていた。
~~~
「ひょっとしてお仲間が出来たのかしら?」
ソアラがフランのそばに立つ、少女ふたりに目を向ける。
「フランさんには、とてもお似合いだこと」
小馬鹿にしたような顔でソアラが笑った。
「そうだ!アナタたちはご存知かしら?フランさんの盾の素材がただの断熱材だってこと」
こちらで言うところの、発泡スチロールのような物である。とても軽いが誰でも簡単にパキリと割ることが出来る。
ソアラはアイとおキクに意地悪く笑いかけた。
「そんな盾で盾士なんて誰も守れませんよ。アナタ方ひょっとして騙されているのではなくて?」
「ソアラさんは、フランと一緒に戦ったことがあるの?」
アイは静かにソアラに尋ねた。
「まさか!パーティを組むこと自体が、もう本当にあり得なくてよ!」
答えを聞き、アイはソアラを睨みつける。
「ソアラさんて、イヤな人だね。大キライ」
「アイ!」
フランが制止をかけるが、もう遅い。ソアラの鋭い眼光が、アイを上から見下ろした。
「私にそのような口を聞いて、ただで済むと思っていますの?」
「ちょうどいい大会があるから、私もこれに参加する。これでいいんでしょ?」
アイの宣言に、ソアラの気持ちが昂ぶる。
「いい度胸ね。私はアナタのこと、結構好きになれそうよ」
最後にそう言い残すと、ソアラは踵を返して去っていった。
~~~
アイは大会に参加するために、受付を探して歩いていた。
「アイ!」
フランが焦ったように、前を行くアイの手を掴み引き止める。
「ソアラさんはA級魔法士なのよ。お願い、思い直して!」
「…フラン。あんなに言われて悔しくないの?」
アイは静かにフランを見た。
「本当のことだからね。言われても仕方がない」
「ホントに?」
アイの声は決して大きくはない。しかしフランの心にズシンと響く。フランは俯き押し黙った。
「フランの本心を聞かせて」
フランは俯いたまま答えない。
アイは黙ってフランを待った。
「…悔しい」
フランの目から涙が一粒零れ落ちた。
「私、ホントは悔しい!アイ、お願い!アイツ思いっきりやっつけてよ!」
「任せて!」
アイが右手の親指をたて「ニカッ」と笑う。
ことの成り行きを見守っていたおキクも、嬉しそうに大きく頷いた。
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