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第1章

初日終了 3

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亜衣が買い物から戻ったので、フランは早速服を着替えることになった。事務室では着替えるスペースがないので屋上のドームを使うことにする。ちょっとしたファッションショーを演出するために、フランがひとりで着替えに行った。

「亜衣アンタ、こんなハードル上げるようなマネ、よく出来るわね」

お菊が心底感心する。

「だって楽しそうじゃない?」

亜衣は楽しそうに笑った。

そう、亜衣はこういう子だ。お菊も充分過ぎるくらい知っている。今回のコレも自分のセンスに自信があるからではなく、単純に面白そうだからやっているのだけなのだ。

その時、屋上用の扉がコンコンとノックされた。

亜衣が扉に駆け寄ると「じゃーん」と口で効果音を鳴らしながら扉を開けた。

「フランの登場でーす!」

フランがペコリと頭を下げて入場する。

「おお!」

男性陣から感嘆の声が漏れた。

お菊も実際驚いた。

白の半袖Tシャツに水色チェックのワンピース。スカート丈は膝の上くらい。頭には白いキャスケットを深く被り耳もちゃんと隠れている。足元にはちょっとヒールのある赤いサンダルを履いていた。

「私たちと、なんちゃってお揃いコーデでーす!」

最後にフランが、クルリと一回転した。

会場が盛大な拍手に包まれる。

ショーは大成功であった。

  ~~~

亜衣とお菊にも興味があったので、お昼ご飯は市役所の食堂で食べることにした。

定食屋さんのようにメニューが豊富な訳ではなかったが、まあまあ普通に美味しかった。

しかし…竜宮市役所本館の食堂は、残念ながら無料という訳には、いかなかった。

「亜衣は本当に、エルフではなかったのね」

3人がご飯を食べ終わった頃に、フランが話を切り出した。言いながらフランは、亜衣をマジマジと観察する。

「ごめん、フラン。せっかく喜んでたのに…」

亜衣は申し訳なさそうにシュンとした。

「そ…そんなの全然気にしないで。亜衣たちに出会えたのは、私にとってはもっと価値のあることなんだからっ」

フランが身を乗り出すように力説する。

「このあとは、どうするの?」

珍しくお菊の方から亜衣に質問した。

「異世界の女子を歓迎する方法なんて、ひとつしかないよ!」

亜衣が拳を握りしめて、勢いよく立ち上がる。

「スイーツ巡りよ!」

バシューとカラフルなケムリが噴き出し、亜衣の姿を演出した。

お菊に異論など、あろう筈もなかった。

   ~~~

楽しい時間はあっという間だ。

18時に水戸と市役所前で待ち合わせをしていたので、フランをそこに送り届けると、亜衣とお菊もそのまま解散となった。

亜衣が家に帰ると、直ぐに母が声を掛けてきた。

「おかえり、仕事どうだった?」

「大変だけど、楽しかった!」

「そうかい。それは良かった」

母への報告を済ませると、亜衣はそのまま自室に戻る。するとそこには、いつもどおりにゲームをする伊緒の姿があった。

「亜衣姉ちゃん、おかえり」

「ただいま」

亜衣は伊緒の横にちょこんと座ると、ゲーム画面をしばらくボーッと眺めていた。

「ねえ、伊緒くん。このゲーム…一体どこで手に入れたの?」

「…んあ?」

突然の質問に、伊緒は不思議そうな顔をした。

「母ちゃんが買ってきたから、知らない」

それから少し、探るような目つきになる。

「…何?姉ちゃんも買うの?」

「違う違う。ちょっと気になっただけ」

亜衣は「アハハ」と笑って誤魔化した。

「それじゃ着替えてくるから、次代わってよ!」

亜衣は「ビシッ」と指差しながら、サッサと部屋から出ていった。

「分かった、分かった」

伊緒は呆れた素ぶりでうなずくと、「仕方ないな」と嬉しそうに微笑んだ。
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