中2女子が夏休みに、異世界を救うことになりました!〜RPGにようこそ〜

さこゼロ

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第1章

初日終了 2

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全員の帰還信号を受けた佐藤は、出迎えのためにドームの中に入室した。

「皆んな、お疲れさま」

するとちょうど全員が起き上がり、ヘッドマウントディスプレイを外しているところであった。

佐藤は全員の表情を確認する。特に亜衣とお菊には注意を向ける。そしてその表情から、楽しんできてくれたと確信する。

しかし、そうやって全員の顔を見回していると、見慣れない顔があることに気付く。気のせいか、1人多い…

「て…ええぇえーっ!」

佐藤は2、3歩よろけて壁に後頭部をぶつけた。

浅野は顔を伏せて、コッソリと腹を抱えて笑っている。坂下はそんな佐藤に同情した。

「佐藤さん、向こうで友達が出来たよ!」

亜衣が鼻息を荒げて報告した。

「しかも、転位の資質まであったんです!」

珍しくお菊も興奮気味に声を荒げる。

「フランです。よろしくお願いします」

フランは深々と丁寧にお辞儀をした。

君たち楽しみすぎだぁーーっ!

佐藤の叫びは残念ながら、声にはならなかった。

   ~~~

「事情は…分かった。言いたいことは山程あるが、今さら言っても仕方がない…建設的な話をしよう」

佐藤は異世界支援課の事務室に戻ると、水戸にも声をかけてから全員に話し始めた。

浅野と坂下は午後からは元の部署での業務があるため、既に退室している。

「フランさんの姿は、ここ竜宮市ではさすがに目立ち過ぎる」

桃色の長い髪に先の尖った耳、革の鎧まで着こなすその姿は…場所が場所なら大人気だろうが、竜宮市では大いに目立つ。

「お金を渡すから、着替えを買ってきて貰いたい」

佐藤は財布から一万円を取り出した。

「そんな!佐藤さんに悪いです。私たちのお給料を使います!」

お菊は首を振って、受け取りを拒否する。

「僕はここの課長なんだ。だから格好つけさせて欲しい」

佐藤は有無を言わさず、お菊の手に一万円を押し付けた。

「とはいえ諸事情で、予算はこの範囲内で頼む」

「…分かりました」

お菊は頷くと、佐藤からお金を受け取る。

それからお菊は亜衣とフランに声をかけ、3人で来客スペースのあるパーテーションの向こう側に移動した。

「絶対、覗かないでくださいよ!」

お菊は振り返ると、凄い剣幕で釘を刺す。

佐藤と水戸は、只々首を縦に振ることしか出来なかった。

   ~~~

フランは見た目は小さいが実際は子どもではないため、所謂いいプロポーションであった。

亜衣とお菊がその事で、少なからずショックを受けたのは秘密である。

「ちょっと行ってきます!」

ショッピングモールの中にあるファストファッションの店に、亜衣はフランの服と下着を買いに行くため退室した。

「それでは僕らは、もう少し話を続けよう」

佐藤はパンパンと手を叩き、皆の注目を集める。

「こちら水戸さん。フランさんの同郷の方だ」

佐藤の紹介にフランは大いに驚いた。そして、自分以外にも転位者がいたことに少し安堵する。

「ミトです。私も転位してきました」

「フランです。よろしくお願いします」

「フランさんの宿は、水戸さんの家の部屋が余ってるから、そこを使ってはどうだろうか?」

佐藤が、少し躊躇いがちに提案した。

フランは女性なので拒否される可能性も考慮しているのだろう。お菊はチラリとフランを見る。

「ご迷惑ではありませんか?」

フランが遠慮がちに水戸に尋ねた。

「あなたが良ければ、私は全然構いません」

「…それでは、お世話になります」

水戸が頷くのを確認すると、フランが礼儀正しく頭を下げた。
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